「迷惑だなんて1ミリも思いません」。妊娠中、女の人に助けられた話。
ぶっちゃけ、女の人が苦手だった。集団になって群れている女の人は特に。苦手意識がさらに高まってしまっていた。
でも、妊娠して少し変わった。少しだけど。
妊娠中は女の人から助けられたことが多かった。
妊娠34週のとき、不正出血があった。しかも逆子の状態で、だ。
病院に電話をするとすぐに来るように言われ、そのまま自宅に帰ることなく8日間の入院となった。
このとき、すでに産休中に入っていたのだが、会社のことが心配で出社する日々をおくっていた。
わたしの部署には新人さん2人しかいない状態で、一年で最も忙しい1週間が始まろうとしていた。
しかも、夫一族の会社。
猫の手も借りたいほど忙しい(って慣用句でいうけど、実際に猫の手を差しだしたら、たぶん怒られるんだろうな。笑)時期。
「ここでヨメの私が休むわけにはいかない」
と勝手に気を張っていた。
(この謎の気合いが、周りの人にかえって気をつかわせてしまっていたことに気づくのはだいぶあとのことです。えぇ)
体を動かせないほど苦しいのであれば休ませてもらうけど、幸いにも体は動いていた。
周りの心配をよそに、私は意気揚々と出社しつづけていた。
そんな状況の中での、逆子状態の不正出血。そして入院。
医師からは「あかちゃんの安全のため、破水すればすぐに帝王切開になりますよ」と告げられた。
妊娠中の体のトラブルは、予兆なしに起こることが多い。
着のみ着のまま入院となり、ベッドに横たわるけど、やはり頭に浮かぶのは仕事のことだった。
「会社に迷惑をかけてしまう」
その思いしかなかった。
とりわけ、新人さん2人をかなり不安にさせてしまう・・・。
早めに連絡したほうが良いと思って、ベッドの上から急いでLINEした。
まずは、ほんとうに迷惑をかけることになりそうで申し訳ないと謝り、入院することになった事情を説明した。
実は、新人さんは2人とも経産婦さん。私よりも10歳くらい年下だけど、あかちゃんや妊婦の体のことは、私以上に知っていて、いつも細やかなところまで気づかってくれていた。
「前かがみになってモノを引きずってはいけません、高いところのものは私たちがとります、トイレ掃除は代わります、車の運転もしないでください」などなど。
一人から、すぐにLINEの返信が来た。
「迷惑だなんて1ミリも思いません。
"ママ、ゆっくり休もうよ"と赤ちゃんが言ってるんだと思います」
泣けた。3000回くらいそのLINEを読み返した。
もう一人の方からも返信が来ていた。
とにかく仕事のことが心配だった私が、これでもかというくらい細かい指示書を作り、LINEで送信していた(今思えば、こわい。ホラー。)
そうしたら、
「私たちも不慣れながら、周りの方々を頼って、なんとかやってみます。
はこふぐママさんはお腹の中のあかちゃんを育むことだけに専念してください」
と返信が返ってきた。
これまた、泣けた。
そして、あの2人の仕事のことを心配しすぎていたのかもしれない、とも思った。
仕事のこと、「なんとかやってみます」と言ってくれて頼もしさを感じた。
とにかく、10歳年下の先輩ママの「あかちゃんを大切に」というメッセージがうれしくて、私は素直にしたがうことにした。
これが、私が女の人から助けられたなぁ、と具体的に感じたエピソードです。
「女の敵は女」というイヤな響きのことわざがあるけど、私の中では「女の味方は女」に変わりつつあります。