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字書きがもちママさんに本気でインタビューした話<前編>


ぬいぐるみ。


小さい時、おそらく多くの人が手に取り、抱きしめ、可愛がった経験があるのではないだろうか。

そして特に二次元に推しを持つ人々にとってぬいぐるみ(通称:ぬい)はまた特別な意味を持った存在である。

アクリルスタンド(アクリル板に印刷された推しの縮小版パネル)やフィギュアではない。


ぬいである。

デフォルメされた愛らしい表情、丸みを帯びたフォルム。
ジャンルによってそのデザインは様々だが、多くのジャンルで見られるぬいぐるみが「もちころりん」(通称:もち)。

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手のひらにすっぽり収まってしまうおはぎ状の小さなぬいぐるみ。
なでずにはいられない魔性のボディから小さな手足がピョコンと突き出した形は、まさしく黄金比。『可愛い』の具現化である。

今回のインタビューゲストは、筆者:はっこがヒプノシスマイク(以下:ヒプマイ)を推す中で出会ったぬいママ:てちこさん。

てちこさんは合計12人のもちたちと暮らすもちママ。
もちたちのためのアイドル衣装を製作してbooth(『Pixiv』による通販サービス)で「ズンドコらいす」の店名を掲げ販売もされている、れっきとした創り手さんである。

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顔のよさと男らしい力強さがフィーチャーされがちなジャンルだが、どうして「アイドル」の衣装なのか。どうして「ぬい」なのか。
『n番煎じ喫茶』第一回は、てちこさんを虜にした魔性のぬいたちの魅力と、彼女のルーツに迫る。


ヒプマイとの出会い


はっこ)てちこさんってヒプマイはいつからご存知だったんですか?
てちこ)私がハマったのは、2019年の1月とか、割と最近ですね。
はっこ)おお、そうですね。一年半前…ちなみに何がきっかけだったんですか?
一年半前っていうと、ちょうど麻天狼が勝った後、『champion』くらいですかね?
てちこ)そうですね。でも私がハマったのは、Youtubeでアンセム聴いてからですね
はっこ)あ〜、私もです。友達からYoutubeのリンク送られてきて。
てちこ)布教されてる(笑)
はっこ)そうそう。でもすごいですね、プロジェクトスタートからってなるともう、結構前のタイミングで。
てちこ)知ってはいたけど、別にハマってなかったみたいな。
周りがハマってるだけって状態でした。
はっこ)なるほど。じゃあ恋に落ちる瞬間は、なんだったんですかね(笑)
てちこ)恋に落ちる瞬間(笑)は…やっぱりその、
去年の一月にアンセム聴いて、あれいいじゃんってなって。
その時にはもう結構曲が発売されてた時期だったので、
もうバトルシーズンも終わって、もうCDが買える、っていう。
はっこ)ああ、あの売り切れ争奪戦、みたいなのが一通り(終わっていて)
てちこ)そうですそうです。曲もいっぱいあって、ニコ生もあるし、
もうこれは追うしかない、って。ヒプマイさんは、供給も多いですからね。

もちとの遭遇、そしてお洋服へ

てちこさんがもちと出会ったのは、コラボカフェにお友達と出向いた時。
Twitterでアカウントを作ったのも、そのコラボカフェに同伴する友達を探すため。
アカウント名は好きな女性アイドルの名前から影響を受けつつ、なんとなく決めたという。
友人と自分の二人ぶん買って、お迎えした「初もち」は左馬刻さま。そこから少しずつ集め始め、お洋服を作るようになったのは去年の夏。
元々アイドルっぽい可愛いお洋服が好きだったのだそう。
「う〜ん、多分『我が子に着せたい』という想いで多分やっちゃったんですよね
とてちこさんは語る。


はっこ)元々お裁縫はお好きだったんですか?
てちこ)いや、全然できなかったです。
はっこ)またまたぁ(笑)
てちこ)いやほんとに(笑)全然できないし、昔、学生の頃とか、
家庭科の授業でお裁縫でなんか作るとかあるじゃないですか。
はっこ)ありますねえ。
てちこ)あれ私やる気出さないから、先生が代わりに作ってくれたりとか。
そんなレベルでしたよ。
はっこ)私毎回居残りしてました。おわんないから(笑)でも意外だなあ。
てちこ)実際に今私がやってる作り方とかも、縫ったりはするんですけど、でもグルーガンとか使ったりとか、工作チックなところの方が多いような気はしますね。
はっこ)ああ、なるほど。
てちこさん 、もちの体重測ったりもされてたじゃないですか?元の衣装に合わせて採寸とかってするんですか?
てちこ)採寸はそうですね、するときはするし、でもどうなんだろ…
自分ちの子の服は割と、ざっくばらんに作りますね。でもboothとかに出品して、よその方にもらっていただく時は、ちょっと気持ち丁寧に(笑)綺麗なものをお出ししたいので。
はっこ)booth、私も開こうかなって思ってるんですけど。結構勇気要りません?
これが人のところに行くんだって思うと。
てちこ)あ〜勇気。確かに。勇気は入りますよね。
ていうか、誰も買ってくれなかったら、っていう。
はっこ)そう、『私の作る本って、需要どこ?』って思っちゃって。
てちこ)実際に本作ったらbooth出されるんですか?
はっこ)そうですね、本作るとしたら多分boothじゃないかと思います。
てちこ)楽しみ!
はっこ)あはは、ありがとうございます。あ、でも屋号?
というか、お店の名前も、決めてなくて。まだ。
てちこ)ああ、サークル名、みたいな。
はっこ)そうそう、てちこさんは、
二人)『ズンドコらいす』
はっこ)なんでズンドコらいすにしたんですか?
てちこ)ズンドコらいすは…う〜ん、私結構、名前を忘れちゃうことが多くて。
なんていうんでしょう、自分で付けた名前とか、難しい名前覚えられないんですよ。
なので、インパクトのある簡単な名前じゃないと、自分が忘れちゃうから(笑)
で、ズンドコライスならまあ忘れないだろうって。
あとは多分コメが食べたかったんだろうなっていう。それだけの名前ですね。
はっこ)めちゃめちゃ可愛い名前だな、と思ってて。
どうしようかな、名前。私も考えなきゃなあ。
てちこ)ドンドコカレーとかいいんじゃないですか?
はっこ)ドンドコカレー(笑)対になる感じで?
てちこ)姉妹サークルみたいな。
はっこ)ワンセットで、カレーライスで。
てちこ)文字書きさんがつけるサークル名って絶対お洒落ですよね。
はっこ)そうなんですよ。他の文字書きさんほんとおしゃれだから。ハードル高くて。
てちこ)いいじゃないですか。はっこさんも、負けてらんねえって感じで(笑)
一番てっぺんとってやるぜ、私が一番おしゃれだぜ、みたいな。
はっこ)じゃあドンドコカレーしかないですかね(笑)

根っこは意外なところに


お話しするうちに、話はこれまでハマったジャンルの話に。
すると、現在のヒプマイにつながるルーツが明らかになり始めた。

てちこ)長年推してるのはヘタリアですかね…
はっこ)ど、どこ領ですか
てちこ)私、島国を推しております。
(※島国:ヘタリアの日本とイギリスのコンビの愛称。どちらも島国であることに由来。)
はっこ)ほあああああ(歓喜)私はドーヴァーと蘭兄さんが好きですね!
(※ドーヴァー:ヘタリアのフランスとイギリスのコンビの愛称。二国間の間を流れる海峡名に由来。)
てちこ)うわあいいとこ行きますね(笑)
はっこ)私ヘタリアでオタクになったので、めちゃめちゃ嬉しいです。
ここで同志様に会えるとは。
てちこ)ありがたやありがたや。
はっこ)『恐れ入ります』
二人)『すみません』(※ヘタリアの日本の名台詞)
はっこ)嬉しい…
てちこ)でも私思ったんですけど、さっき「もちにアイドルを着せる」ってお話
あったじゃないですか。あの『アイランドル』って知ってます?
はっこ)アイランドル!!!はい知ってます!
(※アイランドル:ヘタリアの二次創作で、日本とイギリスがアイドルをやるというパロディ。これに関連した二次創作がたくさん作られており、ヘタリアファンの一部では半分公式のように扱われている節がある)
てちこ)あれで、アイドルが好きで、あのきらきらフリフリみたいな。
そこが性癖の芽生えです(笑)
はっこ)ああなるほど…!確かに。
あの眉毛の元ヤンにあのフリフリを着せて似合うなんてって言う衝撃…
てちこ)衝撃ですよね、ほんとに。
はっこ)アイランドルはね、語感が良すぎますしね。公式か?って。
てちこ)でもズンドコライスも多分島国の影響ですよ。(笑)
ギャグっぽい島国には、『ズンドコ島国』って言うタグがつくんですよ。pixivで。
はっこ)ハイハイハイハイ
てちこ)そうそれで、多分影響受けてるんだと思います。
はっこ)ああ、そこルーツなんですねえ!
てちこ)多分そこですね(笑)
はっこ)なるほど、へえ面白いなあ。
でも多分私も御多分に漏れずヘタリアの影響受けてますね。
てちこ)ああやっぱり、我らの血となり肉となり(笑)
はっこ)多分ドーヴァーが好きなのって、仲良く喧嘩してるの好きなんだと思うんですよ。
てちこ)ん〜〜〜!だからヤマダが好きなんだ!
はっこ)そうそう、だから多分二郎と三郎の、あのやいのやいの言ってる感じ…
もう、なんかもう、ずっと言ってるじゃん!お互いのこと大好きか!って言う。
多分面影探してるんですね。
はっこ)やっぱり、影響受けるんでしょうね。

二次創作は「二次」じゃない


はっこ)ね、なんかそれこそ、三次創作じゃないですけど。
ヘタリアの二次創作から、何かを受信して、また作るって言う。
なんかもう、何次創作なのかわからないものを生み出してますからね。
てちこ)もう何が元かわかんないけど、みたいなね。
はっこ)こないだ医療パロを書いてみたんですけど、ヒプマイの。
てちこ)ああ、お見かけした記憶が!
はっこ)本当に、思いつきで書いたんですけど。
あれもよくよく考えたら、多分『おそ松さん』の二次創作で、医療パロの漫画を
描かれてる方のを読んだことがあって。多分ヒプだったらどうしようかな、って
思ったのが最初なので…もうキメラみたいなものを生み出してますね、
亜種みたいな。
てちこ)これたまらんですね。
はっこ)新たな性癖をね、開拓して行きますよ。
てちこ)いいですね、パロ楽しいですよね
はっこ)自給自足のオタクなんで(笑)
公式がやってくれなさそうなことはね、自分でやるしかないから。
てちこ)次はなんのパロ書かれるんですか?今医療パロやったから、次は?
はっこ)次?(笑)何パロがいいですか?
てちこ)個人的には私、ゲームが大好きなので。ちょっとバイオハザード的なパロが。
パンデミック的なパロがあったら、嬉しいですねえ。
はっこ)背中をあずけあってゾンビを撃ちまくるヤマダが見られるってことですかね?
てちこ)ああ…!それもいいですね!
あとは和風ホラーとかも好きですよ。しっとりした感じの。
はっこ)じゃあ…じゃあ…夏のホラーヤマダ書きますか。(ちょろい)
てちこ)おお!!ありがとうございます!
はっこ)え〜ゲームお好きなんですか?
てちこ)好きですねえ。
はっこ)へえ!でも意外だなあ。てちこさん、ホラゲやるんだぁ。
てちこ)はい。ホラゲと、格闘ゲームとかアクションゲームとか
はっこ)へえすごい。結構しっかりゲーマーじゃないですか。
てちこ)どうですかねえ。

自分の好きなものを推しに託すオタクたち


ゲームは、実はてちこさんが二次元に触れるきっかけでもあったという。

はっこ)てちこさんはいつからアニメとかお好きだったんですか?
てちこ)私は、う〜ん、幼稚園くらいからもうゲームはやってたので。
はっこ)早い!!幼稚園!? なんのゲームですか?
てちこ)格闘ゲームとか。鉄拳とかやってましたよ
はっこ)おお。ハードなのいきますね。
てちこ)父親が持ってるゲームソフトを、やるっていう感じ。
そういう感じだったんで、アニメとかゲームとかに興味を持つのは
もうそのくらいからでしたね。
(中略)

はっこ)そんな格闘ゲー・ホラゲ大好きなてちこさんから、
あのもち衣装が生まれてるんだって思うと、不思議な気持ちですね(笑)
てちこ)そうなんですよ。(笑)全然違うんですよ。
私が普段自分がきてる服も、黒・白・グレーみたいな、シンプルなのが多いので。
なんか、我が子に着せてるのとは全然違ったりしますね。
はっこ)逆にね。
てちこ)うん、こんなフリフリピンク着ない。私は着ない(笑)
はっこ)推しに着せたい服と、自分の着たい服って必ずしも一致するわけじゃない
ですからね。逆にこう、だから着せたい、っていうのもありません?
てちこ)ああ〜ありますあります。
私は着れないけど、でもこれこの子が着たら絶対に可愛いな、みたいな。
はっこ)私小説の中で結構やっちゃいます。(笑)
私はしないけど、彼はこういうことやるでしょ、みたいな。
彼ならやるでしょ、っていう。
てちこ)もうむしろやれ、っていうね
はっこ)そうそうそう。
てちこ)自分の願望をぶちまけるっていう。

はっこ)そう、もう自分の願望をぶちまけるのがオタ活だと思ってるんで。

てちこ)確かに。大事ですね。


<後編へ続く!>

interviewee:てちこ(@kpmn123)https://twitter.com/kpmn123

(記事中の写真は全ててちこさん撮影!)

interviewer:はっこ(@hakko_hakohako)

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