感想『封印再度』森 博嗣
岐阜県の旧家、香山家に伝わる家宝『天地の瓢(てんちのこひょう)』と『無我の厘(むがのはこ)』
『無我の厘』には鍵がかけられており、『天地の瓢』には鍵が入っている。
しかし、鍵は『天地の瓢』より大きく取り出すことが出来ない。
先代は鍵を『天地の瓢』に入れ、亡くなった。
自殺とされているが、凶器は見つかっておらず、現場は密室。
この謎に興味を抱いた西之園萌絵は香山家に乗り込む。
そして、先代と同じ状況下で現当主が亡くなった。
家宝と殺人の謎に、犀川と萌絵の師弟コンビが挑む。
旧家で起こる殺人といえば、愛憎、財産、もつれる人間関係・・・を思い浮かべるが、そんな感情的な方向に走らないのが森先生。旧家独特の建築様式、天文、化学、哲学まで網羅しているのに、文体は明確で分かりやすく、テンポの良い会話が読者を飽きさせない。
殺人が起きても感情的にならず、かといって冷たくもならない。実際に起きた出来事や証拠のみを信じ真相に辿り着く犀川。
殺人や密室、謎に目がなく、妄想に近い想像を膨らませ、取捨選択を繰り返し、真相に近づく萌絵。
二人の正反対なキャラクタに加え、犀川ゼミの国枝助教授、大学院生達の見事な推理劇と会話の展開の仕方が面白い。
理系が苦手でも、丁寧に読んでいくと、しっかり理解が出来る上、見事な伏線回収に唸らされること間違いなし。
ちなみに、森先生の作品は、題名が非常に重要。
題名からトリックが分かることもしばしば。
でもその意味が分かるのはラストに辿り着いた瞬間。
やられた、、、
この悔しさ、その百倍の面白さがあるから森博嗣先生の作品を読み続ける私なのだ。