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「シン・エヴァ」は前代未聞のプロマネ術か?(3)「プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン」をPMP目線で読んでみた

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この記事ではPMBOK6版のプロセスと比較しています。PMBOK7版で学習されている方はPMIから出版されている「Process Groups: A Practice Guide」を合わせてご覧ください。

本書をシン・エヴァ・プロジェクトの振り返り資料とみなした場合、プロジェクト計画と実績の乖離に関する分析結果と考察が書かれていないのは残念です。公開できる情報と公開できない情報があるのかもしれませんね。
PMBOK6版の統合マネジメントでは、計画時の目標に対して評価基準、基準を満たしているかどうか、満たしていない場合はその理由などを記録します。


計画と実績の差異

本書で示されているプロジェクト実績の中では、プロジェクト開始時点の計画・想定からどれだけ変わったかということと、計画のベースライン自体がどう変遷したのか、計画が変更された原因・理由などが気になります。

例えば、本書ではプロジェクト期間とフェーズが線表で記載されています。これ自体はとても良いですが、プロジェクトマネジメント視点で振り返るなら、計画と実績を比較できる線表を明示して、そのギャップを分析して記録しておくのがよいと思います。
シン・エヴァ・プロジェクトで実施した個々のマネジメント手法を後に実施するプロジェクトへの教訓・参考情報として残せるのがベストです。

本書で示されている工程

通常、プロジェクトマネジメント計画書や振り返り資料には工程・プロセスの説明が記載されます。
本書では、シン・エヴァの作品構成、全体工程図および各工程を細分化した図で示されています。私はアニメーション制作に関して全く知識がないため、なるほどこんな風にもの作りをするのかと感心しました。

プロセスを体系的に整理しようとしており、わかりやすくてとても良いと思います。本書によると、アニメーション制作においてもWBSをしっかり用意して管理しているようです。
この手法が他のアニメーション制作でどこまで同様に行われているのか興味深いですね。

庵野氏はプロマネか?

本書の帯には「前代未聞のプロマネ術」と文字列が書かれていました。
今さらですがシン・エヴァ・プロジェクトのプロマネは誰なのでしょうか。

総監督とエグゼクティブ・プロデューサーはおそらくプロジェクト統括責任者としてプロマネを任命する立場でしょう。本書に掲載されている体制図の中では「制作」チームがプロジェクトマネジメント・チームの役割を担ったのかもしれません。

体制表を見ると、体制図にちりばめられている様々な役割ひとつひとつに人数と所属などが詳細に記述されています。延べ1,172人がスタッフとして参加したことが書かれていますが、株式会社カラーに所属するメンバ、フリーランス、協力会社や協力会社からさらに外注したメンバなど、本当に多くのスタッフが携わったことがわかります。

次回は引き続き「2章 プロジェクト実績」の中で、主にコミュニケーションのところを見ていきます。

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