身体は位置がわからないと頑張れない ~ 情報システムとしての人体③
身体は位置情報にも敏感で、正確な位置がわからないと力を出すことができません。
・指1本で強くなる?
実験を一つ。
目を閉じて、右手を前に出します。誰かに、手のひらを上からゆっくりと押し下げてもらい、それに抵抗してみましょう(押し下げはごくゆっくりしてもらってください。速いと反射神経の問題が混じるので、結果がわかりにくいです)。
次に、同じように右手を出しながら、左手の指一本で右手に触れます。その状態で右手を押し下げてもらって下さい。
左手で触れているときのほうが、ずっと力が入る感じがしませんか?
触れているのは指一本、決して支える助けにはならないはずですが…。
・位置の認識で力が変わる
脳は身体の状況を常にモニターしています。間違った方向へ力を入れたりすると、よろけたりする可能性があるので、身体各部の位置を判断し、力の方向や大きさを決めてるのですね。
しかし身体の位置を正確に測定するのは簡単ではありません。
例えば、手のひらの位置をモニターする場合。
①肩甲骨の位置と、肩の角度を基準に、肘の位置を推測。
②肘の角度を基準に手首の位置を推測。
③さらに手首の角度を加味して、手のひらの位置を推測。
と、伝言ゲームのようにいくつもの段階を踏むしかないので、関節の数をまたぐほどデータは不確かになってしまいます。思い切り力を出すには、まだ情報が足りません。
ところが、もう一方の手が触れていると、話が変わります。
それぞれの手による測定を突き合わせて誤差を修正するので、一気にデータの確度が上がって、力が出しやすくなるのです。
子供用の護身術には、腕を掴まれたときに、手を組んでから身体を回して振り払う技があります。
これは輪を作ることで、両手の力を使えるという意味があるのですが、もしかしたら、両手をつないだほうが力が入りやすいという理由もあるのかもしれません。
・ちなみに
この実験、実は目を閉じているところがポイントです。
目で見ていると視覚情報で位置を修正できるので、片手でも力が入るようになりやすいのです。
筋肉は、脳からの司令で一方的に動いているようですが、筋肉の感覚だったり、目だったりと、双方向で会話しながら仕事をしているわけです。
報告、連絡、相談しだいで仕事の能率が変わるのは人間と同じかもしれません。
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