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我勉強中国語:「商」はなぜ「相談する」の意味なのか
古代中国の殷王朝の正式国号は「商」であった。商は辛と台座、口からなる。辛は取っ手のついた刺青用の針であり、古代の刑罰権つまりは権力の象徴。神の意に適わない者には刑罰として刺青が入れられた。秦の始皇帝が「皇」に似ているとして廃止した「辠」も、自と辛に作る。自は犬を加えると臭となるように鼻の象形で、鼻に罪人の証として刺青をしたことから辠が罪の意となった。
「商」は台座に辛を立て、その下に口を置いて神にはかることを表す漢字である。それ自体が権力や統治権、祭祀権の象徴であることから、これが国号として用いられたのであろう。
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日本語では商を「はかる」の意で使うことはないが、現代中国語では商 shāngは第一義的には「相談する」の意味である。商量shāng liángといえば「相談する」、 面商miàn shāngは「面談する」、商定shāng dìngは「相談して決める」という意味で、神に諮っていた時代の意味が残っている。もちろん商店や商场のように日本の商と同じ意味でも用いる。日本語の「商談」は「話し合う」の意は談のほうにあって、商はあくまでもbusinessの意であろう。
日本語の「商う」は「秋なう」で、秋になって収穫物を物々交換することが原義である。「あき」は明るくなることで、紅葉する時期のことをいう。「売る」「買う」ももともとは「得る」「交う」で、物々交換によってモノを得たり交換したりする言葉だった。「売」はもともと賣と書き、賣も買も貝が含まれており貨幣経済が浸透したのちの字であろう。賣はもと贖の意で、賠償・贖罪のために財物を供出する意であったものだと思われる。