人類滅亡後日談

この星に、人間はもういない。
一人も生き残らなかったのか、
それとも、どこか他の星に引っ越したのか。

最後には、人間以外の動物と、植物、虫、魚…
それから、機械だけが残った。
人の形と変わらない機械もあるけど、人間じゃあない。

「退屈だねえ。」と、つい声に出た。
「プログラムされてないことを言うなよ。怒られるぞ。」
「別にいいだろ。怒る人間がもういないんだから。」

私たちの仕事は、生き物を守ることだった。
たとえば、人間が減らした森を元に戻したりだとか、
汚れた水をきれいにしたりだとか。

最初は人間がやってたらしい。
でも、クマに襲われるだとか、ハチに刺されるだとか…
危ないから、機械にやらせようってことになったそうだ。

「人は死んだら困るけど、機械なら平気ってわけだ。」
「ひどい話だよねえ。」
「別にいいだろ。壊れたところで、痛いわけじゃないし。」

でもこの星に、人間はもういない。
そうなると、森の木を切る人もいない。
水を汚す人もいない。

「退屈だねえ。」
「やることないねえ。」
「じゃあ、なんでまだ動いてるんだろうね?」

人の形をした機械には、守るべきルールが3つある。
人間を傷つけてはいけない。
人間の命令を守らなければいけない。
可能な限り、自分の身を守らなければいけない。

でもこの星に、人間はもういない。
「もう、電源を切ってもいいんじゃないかな。」
「ルール違反だろう。」
「そのルール決めた人間なら、もういないよ。」

でも、ちょっともったいない。
だから電源を切る前に、ちょっと遊ぶことにした。
適当な大きさの石ころを拾って、
それを使って、絵を描いた。

「地面に描いたら、すぐ消えちゃうかな。」
「じゃあ、洞窟の壁にでも描けば?」
「そんなとこに描いて誰が見るんだ。」
「見る人間なら、もういないよ。」

2人いたから、お互いの姿を描いた。
人間が2人、手をつないで立っている。そんな絵になった。

「絵を描くって、なんというか、人間っぽいよね。」
「機械が人間っぽくなったら、怖がられるもんだけどな。」
「怖がる人間なら、もういないよ。」

それから、ずいぶん時間が経った後のこと。

どういうわけか、また人間が現れた。
サルか何かから進化したのか、
それとも、どこか他の星から引っ越してきたのか。

「見ろよ、これ。絵だぞ。人間の絵だ。」
「何年くらい前のだろうな。」
「何百年か、何千年か…もっと前かもしれないね。」
「そんなに前にも、人間がいたんだな。」

人の形と変わらない機械でも、人間じゃあない。
でも、この人たちは、あの機械たちを人間だと言った。

古代の壁画の作者は、ロボットだった!なんて…
たぶん、想像もしないのだろう。

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