身体を分割して動けば、出足が早くなる
武術でもスポーツでも、移動は大事な要素です。
最近、気がついたのは、
「全身同時に動かなくてもいいんじゃないか?」
ということ。
・早く動く方法は2つある
人間が移動するには加速・減速が必要です。
物理で考えると
加速度 = 力 ÷ 質量
なので、急加速・急減速をしたいなら、方法は2つ。
力を大きくするか、質量を小さくするか、です。
一般的に使われるのは、力を大きくする方法。
筋力を上げたり、力を出しやすいポジションを使う(関節を曲げすぎない)、重力の助けを借りるなどもありますね。
今回考えたのはもう一つの、質量を小さくする方法です。
・一部を残して動く
全身を動かすのではなく、一部を残して移動できたら、移動質量は小さく、加速は大きくなります。
剣道のすり足を例に取ると、後ろ足で蹴って移動するのではなく、後ろ足と片側の骨盤を残して体幹で動き始める感じ。
その他、
1.右半身、左半身で分ける
2.背中側を残して、腹側を進める
(背中を落とし、胸を上げることで可能になる)
→ 肋骨の操作 ・ 脊椎のカーブ
などなど。いずれも体幹の操作で、動かす部分を変化させます。
動かす部分が軽いため、気配少なく、早く動き出すことができます。
動き出しの他、停止も容易です。
動き出した前半分のエネルギーを、残してきた後ろ半分を引き寄せるために使うと運動が相殺され、前足を強く踏みしめなくても停止できます。
・もちろん、万能ではない
動き出しの速さも、停止の容易さも、身体が伸ばせる範囲でしか機能しません。動きの大きさにして半歩、せいぜい一歩まで。
半歩動くだけのすり足などでは、地面を蹴って動くよりも早く、予備動作少なく動けます。
一方、遠間からの飛び込みなど全体が動く距離では分ける意味がなくなるので、機能しません。
・応用
残す場所によっては、身体操作に使うこともできます。
例えば剣を正眼に構えたところから、肩と腕を残して前に出ると、自然に剣が振り上げられた形になります。
右半身、左半身の片側を残して動くと、そのまま転身の動きになります。
まだいろいろな可能性がありそうだなと考えているのです。