字書きがデザイン絵師さんに本気でインタビューしてみた話
第3回は、主にデザインによるファンアートを手がけるとまさん(@tomariitara39)にお話を伺った。
二次創作やファンアートと聞くと、ついイラストや小説がわかりやすいイメージとして思い起こされるが、デザインというあえて抽象的な概念によって推しを表現する方法も存在する。
何を隠そう、とまさんは筆者はっこが「概念絵」というものの存在を知ったきっかけになったお方。念願かなってお話を伺うことができた。
◯創る時のこだわり
まずはとまさんのデザインについて、こだわっていることを伺ってみた。
「強いて言えば、自分が気にいるものを作るぞ〜ということでしょうか。自分のテンションが上がらないと完成までいかないのでけっこう死活問題かもしれません笑
作る時に楽しいことは、思い描いた通りにアウトプットできたときです!あとは思ってたのと違うけどなんかうまくいったわ、という時も楽しいです!ヒプマイは曲のイメージをファンアートに表したいと思うことが多いので、それが反映できたときはうまくいった!と楽しくなります。
あとは、いつもできるわけではないんですが、見た目がうまくできただけではなく何か仕掛けをうまいこと込められたときなんかはヨッシャ!と思います!」
その言葉の通り、とまさんのデザインには「わかる人にはわかる」遊び心が満載だ。
歌詞を使った、曲のMVのデザインなど、おしゃれでありながら原作の良さをしっかり残す、まさしく概念絵である。
はっこ)私そもそも概念っていうのを知ったのがとまさんのStellaのデザインと、オハブクロのロゴ、あのフクロウのあれを拝見したのが最初で。だからどうしてもお話は聞こうと思って。勝手に師匠って思ってて(笑)
とま)おおおう。
はっこ)前に作ってる時のこだわりありますかっていうの文章で伺った時に、「仕掛け入れられた時はちょっと結構嬉しいかも」っておっしゃって。それを聞いた時に「あ」ってすごい思いました。ラムダくんでしたっけ、のデザインとか思い出して。「しかけなるほど」って思いました。
とま)でも私もまさにというか、むしろそれくらいしかそういうの考えて作ってないと言うか(笑)何か入れれてないかなと思っていて。あれは本当にすごくうまくいったなって自分でも思っていたので、そう言っていただけてすごく嬉しいです。
はっこ)曲の歌詞のイメージって大事にされてるイメージありますね。大事にされてるなってすごく感じていて、ブクロとかのロゴもそうでしたけど。
とま)そうですね…いやなんかめっちゃ嬉しいな、そうですね(笑)なんか曲聴きながら作ったり…Stella作った時とかも無限ループしながら聴きながら、 とかしてるんで。結構、曲をもとにどうしようかなって考えることが多いですね。
はっこ)確かに小説とかも書くとき、仕掛けって言っていいのか分かんないですけど、各曲の歌詞から引っ張ってくることが多いかもしれないですね。
とま)うーんなるほど。
はっこ)なんかヒプマイの場合は、彼らが選んでる言葉が歌詞じゃないですか。だからこの言葉をここで選んでくるこの人ってどういう風に物事を見るかな、っていうの考えたりするので。
とま)なんかヒプだからってのもありますけど、曲の存在は大きいですよね。ヒプに出会う前日本語のラップってそんなに知らなかったと言うか、こんなに面白いものだと思ってませんでしたね全然。
はっこ)そうですね、私もほぼ聞いたことなかったですね。友達から初めて進められて URL 送られてきた時も、「日本語でラップ(笑)」ってちょっとヘラヘラしてましたね笑
とま)ヘラヘラしてた笑
はっこ)何回説明されても聞いても「何だそれは」って言う。
とま)今聞いてもなんだそれはっていう感じですからね笑
はっこ)精神干渉ってどういう事って(笑)今も精神干渉って何だろうって思ってますけど。(中略)前は自分の中でキャラソンだと思ってたけど、それはちょっとキャラソンとはまた違いますもんね
とま)確かに。
はっこ)私はヘタリアがすごい好きだったので。ヘタリアのキャラソンとかばっか聞いてましたけど、まさかこんなにキャラソンを考察する日が来るとは思いませんでしたね
とま)確かにこんなに深く深く掘っていけるものが、キャラソンなんだけど二次元のコンテンツでね。曲として出るって言うのはなんかあんまりなかったですよね。
◯推しとの出会い
話は、ヒプマイの中の人の話へ。
はっこ)ていうか中の人がすごくアツいですからね。木◯昴。
とま)木◯昴。
はっこ)初めて聞いた時ジャイアンの人って言ってた自分を殴りたいです(笑)
とま)めっちゃわかります。最初にはまった時にカラオケでヒプマイコラボしてる時だったんですけど。勧めてくれた友達と行ったら、あのカラオケで曲 と曲の間に流れるあれ(告知)あるじゃないですか。あれで昴さんがいつもの、「イケブクロディビジョンバスタブロスのビッグブローこと、」っていうのを言ってて。でそれがめちゃめちゃ流れてくるんですよ。
はっこ)うんうん。
とま)最初はあ、ジャイアンって思ってたんですけど。かっこいい声だけど、もうジャイアンって思ってて。(笑) でも何回も何回も見てるとなんかマジでかっこいいなって思ってきて。
はっこ)顔もね、美形ですもんね。
とま)そうなんですよそうなんですよ!顔のかっこよさ。ジャイアンなのにめちゃくちゃかっこいいぞって。そこからなんか一気に来たので…ジャイアンも侮れないなって笑
はっこ)なんかね普段あんな感じだけど、何て言うか、役に対するインタビューとかを見てたりニコ生見てたりすると、アツすぎる、っていうか凄いですよね。
とま)全身全霊って感じですもんね。
はっこ)心に刺さらない名言集とかたまに見ると本当にすごい笑いますもん。
とま)本当に刺されないですもんね。何を言ってるんだって(笑)
はっこ)通知、私 Twitter 通知設定してるんですけど、あれが来た時に毎回笑っちゃいます
でも笑っちゃってますね。すでにその時にも絶対笑っちゃうけどあんな綺麗な顔であんな変顔できるのか、っていう方向に顎が曲がりますよね。
とま)落差って言うか凄いですよね、振り幅が。
はっこ)最近メディア露出も増えてきて、テレビとかでもよくお見かけするようになって。ナレーションもね、聞いてたら昴だ!って言う。大躍進と言うか、世界がやっと木村昴に追いついたと言うか(笑)
とま)見つかってしまいましたね。奇才すぎて。
ちなみに、筆者はっこにも最近声優さんを推す、という経験が生まれた。
はっこ)今まで結構二次元のキャラを推してて、その延長で二郎やってる声優さんが好きとかは結構あったんですけど。逆輸入パターンと言うか、中の人を徹底的に推しだって思ったことがあんまりなくて。それが最近になって初めて花◯夏樹さんを推してるんだなってことに気づいて。私ゲーム実況してる時の花江さんがすごい好きなんですよ。
とま)あの有名な YouTube のやつですね。
はっこ)そうですね、そうですね。なんだろう、推しって言うか、中の人をこんなに推したことがそんなになかったので。とまさんが「スバル〜〜〜!」って言ってるのを見ながら、いいなあって思ってたけど。「もしかしてこれが!」っていう(笑)
とま) 温度感を理解していただけたようですね笑
はっこ)またねベクトルの違う、スバル兄さんとはなちゃんは。またちょっと別ベクトルではあるんですけど。二人ともね、飛び抜けて素晴らしい才能を持っているって言う。
とま)そうですねあの人たち自身がめちゃめちゃオタクなんだろうなっていう感じはしますよね。極めたオタクと言うか。
はっこ)そうですね。同じ匂い感じてる。
とまさんのオタク歴は長い。
「わたしの母親が割とオタクで、幼少期から漫画やアニメに囲まれて育ったのでおそらく生まれた時からオタクでした笑」と語り、特にマンガは小さい頃から読んでたので親と同じだと言う。
はっこ)今までとまさんはそもそも結構昴さんより前の声優さんとかを推してたりしたんですか?
とま)声優さんは、でもキャラが好きで声優さん応援するとかは結構あったんですけど、こんなに押すのはやっぱりヒプマイ初ですね。もう木◯昴さんが初って言うか。
はっこ)なんと。
とま)なんか結構俳優さんが好きな期間が長くて。ドラマとか演劇とかで俳優さん好きと言うか。そういう時間が長かったので今結構その延長線上でもしてるかもしれないです。
はっこ)ちなみにどなたを押してたんですか?聞いてよければ。
とま)ころころ変わってて。最初は誰だったかな、星野源かな。一番最初は。田中圭を一時期めっちゃ好きだったし、あとは劇団にはまってたことがあって。劇団単位で押してた時がありましたね。
はっこ)おーすごい。
とま)星野源にはまってた時は、多分先にその星野源が所属している劇団を好きになって。で、推してたらその劇団が星野源を見つけて欲しがってるな、と。
はっこ)じゃあ結構世の中が『星野源!』ってなる前から。
とま)うんそうですね。ちょっと前くらいから。
はっこ)おーすごい。
とま)けどなんか結構有名になってからですね、見つけたのは。雑誌とか星野源が乗るようになってからだから、本当に直前でしたねブームの。
(中略)
はっこ)とまさん結構オタクされてた時間長かったっておっしゃってたから。結構いろんなジャンル見てこられたんですか?
とま)なんだろうな。結構いろんなところをフラフラしてたから。どっちかというと初めは二次元が好きだったんですけど。大人になってからは結構2.5とか、三次元の方を推してたりしたので、かなりフラフラ。
はっこ)いや、なんかすごいなと思います。私はすごく狭くした取れなくて。深追いしちゃって、あれこれ一気にできるほど器用じゃなくて。
とま)ああ、でもわかります。私もそうかも。決まってる時は一本になってみる、って感じ。ある程度満足したら、じゃあ次行ってみようかしら、みたいな。
はっこ)なるほどなるほど。ここはもうそこまで掘ったぞって。
とま)そう。スコップ持ってウロウロしてる(笑)
はっこ)いいですね。2.5かあ。とうらぶとかですか?
とま)いや、なんかそういう二次元から2.5次元になった系というよりかは、なんかこう、演劇とかなんですけど、三次元かと言われると三次元じゃないんですけど。なんていうか。
はっこ)ああ、普通にこう、舞台のキャラ、とかってことですかね?
とま)そう。なんか、自分の心持ちというか。一個のものを、なんかそのキャラクターのこととかを、すごく考えちゃって。
はっこ)俳優さんを出待ちする、というあれではなくて、その作品、その舞台の作品を、めちゃ好きになるって感じですかね?
とま)そうですそうです。
◯デザイン、という手法を選んだ理由
なぜデザインだったのか。
「ずっとファンアートができる人に憧れがあったんですがイラストは描けないし小説も書けないしな…と思っていました。でもヒプマイにハマっていろんな方のファンアートを見てると結構デザインでファンアートを作ってる方がいらして、うわ〜かっこいい〜!デザインでファンアートってできるんや〜!やってみたい!となり今に至ります。」
以前お仕事でデザインをされていたこともあり、自分にもできるかも、やってみたい、という気持ちで始めたのがきっかけだという。
はっこ)お仕事でデザインされてた、って聞いて。そりゃあもう、あんな、天才、もう…って感じで(笑)
とま)いやいや、そんな。全然です。
はっこ)なんか、お仕事でもされてて、それを趣味でもやろう、っていうのはすごいことだなあと私なんかは思ってしまって。
とま)うーん、なんか私がこれ(ファンアート)を始めたのは、仕事をやめてから初めてやったので。仕事をやってる時は全然、そんな気分にはならなかったというか。やってみたいな、という気持ちはあったんですけど、仕事でやっとるけん別にいいやっていう。
はっこ)家帰ってもこれかい、みたいな?
とま)そうそう。やりたくない、みたいな感じになって。でも憧れはずっとあったので。せっかくやめたからにはやってみようかな、って。そういうつもりでやりました。
はっこ)私こないだ初めてイラレを触って。あれ、慣れなくて(笑)
とま)わかる。なんか、慣れないうちってほんとイラレ不親切っていうか。
はっこ)円を半分にするだけで一苦労で。
とま)いまだに使ったことのないツールとかいっぱいありますもん。
はっこ)私なんかもう、浅瀬でチャプチャプが限界ですね。だから、デザイン仕事で、ってなるとすごいなあって。でも確かに、分けてるからやりたくなるものってありますもんね。
とま)仕事の延長って思ってしまうとやる気なくすというか。だからうまい具合に、切り離して考えられたから、できたんだな、って。
はっこ)とまさんってどうやってデザイン思いつくんですか?…(自分の質問にちょっと笑って)どうやっても何も…って感じですかね(笑)
とま)そうですね…(笑)なんか結構、自分のためにつくる、というか自分が見たいものを創るっていう感じが多いかも。おはブクロも、なんか作りたいな、って思ってまずパソコンの前に座るんですけど。別に、何も考えがあるわけじゃなくって。多分、おはブクロのグッズが欲しい、って自分が思って。自分が欲しいグッズで、自分が作れるもの、っていう考えなような気がします。なんか、自分の技術と自分の欲しいものの間を。
はっこ)うんうん、二次創作は自給自足だから。
とま)ほんとそうですよね。
はっこ)なんか、私が初めて「概念」みたいなの作ろうかなって思った時も、結構「オタバレしない壁紙が欲しい」っていう感じで。
とま)ああ、わかりますね、自分のニーズを自分で満たしてる感じはありますね。
はっこ)別に聞かれたらね、オタクだって答えられるけど。
とま)おしゃれだとね、気分も上がりますしね。
はっこ)そう。用もないのにロック画面チラチラ見ちゃいますね。
◯概念を創る、ということ
とま)中学生くらいの時って、(オタクを)受け入れられる派と受け入れられない派で結構分かれるというか。
はっこ)分かれますね。
とま)それで、受け入れられない派が結構周りにいたので。聞かれたらいうけど、なかなか自分からは。
はっこ)自分のキャラじゃない、とかね。中高生のころって。
とま)なかなかね。今ほど、おおらかじゃなかったって感じあります。
はっこ)なんとなくね、ひっそり。
とま)ちょっと潜んでました。
はっこ)概念壁紙とか、そういうのはもう潜むのが楽しくなってますね。
(中略)
はっこ)多分オタクじゃない人からしたら、「概念」って言われても「?」って感じなんでしょうね。
とま)確かに。
はっこ)どう説明したらいいのか。
とま)だって全然関係ないものですもんね。
はっこ)ヤマダの概念って信号機とかですもんね。
とま)しかも別にヤマダは信号機の人じゃないですもん(笑)
はっこ)本当ですよね。う〜ん、「キャラをモチーフにした…」?うん?
とま)モチーフ。でも信号機だからなぁ(笑)
はっこ)あはは(笑)そう考えるとね、オタクは何もないところに色々見出してますから
とま)ね、信号機みて「あ!!」って
二人)(笑)
とま)ちょっと(笑)
はっこ)ちょっと怖い(笑)
とま)でもね、幸せですよね。それって。
はっこ)もう、何倍と楽しんでますよ。人生。
とま)信号機見るだけで幸せにね。
はっこ)そう、並びの意味とかね、考え始めるんですよ(笑)
とま)そうそうそう(笑)意外とね、黄色赤青の組み合わせってあるじゃないですか。でもその並び方って結構多種多様で。だからその度に「あ、ここはそうなんだ!」って(笑)
はっこ)あります、あります。三角形に置いてあるとか、横並びとか。そういうの見ると、あああ!って。
とま)意識してないんですけどすごい集めちゃいますよね。
はっこ)いい曲に出会うと勝手にイメソンにしちゃったり。
とま)もう性ですね。もうそうとしか聞こえないですからね。
はっこ)もう脳内ではMVできてますからね。
二人)(笑)
とま)術があれば(笑)
はっこ)ね。だから絵師さんとか、すごいなって。頭の中の映像を出してこれるって。すごいですよね。
とま)めっちゃ思います。なんか、私が二次創作創る時も、イラスト的なものが描けないからできない、ってなって、フリー素材とか探すけどちょっと納得いかなくて諦めちゃうこともあって。自分で描けたらなあってよく思います。
はっこ)ね。シルエットとか、あれさえ描ければ…って(笑)
とま)なかなか。
はっこ)もちろん、こう、これも概念なんだぜって言えるのはデザインの特権だと思うんですけど。一長一短というか。
とま)ね。
はっこ)もうMMDとかね、
とま)訳がわからないですからね。どうやってやるんだ?って
はっこ)モデリング????カメラワーク????みたいな。
とま)どうやってるんだ…?としか。
はっこ)ヒプマイなんか公式では一郎の腕しか動いてないのに(笑)
とま)踊ってる!ってね。そう思うと凄すぎますよね。立ち絵から踊るとこまでいけるっていうのがもう。
はっこ)もうイラレで手一杯なのに…
とま)線引くので精一杯なのに…
二人)(笑)
デザインでのファンアート。
その魅力はセンスが良い、という言葉だけでは片付けられない。
日常に潜む推しを見つけることの幸せが「オタク」の本質であり、デザインの何よりの魅力なのかもしれない。
interviewee: とまさん(https://twitter.com/tomariitara39?s=20)
interview:はっこ(https://twitter.com/hakko_hakohako)
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