45歳で片づけを覚えた
片づけが苦手である。
子どものころはよく親から「部屋を片づけなさい」と注意された。片づけなさいと言われても、整え方がわからない。そのまま大人になり、整頓するスキルを放棄していた。
そんな私が、今年の3月、「LINE片付け」というサービスに出会った。LINEを使い、文字のやり取りをとおして片づけができるように伴走してくれるものだ。プロに家を片づけてもらうのではなく、自力で片づけることを目標とした内容に惹かれ、申し込んだ。
LINE片付けでは、1か所ずつ課題とされた場所を整理していく。まずノートにその場所の収納で困っていることを書き出す。次に、収納されている物をすべて並べて、数を数える。最後に自分が決めた配置図に合わせて収納していく手順だ。だいたいがその流れで進められ、画像とメッセージでコミュニケーションを取り、講師にアドバイスをもらいながら進めていく。
正直、最初は家の中がきれいになっていく実感はなかった。でも冷蔵庫の中、下駄箱、洗面所と1か所ずつ整えられていくと、家の中の風通りが変わってきた。家の隅々に少しずつ蓄積されていた汚れを取り除きながら思った。積もり積もったよどみは、私が長年、目を背けてきた証拠だ。
次第に、キッチンカウンターに何も置かれていない気持ち良さがわかってきた。次に、カーテンがタッセルでまとめられている清潔感に感激した。和室の床から物がなくなったときは、四畳半の畳の上をぐるぐると歩き回って、すっきりとした床の広さを味わった。
ずっと私は「片づけられない子」であったが、45歳にして「片づけられる人」になった。大げさな言い方になるが、私にとっては自己認識が変わった歴史的な出来事だ。
歴史的な変容をとげた私は、もしかして、片づけの他にも"できない”と思っているがやり方を知ればできるようになることがあるのではないかと思った。すすけたほこりのように、見てみぬふりをしてきたこと。できないと思いこんでいたこと。
今なら自分の枠を広げられるかもしれない。