
イニシアティブ
イニシアティブとは
個人特性の一つ。私たちは普段この言葉を、「イニシアティブを握る」という意味で使うが、HAでのイニシアティブの意味は少しニュアンスが異なる。HAにおけるイニシアティブは、率先や迅速、果敢といったような意味を含んだディメンションを指す。
プラス・マイナス傾向
例えば、じっくり構えてメンバーを裏で操るような影番・裏番的なマネジメント・スタイルの人を考えてみると、確かにイニシアティブ(主導権)は握っているといえるものの、HA的にはイニシアティブ(率先性)はマイナス傾向となる。
イニシアティブは、素早く着手したり、あるいは率先して発言したり、といったスピード感が求められるディメンションである。
一方で、中には研修や試験だからと、頑張って前に出てくる人がいるが、とにかく前に出ればイニシアティブがプラスになるかというと、そうでもない。
例えば、ガチガチに緊張しているけど、それでも頑張って前面に出てくるというような行動は、ディメンションのイメージと少し異なる。イニシアティブは、気軽さや気さくさも含んでいるからだ。気負わずにスッと出てこれるのが、イニシアティブ的な行動なのである。
また、このディメンションは、踏み込みの深さも表している。問題状況にもう一歩踏み込もう、といった態度や行動はイニシアティブのプラス傾向である。一方、慎重に構えて、迂闊には手出ししてこないような人のイニシアティブはマイナス傾向である。
例えば面接のときに、単刀直入に話を切り出して、相手の問題行動を是正する人がいる。開口一番に攻められるのは相手役にとっては辛いものがあるし、こういった行動が必ずしも良い行動とは言えないのだが、イニシアティブというディメンションの行動としてはプラス傾向である。
逆に、世間話やアイスブレイクからはじめて、直接的には指摘せずにじわじわと問題状況を確認する人もいるが、こういった行動はイニシアティブのマイナス傾向である可能性が高い。勘違いしないでほしいが、すぐに是正すれば良いということではない。
速やかな是正という行動は、確かにイニシアティブはプラスかもしれないが、その反面、人材活用力や啓発・支援、創造力はマイナスかもしれない。HAは、トータルの文脈が非常に重要であり、この言葉があれば正解というような単純なものではないことに留意してほしい。
さらに、自発的とか積極的といったポジティブな意味もある。あらさがしをするような行為や、ネガティブチェックに傾きがちな人は、このディメンションのイメージと異なる。物事を前向きに捉え、まっすぐに突き進める人がプラス傾向である。
演習における具体的な行動
演習における具体的な行動を考えてみよう。
グループ討議
グループ討議では、まずは口火を切って発言する行動が挙げられる。おそらくアセッサーは、口火を切った人が誰か、発言が後発になった人は誰か、といった情報を記録しているはずである。
しかし、口火を切るだけでは、おそらくイニシアティブが強みということにはならないだろう。議論にちゃんと加わる解放感や交流感みたいなものも必要となる。内に閉じこもってしまって周囲と交流できていない、というような行動はイニシアティブのマイナスになる。
面接
面接では、スピード感やテンポなどに加え、問題状況にどこまで切り込んでくるか、という行動が必要となる。積極果敢な姿勢があるかというところである。スピーディーなやり取りは、イニシアティブのプラスでもあるし、キャッチの良さという意味では情報把握力のプラスでもある。
面接は、どこまで踏み込んだ対応をとるのかで、イニシアティブの強さがわかる。確かに10分間という時間ではちゃんと話を収束させることは難しい。しかしだからと言って、今回は情報収集・状況把握で良しとする、というような態度が見えると踏み込みが浅いと判断されることになるだろう。
インバスケット
インバスケットでは、多発しているトラブルに対して、速やかに手を打っているかどうか。例えば、クレーム対応などのトラブルに対して、自ら謝罪に赴く、といった行動や、テキパキと指示を下して問題を捌いていく行動などは、イニシアティブのプラス傾向である。
ちなみに手書きの場合、アセッサーは文字に勢いがあるか、というようなところも見ていることが多い。だから勢いよく書くべきだ、ということではない。あまり気にする必要はないが、そういった些細な箇所にもその人の特徴というものが出てしまうということだ。
注意点
イニシアティブがプラスの人はどんなことに気をつければよいだろうか。
特徴として、考えるよりも先に身体が動く、というところがある人も多いのではないだろうか。となると分析力や計画力がマイナスになる可能性がある。飛び出したい気持ちをぐっと抑えて、じっくりと考えることも時には必要である。
イニシアティブを高めるには
最後にどうやってイニシアティブを高めていくかを考えてみよう。
イニシアティブが低い、ということは着手が遅い、踏み込みが浅い、ということである。当たり前だが、なぜ速やかに着手できないか、なぜ踏み込めないのか、という点について、自分なりの分析をすることが必要である。
例えば、確実を期すような行動をとりがち、つまり万全の体制になるまで動くことを控えてしまう人の場合、まずはスモールステップで良いので自分から動き出してみることを意識してほしい。
また、良いことを言わなければ、と必要以上に力んで、なかなか動きだせない人もいるだろう。そういった場合は、普通のことで良いからまずは発言してみることを挑戦してほしい。普通のことや当たり前のこと、相手の言ったことの復唱でも良い。一人で熟考するよりも、他者とディスカッションしたほうが良いアイデアは湧いてきやすい。そういったことに気づけたらしめたものだと思う。
ネガティブになりやすい人は、口癖に注意したい。でも・だって・だけど、などネガティブな言葉を多用している人はぐっとこらえてほしい。これらの言葉を使う代わりに、なるほど・確かに、といった言葉を挟むことで、自分も冷静に相手の言葉を吟味する余裕が生まれるはずだ。