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ご入院日記

無事に手術が終わり、13個の子宮筋腫を切除してもらった。フィブ郎、お前そんな大家族だったのか。
そういえば、このフィブ郎という名前は英語のfibroid(子宮筋腫)にちなんでつけたものだが、フランス人の英語の先生によると「fibroidのfibはたぶん繊維(ファイバー)という意味だからフィブロイドではなくファイブロイド」らしい。「核」と書いて「あとむ」と読ませるキラキラネームと同じレベルの失敗だ。無知な親による命名のせいで子供に一生の恥をかかせてしまった。
ちなみに、この先生にフィブ郎の写真(※)を見せたところ「オーマイガ!」と絶句した後、「子宮筋腫を切り取ったら中をくり抜いてランプシェード作ってニトリで売ろう!」とアシッドな提案をしていた。さすがフランス人。英語を教えるふりして、すぐアメリカ人の悪口を吹き込んでくるところも面白い。

※先生に見せた写真。仰向けの状態で右が頭、左が足。タオルケットの柄の趣味の悪さにも注目だ。


話は逸れたが、未だ入院中である。
入院初日は、ベッドに着くなりいきなり下剤を渡され、お粥と汁しか摂取できない状況でガンガン排便を促された。手術への不安とは別に「もしかして全身麻酔の間にアナルファックされるのでは…?」という疑念が生まれた。
下剤による猛烈な便意と戦いながらシャワー室でマン毛を剃ったり、麻酔が切れた瞬間に「うんち出そう…」と呟いたり、常に肛門周辺への不安と隣り合わせのスリリングなひとときを過ごした。アヌスが拡がった様子はないので、どうやら手術中に後ろの穴は使わなかったようだ。
冒頭でも書いたが、手術は無事成功した。握り拳サイズの筋腫が2個、それ以外はお団子くらいの大きさだったそうだ。つまり、子宮本体よりもでかいコブが2つ、子宮の半分くらいの大きさのコブが11個ひっついていたということになる。ボコボコしたコブの集合体の真ん中が子宮みたいなイメージだろうか。

手術後は極力元気に過ごしているものの、血圧が低すぎたり、38度の熱が続いたり、入院中なので当たり前だが体調はあまりよろしくない。
一時期、痛み止めの副作用で血圧がとんでもない数値になってしまった。びっくりした新米ナースが緊急ボタンを押し、どこからともなく看護師が2人現れ、恐るべき手際の良さでテキパキと処置して去っていった。
2人の看護師のうち怖そうなベテランが、
「今の、いい判断だったよ」
と言い、新人ナースが
「…はいっ、ありがとうございます!」
と、赤面しながら応じるという熱い展開を垣間見ることができた。
こちとら吐き気と冷や汗でそれどころではなかったが、遠のく意識の中でいいものが見れてラッキーだった。

現在は血圧も熱も落ち着いたが、シンプルに傷口が痛すぎて思うように動けない。体の一部を12センチ切り裂いてまだ数日しか経ってないのだから当然といえば当然だ。
そう考えると、股間がズタズタになっているのに、自分の回復よりも赤ん坊の命を優先させなきゃいけない世のお母さんたちはすごい。彼女たちの痛みと苦しみを想像するだけで、気が遠くなりそうだ。小さい子供がいるのに、家で嫁のケアをしない男がいたら今後も強めにぶっていこうと思う。

入院生活も残すところあと4日。
禁酒禁煙禁欲なんて絶対無理だと思っていたが、体調の悪さの前では全ての心配事が「それどころではない」に集束する。
今一番の心配事といえば、昨晩病院のベッドでおねしょをしたのに、まだ看護師さんに言い出せていないことである。体の自由がきかないせいでトイレのタイミングに間に合わず、少し漏れてしまった。体調に密接に関係するベッドに係る心配事なので、こればかりは「それどころ」である。
酒よりタバコよりちんぽより、新しいシーツが欲しい。今私が望むのはその一点のみである。

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