祖父の葬儀と勝手に分骨
父方の祖父は、私が20歳の年に亡くなりました。
1月8日、風が冷たい日でした。
祖父の死因は肺がんです。
もともと、酒とタバコが大好きでした。
アルコール依存症を克服したのち、通信制の大学を卒業した祖父ですが…
タバコを辞めることはできなかったようです。
タバコが辞められない。
その気持ちは、今の私にはよくわかります。
祖父は、多趣味でした。
俳句を詠む、水墨画を描く、尺八に至っては師匠から「号(名前)」をもらっていたようです。
たしか「釈峰」だったような。
そういえば祖父も、写真を撮っていました。
父の証言によると、祖父は二眼レフのカメラを持っていたそうです。
さらに祖父は、四国のお寺で出家得度を果たしていました。
地元で有志を募り、よく四国に詣でていたそうです。
と、そんな祖父でしたが。
葬儀は「友人葬」にて執り行われました。
祖父の妹2人は、創価学会員でした。
喪主は、長男である父の兄、つまり私にとっては伯父でした。
伯父はもともと無宗教でしたが、祖父の妹の息子(つまり伯父・父のいとこ)の説得で、創価学会に入信していました。
父は入信していませんでした。
が、祖父の葬儀に口を挟める立場ではありませんでした。
祖父の葬儀に納得がいかなかったのは、私です。
四国で出家得度までした人なのに。
お大師さんをリスペクトし、あれほど四国に詣でていた人なのに。
祖父の妹と、その息子たちは言いました。
「本人は、友人葬をすることに納得して死んだ」
と。
さらには「あのおっちゃん(祖父)も、最後は日蓮上人の教えの良さをわかってくれたんや」と。
そんなわけあるかい!!!!!!!!!!!!!!!!!
あれほどお大師さんを尊敬していた祖父が。
あれほど四国に行っていた祖父が。
創価学会、日蓮上人の教えが悪い、とは私は思いません。
日本は「信仰の自由」が認められているからです。
ただ、創価学会(日蓮宗)について、私が納得いかないのが、他の宗教を否定・批判するということなのです。
四箇格言、という言葉があります。
日蓮の言葉です。
それには、
真言亡国
禅天魔
念仏無間
律国賊
とあります。
真言宗、禅宗、念仏(浄土宗、浄土真宗)、律宗を「これでもか」といういくらい、否定しているのです。
祖父は創価学会の友人葬に納得した、と大叔母とその息子は言いましたが…
祖父は、そうでないと自分の葬式をやってもらえない、ということもわかっていたのだと思います。
祖父の葬儀で、大音声の「お題目」が唱えられる中…
じいちゃん、納得いかんやろなぁ、悔しいやろうなぁ、
私はひたすら、下を向いていました。
そして祖父の葬儀・火葬が執り行われました。
腹が立って仕方がありませんでした。
私は父に訴えました。
じいちゃん、絶対に悔しいはずや、と。
父に信仰はありませんでしたが、私の気持ちは多分わかってくれました。
葬儀が終わり、初七日を過ぎると、祖父の家はめっきり静かになりました。
訪れる人もなく。
父が言いました。
「今や」
と。
私は父と、祖父の家に行きました。
(といっても、自宅からすぐ近くだったのですが)
そして骨壺から、祖父の遺骨を3かけほど取り出し、ティッシュに包みました。
それを、新たに用意した骨壺に納めました。
その骨壺を、私は高野山に持って行きました。
そして母方の祖父の納骨をした寺に納めました。
「昨今、宗教の違いからこのようなケースがあります」
ご住職は、そう言いました。
友人葬の場合、戒名はありません。
ですがこの寺のご住職は、祖父に戒名をつけてくれました。
「真覚正道居士」
これが、祖父の戒名となりました。
その日のうちに、位牌も作りました。
この一連の私の行動は、大叔母およびその息子は知りません。
私が父と勝手にしたことです。
勝手に分骨をしたのは、あるいは罪なのかもしれません。
ですが、あれほどお大師さんをリスペクトしていた祖父に…
私は少しでも報いたかったのです。
じいちゃん、ちょっとは喜んでくれてるやろか。
今、祖父の位牌は我が家の仏間にあります。
私の母方の祖父母の位牌と、夫の先祖代々の位牌とともに並んでいます。
そういえば夫のご先祖様も、宗教は多分違います。
それでも。
鰯の頭も信心から。
ご先祖を供養するという「心」があれば、それでいいのではと思うのです。
いただいたサポートは、リポビタンDを買うために使わせていただきます!