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からだの動きを「髄海」から変える!「脳」と「髄海」の関係性について
最近、東洋医学的な「脳」について調べているのですが、「脳」と「運動」の関係について、「気」や「経絡」ということばを使って書かせていただきます。
「髄海」と「精」、「腎」
東洋医学的に「脳」を考えると、「精(せい)」と「髄海(ずいかい)」という概念に行きつきます。
「髄海」は、東洋医学において脳をあらわす概念の一つで、髄海は単なる解剖学的な脳を指すのではなく、生命力の源泉である「精」が脳髄を満たし、精神的・身体的な働きを支える場になるとされています。
東洋医学では、腎(西洋医学的な腎臓とは違った考えです)は「先天の精」(生まれ持った生命エネルギー)を蓄える臓器であり、精が不足すると髄の生成も不足し、髄海が十分に満たされなくなると考えられています。
このため、腎の状態は記憶力、集中力、認知機能など、脳の働きに直接影響するとされます。
「腎」について
「腎」の補足をここでさせていただきたいのですが、少し、イメージしてもらいたいことがあって、まず「気」をつくるのに、食べた食物を入れる、「鍋」を思い浮かべてください。
「鍋」が胃です。
そして、その鍋を温める「ガスコンロ」というか、熱源が「腎」なんです。
「鍋」を「ガスコンロ」が温めて発生する蒸気が「気」
「精」について
熱エネルギーを生成するための燃料が「精」
「精」は「先天の精」と「後天の精」に分けられます。少しややこしくなってきましたね…
「先天の精」は、親から受け継いだ遺伝的な生命エネルギーであり、ガスの基本タンクに例えられます。この量には限りがあり、使い切ると補充はできません。
「後天の精」は、食事や呼吸など、日々の生活で得られるエネルギー源です。これは先天の精を補助する役割を果たし、適切な生活習慣によって蓄えることができます。
「精」は、腎がエネルギーを生み出すための源泉です。
「髄海」について
髄海は、腎の「精」によって養われます。
髄海は、督脈(背骨に沿って頭頂部に至る経絡)と密接に関連しています。
督脈は「陽脈の海」とも呼ばれ、全身のエネルギー循環を司る重要な経絡。
髄海は督脈の流れによって栄養を受け、脳の機能が維持されると考えています。
つまり、背骨を通るエネルギーの流れが、脳と関連しているということです。
髄海は手や足の運動や感覚機能にも影響を与えます。
髄海の不足があると、身体が重く感じたり、手足が重だるくなることがあるのですが、私が鍼灸師として人のからだを診ていると、多くの人は、自分の手や足の感覚が鈍っていたり、運動がうまくできていない自覚がないのだと思うのです。
動かせている気になっているけれど、左右がかなりあったり、手と足を動かすとチグハグになっていることに気づいていない…長くなりましたが、私はこれを言いたかったんです!
「脳」、つまり「髄海」と、手足を繋ぐ経絡の流れが滞ると、自分の手や足に不調があらわれると考えることができる。
治りにくい症状の背後に「髄海」の関与がある!
いくら運動をしても、肩こりや、腰痛が改善しないという症状の中に、「髄海」の関与がある場合があって、単純に運動をしたり、ストレッチをしても、実はからだの感覚にズレがあったり、からだの感覚を認識できていないために、目的の場所が動かせていない場合があるんです!
手や足にある、GPSが故障していて、うまく動かせないイメージでしょうか。
からだを動かす前に、まず、感覚をしっかりと拾えるからだづくりが大切。
「髄海」と「背骨」と「督脈」
東洋医学が考える脳に近い概念である「髄海」を整え、「背骨」を整え、背骨を通る「督脈」を整え、しっかりとからだを動かせるようにするのです。
髄海を繋ぐ背骨がトンネルで、トンネルに「気」や「精」が流れていて、流れがスムーズになってくると、手足も動かしやすくなり、エネルギーが全身に満ちてくる感じ。
野口整体の「活元運動」
整体法の創始者で、「野口整体」で知られる、野口晴哉先生は、無意識の動作をつかさどる「錐体街路」のトレーニングとして、「活元運動」を推奨しているのですが、整体操法と、活元運動を別々に捉えている(もちろん、繋がっています)のには理由があるのです。
ヨガの「太陽礼拝」
背骨を動かす場合、ヨガの「太陽礼拝」を私は推しているのですが、髄海と背骨を繋げるのに、呼吸と連動させて、気の循環を整えるのに有効だと私は考えています。
太陽礼拝を世の中に広めたとされる、現代ヨガの父とも呼ばれるクリシュナマチャリヤが、大切にし、弟子のアイアンガー(からだのアライメントを重視する)や、アシュタンガヨガの創始者のパタビジョイス(呼吸と動きを連動させるヴィンヤサを取り入れている)へと系譜が繋がっていくことが考え深い…
また、ヨガをベースに「ストレッチ」ができ、逆輸入をするような形で、世界中で太陽礼拝が広がるという流れをみてみると、私には、世界に必要な方法論で、必然的に世界へと広がっているのだと思うのですよね…
からだを動かすのが苦手な人は、「脳」から変えていくといい!
からだの動きに集注するのも大切ですが、からだの動きに至るまでの、背後にある「脳」に目を向けることも大切だと知っていただきたいのです。
からだを動かすことに苦手意識をもっている方。もしかしたらですが、動かそうとする意思が、からだに届いていない可能性があるのです。
高齢者施設で行われている脳のトレーニングなどがありますから(片足立ちとか、手と足をリズミカルに別々に動かす方法など)、インターネットの知識を駆使して、日々のトレーニングに組み込んでいくと、効果が出やすいかもしれませんよ。
最近、改めて野口整体の活元運動のような、自分のからだの、内なる動きを拾うトレーニングや、背骨の大切さに気づくんです。
いろいろなことを学び、一周して、また同じところに戻ったような気がするのですが、前とは違う風景が見えているんです。
人のからだは、本当に面白い。
そして、美しい。