身辺整理1-作品
僕は東京杉並区のひっそりとした住宅街で生まれ育っている。家は近くにある3つの駅を線で結んでできた三角形の外心くらいにある。家を建てるときに他と比べて安かったんだろうか。最寄り駅まではいずれも徒歩で12分くらいかかるが、言い換えれば大変静かな場所で気に入っている。近くには善福寺川が流れていて、川沿いに公園がそれなりにあるから東京にしては自然が豊かな方なんじゃないだろうか。
昔は大雨でよく氾濫したらしいが、最近地下に巨大なトンネルみたいな水の逃げ場所が作られたから安全になった、と父が感心したように言っていた。まあうちは河岸段丘の3段目くらいに建てたから元から水害なんかとは無縁なんだけどな、みたいな事もちょっと自慢げに言っていたと思う。
小学校は地元の公立に行った。子供の少ない時代だからなのか、近くに3校くらい更に小学校があるからなのか分からないが、ひと学年に60人くらいしか居なかった。男子でいうと30人くらいしか居ないので全員とすぐに仲良くなったし、同様にみんなとつるんでいた気がする。もちろんその中で特に仲のいい子とかは居たけど、とにかく満遍なくみんなと話してたな。
地頭は割といい方で小学校のテストはだいたい100点か間違えても1ミス2ミスとかだったと思う。1年生の初めからそうだったので僕にとってはそれが普通だったな。平仮名がわからない子とか60点とっちゃう子とか僕にとっては不思議な存在だったし、よく分からなかった。
でも完璧主義って訳ではなかった。クラスの女の子が漢字の50問テストを1ミスで100点取りこぼして泣いた時はびっくりした。なんで泣くの?って。今になって生きていた世界が違ったんだなと思う。その子はずーっと公文式に通っていて、いわゆる優等生で真面目で上品でかわいくて親の手心を感じる「作品」だった。多分悔しかったんだろう、傷ついたんだろう。100点が彼女のアイデンティティだったから。
当時は分からなかったけど、そう言う点で言えば僕は恵まれていたのかもな、毎日鼻くそ食べてた。あだ名が当時流行ってた妖怪ウォッチのハナホ人になって最悪だった。人差し指でほじってたせいで鼻の穴が大きくなってしまったのが致命傷すぎて辛い。せめて銀ちゃんみたいに小指でほじっておけば良かった。
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DSを持ってなかったので友達のゲーム画面を見て学習した
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中学校も地元の公立に行った。小学校と同じ名前の中学校でほぼほぼ隣接されている形だ。もともと家から小学校まで近かったけどさらに40mくらい近くなって、それが地味に嬉しかった。遅刻しそうなときに使う体力が結構変わるんだよな。提出物とか宿題とかやるんだけど持ってき忘れる性質だったから、家まで取りに戻る距離が都合80mくらい短くなるのも地味に嬉しいポイントだった。
母校の小学校から四分の三くらい、そのほかの小学校から四分の一くらいの、やっぱり60人の学年だった。同じ小学校の子とは関係継続、初めましての子とはだいたいが知り合いくらいで終わったかな。小学校よりグループ化が進んだと思う。みんな自他の境界を引き始めたと言う感じで成長を感じたけど、ちょっと寂しかったな。
お勉強の方は小学校に引き続き優秀、通知表はオール5だった。親には従順だけど先生とかには反発的な斜に構えたような反抗期で、学校関係に色々噛みつこうとしていた。でも同時に、親を喜ばせるための優等生の記号を洋服のように着ていた。荒れていた訳ではなくて、至って真面目だった。自分を勝手に規制する制度とか仕組みとかにどことなく憤りを感じていた。今振り返ると、反抗期特有の何かから解放されようとする推進力が仕方なく親じゃなくて学校に向いていたようにも思える。親は全体的に放任主義・意思尊重主義だったから僕の親へのパンチは宛先もなくただ空を切るのみだった。僕の一挙手一投足は全て僕の責任になっていた。先生へのテスト内容の直訴・抗議しか、僕は反抗の道を知らなかった。
父が反パターナリズムで母が本当に若干の親パターナリズムなのだが、それを火種とした親喧嘩がたまに発生するのが怖くてストレスでしんどくて嫌いだった。でも僕が”自発的に”優秀である限りはそれは滅多に起きなかった。塾に行かずに”自力で”取ったテストの点を自慢すると両親は揃って褒めてくれた。それが嬉しかったし安全基地だった。僕は自ら親の「作品」になりたがるようになった。
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読破すると親が褒めてくれた。学校の読書記録に書くと内申点になった。