バイタリティ
個人特性の一つ。気力や活力を意味し、エネルギーの高い人をイメージすると良い。一方で、バイタリティはそれだけにとどまらず、幅広い意味を持つ。エネルギーの量だけでなく、持続性等も含まれている。
エネルギーが高いというのは、例えば、グループ討議で頻繁に意見を述べる人、表出が多くて全体の中で目立つ人、というようなイメージである。一方、エネルギーが持続する人とは、表出は多くなくても、自身の内面でエネルギーを内燃させ、手を抜かずに議論に関わり続けようとする人のことだ。
バイタリティのプラス
持続性と似た意味になるが、成果を高めようとする姿勢もバイタリティ的な行動である。討議中に、もうこれくらいでいいでしょ、といった発言をする人は元気であってもバイタリティが強みになりにくい。もっと議論を重ねて良質な成果にしていこう、というような前向きな態度や行動が求められるのである。
これも同じような意味だが、責任感みたいなものも含まれる。自分で引き受ける、当事者として自ら行う、などの行動はバイタリティのプラスである。例えば、面接で「私に任せてほしい」というような言葉が出てきたとき、アセッサーは、この人は当事者意識が高いなという印象を持つかもしれない。
かもしれない、という曖昧な言葉を使ったのは、この言葉が出ればバイタリティのプラス、というような定型的な判定をしていないからで、そこに至るまでの文脈が大事だからだ。例えば、部下のお前が悩んでいるなら私が引き受けてやるぞ、という意味で述べたなら、これはバイタリティのプラスである。
一方、お前がしゃしゃり出るとややこしいから引っ込んでいてくれ、という意味で述べられた言葉なら、バイタリティのプラスとは取らないはずである。あるいはその場をしのぐためだけに苦し紛れに発した言葉だったら、これも当然バイタリティのプラスとは取らないだろう。
とにかく大きな声を出して元気よく振舞えば良いのかというと、もちろんそうではない。一心不乱で性急なイメージを感じさせたり、態度や言動に余裕やゆとりがない場合は、ストレス耐性のマイナスと捉えられる可能性が高い。物事に対する真摯な取り組み姿勢が求められるのである。
演習における具体的な行動
演習における具体的な行動を考えてみよう。
グループ討議
グループ討議では、関わりの大きさを意識してほしい。議論への関与を深めていこうとする、議論になんとしてでもついていこうとする、そういった姿勢はプラス傾向である。例えば、自分はこう思う、あとは勝手にどうぞ、という態度はバイタリティのマイナスだ。
あとは勝手にどうぞ、とは実際には思っていなかったとしても、言い切って終わり、といったような一定の距離を保つタイプはバイタリティを感じさせないので注意してほしい。ああでもない、こうでもない、と前向きに議論に参加し続ける態度は持続性でもあるし、成果を高めようとする行動でもある。
議論を終わらせる行動はどうか。これくらいで、終わりにしておきましょう、という態度はバイタリティのマイナスである。一方、タイムマネジメントとして、時間内に終わらせる行動はコントロールのプラス傾向である。勘違いをしないでほしいのだが、いたずらに議論を延ばせばいいというものでもない。
面接
面接では、繰り返し組織要請を訴えかけたり、なんとしてでも相手の問題行動を改めたい、という気概が感じられるとプラス傾向であろう。当たり前だが、組織や相手をより良い状態にしようという意思が伝わって初めてバイタリティのプラスになることを理解してほしい。
ただし、相手を自分の意のままに動かしたいというような気持ちは、人材活用力や啓発・支援のマイナスである。相手の言い分を聞かず、こちら側の要請をひたすらに伝えるという行動は、柔軟性や適応力、創造力のマイナスである。一方、コントロールはプラスかもしれない。
インバスケット
インバスケットでは、当事者意識や責任感が感じられる対応、例えばクレーム処理などに自ら奔走していたりすれば、バイタリティはプラス傾向だろう。我関せず、という態度はもちろんバイタリティのマイナスだし、それ以前に仕事に対する態度に問題があるようにも感じる。
注意点
バイタリティがプラスの人はどんなことに気をつければよいだろうか。
イニシアティブと同じように、バイタリティが強い人もつい身体が動いてしまう人が多いように感じる。エネルギーや責任感で突っ走ってしまうことも多いのではないだろうか。時にはじっくり思考を深めることを意識してほしい。
バイタリティを高めるには
最後にどうやってバイタリティを高めていくかを考えてみよう。
身体を鍛える、というようなことではないかもしれない。いやもちろん、エネルギーを高めるためには、まずは健康であることは大切である。しかし一番大切なのは、仕事に向き合う姿勢であろう。
目標を今よりも一段高く設定する、自分の力を余すところなく注ぎ込む、こういった態度で仕事ができているだろうか。また、他責にすることなく、全てを自分の責任で引き受ける姿勢も涵養してほしい。あなたは、何かミスや問題があったときに、それらを自分事として捉えることができているだろうか。
矢印が他者に向いている人は、残念だが成長しにくいだろう。何事も自分事として捉えて、常に前進する姿勢がある人はきっと成長していくはずだ。一方、私は、あまり自責が過ぎるのも危険だと思う。ある程度のゆとりや適当さも持っていないと精神的に不調になる可能性があるので気をつけてほしい。
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