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【短編小説】キャンプへの一考察!オートキャンプの勧め!!手抜きキャンパー垂涎

 鬱蒼とした森を抜け、愛車ハイラックス・サーフでキャンプ場に向け走る。少し雨も降ってきた。濡れた緑の匂いが、鼻に心地よい。高地に来たせいか、夏だというのに風が涼しい。

 オートキャンプ場では、キャンプサイトまで車の乗り入れができる。自分の好きな場所に、自分の好きなテントサイトを作れる。愛車の横に、少し大ぶりのCOLEMAN製のドームテントを張る。ソロキャンプの時も、余裕のある4、5人用のテントを使用する。色は、お気に入りのグリーンベースのツートンカラー。インナーテントを立ち上げ、その上にフライテントをかぶせ、ペグで固定する。そして、テントにもぐり込む。テントにあたる雨のしずくの音が気持ちよい。しばらく、何もせずにその音を楽しんでいる。いまは、何もしたくない。キーンと冷えた缶生ビールのフタを開け、一口飲む。エアマットの上に、仰向けになり寝そべる。このまったりとした空間に、しばらくは浸りこむ。ポケットから電子たばこを出し、一息つく。

 雨が小降りになったので、テントから抜け出す。愛車のバッグドアを開け、テント以外のキャンピングギアを取り出す。タープ、バーナー、テーブル、ランタン、チェアなど、大部分がCOLEMAN製。いずれも、使い古した道具たちだ。ちょっとした汚れやサビに愛着を感じている。それだけで自分が、経験豊富なキャンパーだという実感にひたれる。タープを立て、その下にテーブル、調理用バーナーなどをセットする。のんびりとテントサイトを設営する、このひとときが好きだ。   

テントサイト 一景

 キャンピングチェアに腰掛け、少しぬるくなった飲み残しのビールを口にする。遠くに霞んだ山並みが、タープ越しに見えている。とても爽やかだ。クーラーボックスは、途中のスーパーで買った食品で一杯だ。クーラーボックスより、サンドウィッチを取り出し、遅めの昼食をとる。昼食は、出来るだけ手を抜き、安くあげる。その代わり、夕飯は焼き肉にする予定だ。一転、豪華にする。これも楽しみだ。近くに牛肉専門店があり、のちほど、今晩のごちそうにする肉を買いに行く。ここも、キャンプに来るたびに立ち寄る行きつけの店。リブロースや肩ロース、タンなども置いてあるが、希少部位であるイチボやミスジも揃えている。

 昼食後、チェアーに深めに腰掛け、ひと休みする。少し酒気をとり、夕方の買い物に備える。スマホを取り出し、Spotifyのマイライブラリに登録してあるミスチルの曲をゆったりと聴く。このキャンプ場は、スマホの圏内になる。後で、YouTubeでプロボクサーの井上尚弥のノックアウトシーンも楽しむつもりだ。スマホのバッテリー残量をチェックする。充電用のバッテリーも確認する。すべて、OKだ。雨も上がり、木の葉の隙間から日差しもさしている。     

閑題 木々に囲まれて


 牛肉の買い出しもすみ、夕食の焼き肉に備え、ガソリンバーナーのポンピングをする。バーナーは、2ヶ口のホワイトガソリンタイプだ。キャベツ、タマネギ、トウモロコシ、ししとうなどの具材も準備をする。これらは、自宅であらかじめ切っておいたものだ。〆は、焼きそばにしよう。水は、少し離れた炊事場から先ほど運んでおいた。準備万端である。

 グリドルをバーナー上で温め、そこにバターを入れる。牛脂も付いているが、バター風味が好きだ。焼肉は、網で焼くのではなく鉄板焼きだ。グリドルをよく熱したら、牛肉を乗せる。ジューという音が、心地よい。肉が焼けてきたら、醤油、ニンニクベースにパルスイートで甘み付けしたソースをかける。ソースの焼けた美味しそうな香りが、食欲をそそる。今日はビールではなく、黒霧島と氷をシェラカップに入れ、炭酸水で割る。一口そそる。空き腹に、冷えた焼酎がしみこんでくる。豪華な晩酌の始まりだ。少し暗くなってきたので、ガソリンランタンにライターで火を灯ける。この火をともす一瞬にも、キャンプのワクワクする楽しさを感じる。

 〆の焼きそばを食べ終わったら、使った皿をティッシュペーパーでよく拭く。後ほど炊事場でまとめて洗う。グリドルは拭いたままにして、翌朝使用する。何故かその方が、卵焼きが美味しく感じる。シェラカップに何度目かの焼酎と炭酸水を入れる。本格的飲み会の開始となる。レモンを買い忘れたのが悔やまれる。焼酎の後は、赤ワインがクーラーボックスでよく冷えている。夜が更けてから、サラミソーセージとチーズでワインを飲むのが習慣だ。夜の部に備え、既に点灯しておいた、ガソリンランタンのポンピングを追加で行う。暗がりが苦手なので、ランタン2台をタープの支柱に取り付け、テーブルにも、ガスランタンを用意する。

 夜が更け、また少し雨が降ってきた。でも、ヘキサタープの下は快適だ。ランタンのマントルの燃えるシューという音が、如何にも夜のキャンプの雰囲気を醸し出す。ランタンの光の下で、よく冷やした赤ワインを啜る。もう周りのキャンパーたちは、眠りについている。十時を少し回ったところだ。周囲の音がせずシーンとしたサイトに、独りでいる事が何故か心地よい。わずかに風も吹き、少しひえてくる。バッグよりウインドブレーカーを取り出し、急いで羽織る。テントサイトの設営が好きだといったが、夜の独りの時間が一番好きだ。特に、雨がタープにあたる音、湿った草の匂い、ランタンの淡い光に囲まれているひとときが。

 夜中の十二時を過ぎる頃まで晩酌をし、眠りにつく。ゴミの整理をし、ランタンを消し、テントとタープのロープの緩みを張り直す。頭に着けたライトの明かりが頼りだ。周囲を確認しテントに入る。早速LEDランプを、テント地に挟み込むように取り付ける。やはり、真っ暗闇は好きではない。まだ眠れないので、スマホを取り出し、YouTubeを観ることにする。井上尚弥のノックアウトシーンを観る予定だったが、日刊ヒロシチャンネルを観ることにする。キャンプ場に来てもキャンプ関連の動画を観ていることに、あまり違和感を感じない。眠る前は、気楽な気分になれればそれでよい。

 なかなか寝付けない。少しシェラフが湿気っているような気がする。明日、干すことにしよう。エアマットの空気が少ないような気もする。でも、今から空気を入れるのも面倒くさい。風が吹いたら、タープのペグが抜けないだろうか。いろいろなことが頭に浮かぶ。疲れているはずなのに。そんなことを考えていたら、いつの間にか寝てしまう。

 気がづけば、朝の6時だ。テントの中は、少しひんやりとしている。まだ、起きる気にはなれない。テントの内側に水滴が付いている。後で拭き取ることにする。もう少しシェラフの中で、グズグズしていたい。昨夜の雨も上がったようだ。テントから頭だけを出し、周囲の状況を確認する。もう周りのキャンパーたちは、起きて朝食の準備をしている。仕方ない、起きることにしよう。

 テントから出ても、キャンピングチェアに腰掛け、なかなか活動に入れない。昨夜、飲み過ぎたのかもしれない。テーブルの上には、ワインの空き瓶が2本ある。少し、注意しよう。もう若くはないのだ。

 朝食の用意をするため、いやいや重い腰を上げる。いつものように、ベーコンエッグだ。ガソリンバーナーのポンピングをし直し、ライターで着火する。グリドルをセットし、クーラーボックスからベーコンと卵を取り出す。卵は2個にする。ベーコンを2枚グリドルに入れ、カリカリになるまで焼く。その上に卵を割り入れ、さらに少し加熱する。卵が少し固まってきたので、塩コショウをし、卵の黄身を箸で崩す。黄身はあまり固くしない。これが一番美味しいと思っている。ベーコンエッグの横で、フランスパンも焼く。パンも2枚だ。焼けたパンとベーコンエッグは、皿に取り、パンにはたっぷりとバターをぬる。その上に、半分に分けたベーコンエッグを乗せ、冷やした牛乳とともに食べる。

 少し強めの日差しの中、テントからシェラフを取り出す。タープの支柱とすぐ横の木の枝に、パラコードを張る。そこにシェラフを掛け乾燥させる。テントの中の水滴を拭いたタオルも掛ける。すぐ乾くだろう。その間に、昨日使用した器と朝食に使った皿を、炊事場で洗う。特に今日の予定はない。洗った食器類を、乾燥用の干しかごにセットする。クーラーボックスから、クラッシュアイスを取り出し、アイスコーヒーに入れる。チェアに腰掛け、スマホの音楽をBluetoothイヤホンで聴く。スマホは昨夜充電しておいた。持ってきたPRESIDENTは読む気になれない。

 ひと休みしたら、カメラを持ってぶらりと外に出る。カメラはCANON EOS D5 markⅣを愛用している。写真の腕はいまいちだが、形から入るタイプだ。車で2時間も走れば、清里に着く。しかし、今の時期は混雑が予想される。それに、キャンプ場からの2時間は遠い。近場を散策する。車で20分位の森林公園に行く。強い日差しのせいで、なかなか車を離れられない。日陰を選んで写真を撮る。10ショットほど撮り、早々と車に戻る。まるで、ナメクジだ。

散題 森林公園にて

 テントサイトに戻り、作り置きし冷やしておいたamino VITALを飲む。少し休んでから、今日の飲食物の買い出しに行く。昼食は、出来合いの生姜焼き弁当にする。夕食にパエリアを作る予定だ。エビは冷凍して持ってきたので、その他鶏肉、タマネギ、ニンニクなど材料を購入する。米と調味料は持参している。缶ビール、クラッシュアイスも購入し、急ぎクーラーボックスに入れる。

 テントサイトに戻り、日差しを避けるようタープの下に逃げ込む。昼食用に買った弁当を食べる。缶ビールのフタを開け、泡が溢れる前に口をつける。冷たい。昨夜のお酒が残っているのか、少しボーッとした頭がすっきりとする。迎え酒だ。夕食の具材の前処理は、昼寝の後に実施しよう。有り余る時間を、ゆったりと過ごすのも、キャンプの楽しみだ。チェアに深く座り、少し微睡む・・・・

 キャンプサイトは、出来れば芝が過ごしやすい。日陰を作る木々も欲しい。更に、キャンプサイトを区画しないフリーサイトのオートキャンプ場が一番だ。好きなところに車を止め、キャンプが楽しめる。キャンピングギアの運び出し・設営も簡単だ。区画を制限されたキャンプ場に比べると、格段に使い勝手がよい。独断・偏見だが、キャンプの楽しみは、そのテントサイトを探すことにもある。気に入ったキャンプ場が見つかると、そこが自分のひとときの別荘地になる。      

キャンプサイト 一望

 もともとキャンプは、好きで始めたわけではない。旅行中のある出来事がきっかけで、キャンプ生活を送ることになった。それは夏休みに、佐渡島を車で旅行した時のことだ。
 夏休みであるので佐渡島の宿泊施設は当然営業しており、予約なしでも泊まれると思っていた。そこで、島に着いてから、旅行案内書に記載の民宿に電話をしてみた。なかなか電話も繋がらず、何度か掛け直してようやっと繋がる様な状況だった。そしてどの民宿も、その当時はお盆休みをとり、営業をしていないとの返事だった。その為、泊まるところもなく、色々考え、仕方なく近くの開いているキャンプ場に連絡をしてみた。そこは、テントは設置してあるが、キャンピングギアの貸し出しはしていない所だった。またこちらもキャンピングギアは何も準備はしておらず、究極の選択であった。当然ながら、バーナーもコッヘルも持っておらず、食事は作ることは出来なかった。飲食は近くのコンビニで、惣菜弁当、ビールなどを買って済ますことにした。また、お湯を沸かしてカップ麺を食べるなど、少しは煮炊きできるようにと雑貨屋を探し、ライターと新聞紙、蒔きは準備をした。
 キャンプ場に戻り、初めてのキャンプに不安と多少のわくわく感を感じながら、できる限りの準備をした。しかしその時、丁度台風に遭遇してしまった。昼前は曇っているだけだったが、夕刻にかけ天候は悪化した。その当時の据え付けのテントは、小屋状の木製の枠に、重い帆布をかぶせたタイプだった。残念な事に、このテントでは、台風の風雨を完全には防ぐことは出来なかった。食事は摂ることも出来ず、ただビールを飲んで過ごすしかなかった。また眠ることはもとより、身を隠すこともうまく出来ず、ずぶ濡れになってしまった。
 一睡も出来ぬ間に、朝になった。風雨は収まった。取り敢えず蒔きを燃やそうとしたが濡れており、なかなか火起こしも出来なかった。また、持ってきた衣類に着替える場所もなく、着の身着のまま駐車場の車に逃げ込むことしかなかった。こんなに苦いキャンプの初体験だった。

 普通なら、これに懲りて二度とキャンプ場には行きたくないと考えたと思う。もう絶対キャンプなどしたくないと考えたと。しかし結果的には、そうにはならなかった。むしろ、屋外で過ごすこと、外の空気を感じながら酒を飲むことの楽しさ、爽快感を知ることになった。こんなに開放的になれるのかと実感した。雨に濡れることさえ、気持ちよかった。この非日常への感慨が忘れられなくなった。また風雨の翌日、キャンプ場に来ていた初老のご夫婦より、差し入れの焼いたサザエをもらい、いろいろとお話もした。親切にいろいろと教えていただいた。楽しい時間を持つ事が出来た。キャンプ場でのこの人と人との距離の近さ、人の優しさ、温もりを実感することになった。キャンプの開放感、爽快感、そしてキャンプ場の人間関係の素晴らしさ、近しさが、キャンプに興味を持ち、キャンプを始めるきっかけとなった。

 キャンプを始めた当時は、キャンピングギアをなにも持っていなかった。そこで、まずはテントを購入しよう思った。どんなテントがよいのかと、近くのアウトドア専門店に通い、あれこれと物色をし始めた。キャンプに惹かれたとは言え、まだキャンプ主体ではなく、民泊をする中での1、2泊を考えていた。そこで、キャンピングギアに、それ程お金を掛けようとは考えなかった。また、キャンプを始めようと、キャンピングギアを一式揃える、そんな時代ではなかった。そんな気持ちにもなれなかった。
 しかし、このすき間キャンプをしようとの考え方は、大失敗であった。またキャンプを始めた頃は、キャンプはブームの走りであり、ギアの品揃えもまだまだであった。そんな中、ふと立ち寄ったアウトドア店で、ブランドもあまりはっきりしない、手頃な価格のロッジ型のテントを見つけた。色も、私好みのグリーンであったので、何も考えずに購入した。また、寝袋などもブランドや機能性を気にせず、最小限必要なギアを準備した。これで、再度佐渡島でのキャンプに挑戦した。佐渡島にしたのは、その自然が、あまりにも素晴らしかったからだ。このチャレンジは、怖い物知らず、または、認識力不足であった。

 キャンプ場で、キャンプサイトを選び、テントの設営をした。初めてのペグを取り出し、同封の金属製の金槌で、テントの四方をペグで固定した。そして、テントの中に荷物類をしまい、テントに入り込んだ。この一瞬にキャンプに来たという実感が湧いてきた。今回は、ゆったりと楽しむつもりだった。初めてのキャンプを、のんびりと過ごすつもりだった。しかしこの時もまた、台風に遭遇してしまった。予め分かってはいた。でも、今回はきちんと準備をしてきたつもりだった。大丈夫だと思っていた。設営時は風もそれほどではなく、テントサイトは余裕で準備できた。だが夕方より、激しくなった風雨に翻弄され、ついにテントが風にあおられ転倒してしまった。ペグ打ちが不十分だった。未熟だった。夜になると風雨は更に強まった。その風に、テントが飛ばされてしまいそうになった。夜中一睡もできず、テントを支えているロープの緩み、ペグの具合を確認して過ごした。テントも、まともに風を受ける形をしていた。ペグの効きも悪かった。選択ミスだった。台風さえ来なければ、と悔やみもした。

 でも、とても楽しかった。繰り返しになるが、自然の中で過ごすことが本当に気持ちよかった。風雨に吹かれて作業をするのが本当に爽快だった。普段経験が出来ない非日常の中で過ごすことが、とても愉快だった。この様にしてキャンプ生活は始まった。そして、その楽しさ故、キャンプにどんどんとのめり込んでいった。非日常のキャンプが、日常の生活の一部となった。

 しかし、このキャンプの経験から、キャンプキャンピングギアは、どんな事態にも対応できる、スペックのしっかりした物が必要と実感した。少し高価でも、信頼できるブランド品の購入が大切だと思った。その為、これ以降は、専門誌、雑誌の特集記事、ネット情報などでよく調べ、キャンプ専門店に通い、出来るだけ現物を見て、ギアを購入することにした。そのギアを持って、キャンプに挑戦することにした。そう、キャンプの失敗はギアのせい。決して、自分のせいではない。

 キャンピングギアを調べ、選ぶことが、実は大変楽しい。ギア選びをしていると、一日はあっという間に過ぎる。テント一つ選ぶにも、ロッジ、ティピー、ドームなどいろいろな種類がある。これらテントの内、ロッジ、ドームテントは幾つか使用したことがある。そこでこれらを、自分の使用実感から考えてみた。ロッジ型は、広い、高さがあり腰を伸ばして作業できるなど、使い勝手がよい。しかし、重い、嵩張り収納性が悪い、設営が大変などの課題がある。ドーム型は、設営がしやすく、嵩も張らず収納性がよい。1~2人用では、高さが足りないが、4人用以上では、腰を伸ばし作業が出来る。ここで何故、腰を伸ばし作業が出来ることが重要かというと、現在、慢性の腰痛持ちであり、長時間、腰を曲げての作業が出来ないからだ。ましてや、地面に座っての作業は、腰の痛みが増幅され出来ない。結果的に、テント内では腰を伸ばして作業をする機会が増える。テント外では、椅子・机のキャンプスタイルだ。腰痛に悩み、キャンプに行きたいが行けないと諦めている人には、ヒントになるだろう。また、キャンプを始めたいが、椅子・机の生活に慣れた人にも、参考になるかも知れない。
 始めの頃は、空間の広いロッジ型テントを使用していた。いろいろ変遷があり今はその特性から、大きめのドーム型テントを愛用している。ソロキャンプの時でも、3人以上で使用できるテントを使用している。メーカーは、EUREKA!とCOLEMAN。併用している。    

ドームテントとヘキサタープ

 また、ランタン選びも楽しい。ガスランタン、ガソリンランタン、オイルランタン、LEDランタンなどの種類がある。輝きも各々違う。ガスランタン、ガソリンランタンはホヤの素材にもよるが比較的明るい。透明なホヤのランタンは、その明るさゆえ、つるしてキャンプサイト全体を明るく照らす。くすんだホヤは、その優しい明るさゆえ、机上に置いて使用することが多い。オイルランタンは、揺らめく炎が特徴的である。なまめかしさも漂う。屋外の雰囲気を照らし出すには秀逸だ。LEDランタンは、発熱を気にすることもなく、いろいろな場面で使える。携帯性もよい。ランタンのメーカーも種類別に何社もある。これらを選択するのも大変楽しい。いろいろ試した結果、明るさ重視で、メインはタープのポールに吊したCOLEMANのホワイトガソリンを、テーブルランタンとして淡い明かりのCampinngGazのガスランタンを使用している。    

ガスランタン(手前)とホワイトガソリンランタン(奥)

 煮炊きする際も、たき火、バーナーなどがあり、直火以外のたき火は、焚き火台が、CAPTAINSTAG、COLEMANなどから、何種類か販売されている。バーナーも、ガス、ガソリン、灯油、アルコールなどがあり、販売会社も多い。今では、家庭用の携帯コンロも使用できる。少しキャンプの雰囲気には合わないが。タープ、ナイフ選びも同様だ。これらから自分好みの一点を見いだすのが最大の苦労であり、最大の楽しみでもある。

 キャンピングギアの選択に、なかなか終点は見えない。だから自然と、新しいギアが増える。現在、炊飯用バーナー、タープはテント、ランタンと同じCOLEMAN製に行き着いた。よく知られた一般的なギアだ。だが、いろいろとギアを使ってきての選択である。形、色そして使い勝手など、自分に合ったものだ。ナイフはMORA、VICTORINOXを使ってみたが、未だ選択途中だ。今は、AVANTGARDEのナイフを試している。尚、これらギアは、雑誌や通販サイトで多数掲載されている。また、SNSなどでも、いろいろなキャンパーにより紹介がされている。これらの情報を集め、更に、アルペンや石井スポーツなど実物が展示してある店舗に行き、または使用している人など経験者の意見をよく聞き、現物を確認の上、自分だけの、自分の気に入ったギアを見つけて欲しい。ここの手を抜くと、使わないギアだらけになる。現状は、そうなっている。

 キャンプスタイルとしては、出来るだけ楽な、手を抜く方向をめざしている。例えば、洗い物を減らすため、皿は使わず、コッヘルから直接食べる。夕食メニューも、鉄板でできる焼き肉、BBQと焼きそば、冬場なら、鍋物にうどんとなる。ご飯を炊かない、下準備は自宅で行うなど、キャンプ場では手を抜けるメニューだ。ご飯とおかずが一緒に出来るパエリアもよくやる。手抜きレシピ本も、出版されているので参考にしてもよい。煮炊きは、火起こしからするたき火は使わない。たき火は、火起こしは、好き嫌いもあるが、面倒で大変だ。また、自然と座ってする作業が多くなり、腰痛持ちには無理がある。主に、腰を伸ばして作業が出来るホワイトガソリンのバーナーを使う。たき火は冬場の寒い時期に活用する。でも、煮炊き用ではなく、暖をとるためだ。煮炊き用には、ガスバーナーの方が扱いは楽だ。手は抜けると思う。しかし、ここはキャンプという行為への罪悪感からか、ガソリンバーナーだ。ポンピングは、手を抜かず必死にやる。ここにはこだわる。このキャンプスタイルは、流行のソロキャンプとは逆方向だろう。キャンプとは、普段やらない、手の掛かる作業が楽しいとの意見も多いだろう。でも、そんな楽な手抜きの、自分に合ったスタイルもアリだと思う。面倒くさがり屋も、立派なキャンパーになれる。

 キャンプは、その設営が楽しい。夜中に独り、ちびちびとお酒を飲んでいるのは、もっと楽しい。テーブルに、サラミソーセージとスモークチーズを乗せ、赤ワインをちびちびやる。品種は主にメルローだ。そのまろやかな厚みのある口当たりが好きだ。たまに、軽めのピノ・ノアールも飲む。日によっては、赤ワインが芋焼酎のロックに変わる。ビールは、食事とともに飲む。夜は、断然赤ワインだ。それを、よく冷やして飲む。夜の、少し湿気を帯びた空気につつまれるこのひとときが、たまらない。この雰囲気が、キャンプに誘(いざな)う。この一瞬に浸りたいがために、キャンプに出かける。別に、お酒を飲みたいわけではない。

 キャンプの撤収の朝は大変だ。朝起きると、面倒くさいという気持ちとの葛藤が待っている。それを無理矢理押し殺して、テントを這い出る。まず、テントからまだ温かいシェラフを取り出し、木の枝に張っておいたパラコードに掛け乾かす。乾く間に、急ぎ朝食を済ませる。撤収の日の朝食は、前日買っておいたおにぎりだ。惣菜パンも利用する。これだと、食器を洗う必要が無い。面倒な手間がかからない。タイパにもつながる。
 食後、ひと休みをする間もなく、テントにもぐり込み、エアマットを取りだす。空気を抜き、たたんでケースにしう。エアマットの空気を完全に抜くのは、結構大変だ。フライテントの外側の水滴を、タオルではたき落とす。ペグを外し、自由になったフライテントを、車の上に広げ乾かす。その隣に、ペグ、ロープを外したタープも広げる。
 運が良いのか悪いのか、撤収時は何時も晴れている。夏の日差しはかなり厳しい。暑くなる前に撤収を終えようと思ったが、やはり動くと暑い。額に浮かんだ汗を拭う。インナーテントの内面をタオルでよく拭く。テントを張っていたポールを抜く。よく乾かすため、テントの出入り口のチャックを全開にし、日差しの射す乾いた芝生の上に広げる。インナーテントは、体から出た蒸気で湿気っているため、よく乾かす。グランドシートも、よく拭いた後、芝生に広げ乾かす。昼食までに撤収したいため、ここまでは取り急ぎ行う。ゆっくりと撤収すると、いろいろ考えてしまうので、これも面倒くさい。何も考えずに、いつも決めたとおりに素早く撤収する。
 テント、タープなどがよく乾いたら、芝生の上で折りたたみ、収納ケースに入れる。使用したポールもたたんでまとめ、ケースにしまう。乾いたシェラフ、バーナー、調理器具類も、汚れを取り去りまとめておく。汗がとまらない。喉が渇く。ひと休みまでもう少しだ。
 テーブルは最後にたたむ。その上に、ランタン、バーナーなどのギア、その他荷物類を、一時置きするためだ。こうしておくと汚れない。チェアは、残しておく。その後、テーブルの上にまとめたギアや荷物類を、車のバックドアの後ろまで運ぶ。すべてそこに置いておく。すぐに荷物類を車に入れないのは、入れる手順、場所を、あらかじめ決めておいたからだ。荷物類が運び終わったら、テーブルを閉じ、これも車の後ろに置く。ここで、クーラーボックスから、アクエリアスを取り出す。しまわず残しておいたキャンピングチェアに腰掛け、一服する。アクエリアスは少しぬるくはなっているが、渇いた喉に心地よい。
 すべて車の後ろに運んだら、バックドアから車の中に順序よく、決められた場所に、ギア、荷物類を乗せる。テーブル、調理台など平たいものから乗せていく。その上にシェラフ、テント、タープ類を乗せる。衣類などの入ったバッグとゴミ袋は、最後に積む。クーラーボックスは使いやすいよう、車の前部座席か後部座席に置く。ランタン類も破損しないよう、後部座席に入れる。ホワイトガソリンの容器とガスボンベは、後部座席の足下に置いておく。夢中で片付けを行っているが、芝生の上の荷物類がなくなったのを見て、少し虚しい気持ちになる。やはり終わってしまった 寂しさが残る。達成感はない。すべて搬入したら、ペグなどの忘れ物、ゴミの有無を確認し、撤収を終了する。

 後は、途中で昼食を摂り、家に帰るだけだ。いや、帰ってから荷物の整理、自宅への運び込みが残っている。基本、キャンピングギアは、しまわず車に乗せておく。何時キャンプに出かけたくなっても、すぐ対応が出来るようにだ。手抜きキャンパーには、これは鉄則だ。めったにないが、撤収が雨になってしまった時は、テント、タープはベランダで干す必要がある。家での片付けを考えると、少し億劫になる。面倒くさいと思ってしまう。でも、次回のキャンプへのわくわく感も湧いてくる。今度は、あそこのキャンプ場で、こんなことをしたいとの期待感が昂ぶる。やはり、自然の中で過ごすキャンプは、比較できないくらい楽しいのだ。

 アウトドアで過ごすのはとても楽しい。屋外で、自然の中で食事をする、お酒を飲む、寝る、これは、本当に気持ちよい。そしてテントを張り、キャンピングギアを手の届く所に置き過ごす。ベタであるが、まさしく自分だけの秘密基地だ。その雰囲気をゆったりと楽しむ。その普段の生活では味わえない、非日常感を心から味わう。本当に貴重な一時だ。

 キャンプで過ごした楽しい時間への名残惜しさに、帰りの撤収は一番嫌になる。面倒くさい。やりたくない。その為、自然と片付ける手は遅くなる。テント、タープは重く感じ、たたむのも運ぶのも大変だ。撤収などせずに、ずっとこの場所にいたい。テント生活をしていたい。出来れば、郊外の自然の中で一生過ごしていたい。自然の開放的な雰囲気の中で、ずっと過ごしていたい。現実逃避であるが、そう思ってしまう。
 しかし、この夢を果たすのは容易ではない。一生自然の中で過ごすため、郊外にそれなりの土地を準備しキャンプし続ける財力と、何もしないでのんびりと過ごせる時間が必要だ。だが、そんな財力や時間は簡単に手に入らない。一部を除き普通の人は、その力・時間を得るために日々必死に働いている。一生楽しく過ごしていくため、その日々を得るために、今を頑張って過ごしている。こんな人が多いのではないだろうか。
 でも、今を本当に犠牲にしてよいのか。
 キャンプに関しては、健康で動ける体であれば、必要な時、必要なお金だけを貯めておき、思い立ったらすぐに出かけられる。自然と向き合える時間を、わずかな時間であっても充分に味わう事が出来る。望んだ時に、望んだ場所へ出かけることが出来る。これがポイントであろう。これがキャンプの醍醐味であろう。今を楽しむために、今を生きる。今を大切に生きる。キャンプはこれが出来る。
 また、健康で動ける体と言った。蛇足だが、幾らお金や時間を持ったとしても、健康を崩し動けない体では、何も出来ない。何も楽しめない。これは、キャンプに限ったことではない。何をするにも健康は必要だ。お金を貯め、時間を作り、人生を楽しもうとしても、その時、健康な体、動ける体でなければ、それは簡単には出来ない。もちろん、健康を崩している人でも、楽しい生活を過ごすことは出来る。でも、それは必ずしも、望んでいた楽しみではないかも知れない。健康でいること、これもキャンプを、アウトドア生活を楽しむ重要な要素だろう。酒ばかり、飲んでいる場合ではない。
 なんだか説教くさいが、健康に気をつけ、今を大切に、今を楽しく生きる。キャンプは、そんな生活の集大成だ。キャンプは人生の楽しさそのものだ。でも、酒も人生の楽しみでもあり、やめられないのだが・・・

 そして、また私は、大好きなキャンプに出かける。自分の好きな時に、自分の好きなところに、自分だけのギアを持って。ほんのちょっと、面倒くさいと思いながら。でも、ワクワクしながら・・・

#キャンプ #オートキャンプ #テント #ランタン


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