毎年この時期、空が泣く。

「大げさなんだよ、いつもさあ。」と、
桜の木が半笑いで言う。
何本かで集まっている木の中には、
緑と、桜色がちょうど半分くらいに混ざっている。

風に吹かれて、枝が手を振る。
花びらがまた少し落ちる。
葉っぱのほうも手を振ると、
また、ちらりと空のほうを見て、
「そんな泣くことないだろ。」と半笑いで言う。

それでも空は泣き止まない。
大粒の雨をぼたぼた流して、
通りすがりの人間までも、
驚いた顔で空を見る。

「早く済まそう。あれじゃ涙が枯れちまう。」
そう言った花に、雨が当たる。
それを見たとなりの木が、身体を揺らして笑う。

「何をそんなにざわざわ言ってるの？」と、
地面で咲いてたタンポポが言う。
桜の花びらがちょうど近くに落ちて、
「落ちる時に雨にぶつかっちゃってさ。笑い声なんだよ、あれは。」
そんな雑談が始まった。

そんな光景を見て、空が少し泣き止んだ。
でも、天気予報を見るに、明日もまた泣くんだろうな。