「腎」は「体温」をつくる「熱源」
「腎」は「体温」をつくる!
東洋医学で「腎」について考える時、「体温をつくる」という働きが、とてもとても重要になってきます。
解剖学や生理学を学んだことがある方は、「腎臓はおしっこをつくるところ」とか、「水分の代謝に関わるところ」という「水」のイメージがあって、「温かい」や「熱をつくる」というイメージがわきにくいと思うのですが、東洋医学では、「基礎代謝や体温を支える熱源」だと考えているんです。
そもそもなのですが、東洋医学が考える「腎」と、みなさんがイメージする「腎臓」では、考え方が違うんです。
東洋医学をまなんだことがある方でも、この「腎は熱源」という考え方を、あまり理解できていない人が多い!
「“冬”の寒い時期、からだの熱をつくる部分はどこですか?」という問いに対して、鍼灸師の私は「腎です」と答えます。
「腎は、からだの熱源である」ということを、少し詳しく説明させていただきますね。
「腎」の説明
まず、東洋医学的な「腎」の説明なのですが、ざっくり言うと、
「熱」を生み出す、「腎陽」という働きと、からだを潤す「腎陰」という考え方があるんです。特に腎陽はからだを根本から温め、からだの機能を活発にする根源的エネルギーと考えています。
その他、飲食物から得た水分を再吸収したり、不要な水分を尿として排泄するなど、「水分代謝」をつかさどり、「先天の精」という、両親から受け継いだ生命力の“元”を貯蔵し、成長・発育・生殖など、生命の根源的活動を支えています。
「先天の精」について
「先天の精」について、もう少し書いてみたいのですが、先天の精は、生まれてから死ぬまで、増えることなく、どんどんなくなっていくと考えています。イメージすると、火のついたロウソクみたいなものでしょうか。
ロウソクは、徐々に小さくなって生きますよね?働きすぎたり、無理をしていると、ロウソクが早く小さくなってしまうというイメージ。
今回は特に、「熱源」としての「腎」を説明させていただきたいのです。
「命門の火」と「心火」
この熱源として、からだを温める力を東洋医学では「命門の火(めいもんのひ)」と呼んだりもします。
からだの「熱」を考える際、「心」という考え方も出てくるはずです。「心火」とか、「心陽」とか、東洋医学を勉強している方は、聞いたことがあるはず。
「心」は、五行では「火」の性質を持つ臓器。
血液を循環させる働き自体に「熱エネルギー(火)」が伴うと考え、全身に活力となる気や血を巡らせると、東洋医学では考えているのです。
「心」の火は、精神・意識・情緒を活性化する力を火(熱)の性質としてとらえ、身体を温める要因の一つにはなるものの、最も深いレベルの熱源は「腎」がになっています。ここが、大切な考え方!
心の火は、「火」という「熱エネルギー」としてのものよりも、「やる気」「意識の明るさ」「精神活動」の活発さとも関連していて、情緒面や「君主」として全身を統括し、「こころを温かく保つ役割」が大きいと考えるとわかりやすいかもしれません。
イメージできましたか?ややこしくなってすみませんでした。
大切なことなので、お伝えしたかったんです。
まとめると、
腎の火=基礎体温・基礎代謝を支える深い熱
心の火=血の巡り・精神活動を高める熱
と考えたらわかりやすいかもしれません。
五行では「腎」は「水」、「心」は「火」ですが…
五臓を「五行」という、「木・火・土・金・水」という5つのエレメントで考えるとき、「心」が「火」で、「腎」が「水」になるのですね。
イメージ的に、「心」が体温をつくって、「腎」はからだを冷やす、みたいに感じている人が多いので、寒さが厳しくなってきた「冬」だからこそ、「熱源としての腎」を、しっかりと説明したかったのです。
東洋医学が考える「体温の上げ方」
ちなみに、東洋医学的な、腎の働きを活性化させて、体温を上げる方法は、冷たい飲みものを飲み過ぎたり(忘年会シーズンですね…冷たいビールを少し控えて、お酒はお湯割りにするといいかも)、アイスを控えたり、からだを内側から冷やさないことがまずは大切!
そして、適度な運動。無理な運動をするよりも、軽めの続けられる運動がおすすめです。
食べものだと、栗やゴマが腎陽を補います。あと羊の肉は、からだを温めてくれます。私、ジンギスカンが好きです。お茶を日々飲んでいる人は、黒豆茶や、ショウガ入りのお茶に切り替えた方がいいかもしれません。ショウガ入りのお茶でも、甘すぎる場合、水分代謝が落ち、冷えの原因になるので、注意が必要です。
「腎」を補うのに大切なのは「睡眠」
腎を補うのに大切なのが「睡眠」です。しっかりと睡眠時間を確保する。睡眠時間が慢性的に少なくなると、からだも冷えやすくなりますよ。ストレスがあると、睡眠の質も下がるので、ストレス発散をこころがけて、ストレスフルな生活を日々強いられている人は、呼吸法などを勉強して、深い呼吸ができるようにするとよいです。
いやぁ…長くなりました…書くのに1時間以上かかりました…みなさんが読むと、たぶん一瞬ですね 笑
日々文章を書くとき、構想など、時間をかけることが、私は多いです。
でもですね。東洋医学に興味をもっていただける方がいるのなら、最後まで書き切ろうと思えるのです。
私、いつもみなさんに支えていただいています。
少しの時間ですが、この文章を読むのに、あなたの時間、つまり「命」をいただきました。
私は、自分の命の時間をかけてでも、この文章を書き切りたかったんです。なんというか、書いて満足しました。
私の自己満足のために、お付き合いいただき、ありがとうございました。