二人で一緒に
二人で一緒にいつまでも幸せに
とか、そんな話しでは無くて、どうして二人で一緒に?
という話です。
まず最初に言うと、僕とほぼ入れ替わりのように入院し、今も入院中の彼ですが、長いゴールデンウィークが明けてやっと病名が判明しました。
急性リンパ性白血病
血液の癌でした。
膵臓癌の私と急性リンパ性白血病の彼
二人で一緒に癌になりました。
彼が入院した当初は肺炎になって入院しているという事で聞かされていて、まぁ、歳が歳なので肺炎も十分に危険ではあるんだけど、まさか最終的に白血病などという結果になるとは思いもしなかった。
ただ、最初の退院予定日が何度も延期になり、何か色々と追加の検査が入り、今日は輸血しているとの連絡を貰ったくらいから、にぶい僕でも流石に何かおかしいとは思い始めていた。
血小板輸血ってどうして?
どうしてっていうか、もしかしてそういうこと?
それでも最初の輸血の頃には「コレが終わったら明日には家に帰られると思う。お昼過ぎるからご飯を炊いておいて」なんて呑気な事を言われていたりもしていて、心配は残ってはいるけど、とにかく休み前に一旦は家に帰って来られた。
それが4/28(金)のこと。
久しぶりに見た彼は、明らかに具合が悪そうで、いつものように人当たりの良い笑顔の欠けらも無く、ソファーでひたすらぐったりしている。
誰がどう見ても膵臓癌の僕よりも彼の方が体調が悪そうだ。
それは次の日も、その次の日になっても変わらない。
しかも、そろそろ寝ようかという土曜日の夜、台所からドスンと大きな音を響かせて彼は倒れてしまった。
急いで彼のところへ行こうとして急にベッドから起き上がったものだから自分も目眩を起こして床に倒れ込み、土曜日の夜遅くにマンションでドスンを2回もやらかす、迷惑。
そして、情けない…。
で、四つん這いになりながらも彼の所に向かって、とにかく頭をぶつけていないかを確認。
早く楽な体制に起こしてあげようとしたんだけど、自身の入院で体重も筋肉もすっかり落ちてしまった今の僕では、以前のように力任せに簡単に起こしてあげる事が出来ない。
こんなに自分も弱っているのかと思い知らされ、重ね重ね、本当に情けない…。
でも、とにかく、まずは自分の体制を整え、重心を使ってなんとか彼を引き起こした。
これは相当にまずいと思った。
肺炎の回復が長引いてるとか、そんなことでは無いと確信した。
週末の帰宅前からの予定通り、5/1(月)にまた通院。
そこで更に追加の検査が色々とあって、その結果、残りのゴールデンウィーク中は入院した方が良いという事になりました。
そこで分かった事は、原因は不明だけど血小板が減り続けていること、それで出血が起きやすくなること、脳内でそれが起きた時には重篤になり、万が一の事も覚悟すること…。
二ヶ月前までは、僕の方がよっぽど死に近かったはずなのに、まさかの状況逆転。
もしかすると、今日、明日にでも死んでしまうかも知れないと告げられているのは僕では無く彼なのだ。
よく言う、嘘でしょ?とも、冗談でしょ?とも思わないし、頭が真っ白にもならないし、涙も溢れて来ない。
ただただ事実を受け止めて、今、何をするべきなのかを考えなければいけないとは思いつつも、なかなか思いつかない。
何を?何処から?いつから?…すぐに。
今出来る自分なりの最善を考えなきゃと思うと、ため息の一つも出なかった。
今年のゴールデンウィークはとても長く感じた。
世の中、僕らの都合では動かない。
病院で働いてる方々だって休まなければならないし、その為には病院業務の縮小だって理解している。
でも、病院業務縮小の内容にはゴールデンウィーク中の面会停止が含まれていて、休みが終わるまでは彼に会う事が出来ない。
台所で倒れた彼を引き起こした時に触れたのが最後になるのか?
もう顔を見る事も出来ないのだろうか?
いつ脳内での出血が起きてもおかしく無いし、その時には覚悟して下さいと告げられているってのは、そういうことだ。
なので、ゴールデンウィーク中はメッセージのやり取りだけ。
その文面からは相変わらず体調が悪そうな事が伝わってくるし、併せて色々な検査も多くて、あまり頻繁にはメッセージも出来ない。
そんな中でメッセージの返信が少しでも遅くなったりすると、やはりとても心配になってしまう。
出血したりしてないよな…倒れた時に少しでも頭をぶつけていたらどうしよう、影響あるかな…。
でも、これはもう確認のしようもないし、願うっていうか信じるしか無い。
しかも、これくらいのタイミングで、彼の病気についても徐々に分かってきた。
けど、それがまた思っていた通りで良く無い。
血液の癌ではあるけど、その原因が特定出来ない珍しいケースとのことだった。
検査の詳細な結果はゴールデンウィークが明けなけれは分からないので、まだ確定はしてないから信じたくは無いけれど、やっぱり白血病みたいなものだったのか…。
しかも、また「珍しい」が付いてるのかよ…。
僕の場合もそうだけど、珍しいとか特殊とか、ホントもう、そういうの要らないよ!とやり切れなくなる。
僕にとっての長い長いゴールデンウィークが明けた。
この間もずっと発熱が続き、何度も何度も血小板の輸血をされ、全く何も食べられない中、とても痛く苦しい骨髄液の採取を二度もされてたのに、彼は頑張った。
褒めてあげたいというか、もう感謝しかない。
頑張ってくれてありがとう。
そして、つい先日の5/9、やっと面会が出来た。
病院での彼は、点滴に繋がれて、鼻からチューブ、でも努めてにっこりとして車椅子に座っていた。
また会えて良かった。
コロナも終わったとは言えない状況下なので、病院としては最大限の配慮をして頂けているのだろうとは思うけれど、面会時間は15分。
あまりに短い。
二ヶ月程前には、僕が死んだ後の事について彼に色々と話していたのに、今は彼が死んだ後の事について僕に話している。
こんな話をするには余りに時間が短すぎて、ざっと説明された後は、死後の色々な処理や遺言なんかについても既に弁護士に託してあるからって事で、弁護士の名刺を受け取るくらいの時間しか無かった。
タイマーは既に15分の少し前。
あっという間だけど、もう帰らないとね…。
と言って病室を出ようとしたけど、はっと気づいて戻った。
写真、撮っても良いかな?
チューブ出てるし、彼は嫌がるかなぁとは思ったけれど、とにかく、今撮っておかなければ絶対にダメだと思ったのでお願いした。
良いよって言ってくれた。
窓際に座ってる彼に寄り添って二人で撮った写真は逆光だし、そもそも姿も姿だし、決して良い写真では無い。
でも、良かった。
とにかく良かった。
思えばこれまでは、二人で一緒に写真を撮った事があまり無かったね。
まさか二人で一緒に癌になるなんて思わなかったしね。
でも、二人で一緒に一日でも長生きしたいよね。
で、もしも二人で一緒に癌が治ったりしたら、それって凄くね?
願わくは、この病室での写真よりも、もっとずっと良い写真を、あなたの大好きな沖縄の海に戻って、また、二人で一緒に撮りたいです。
二人で一緒に
癌の治療は始まったばかり。