映画レビュー(200)ブラッド・デスティニー
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ある町にやって来た娘・カーミラ。郵便物の住所を頼りに母・ミラーカの行方を捜しに来たのだ。該当の住所の家を訪ねるが、住人の男性トロイに「知らない」と一喝されてしまう。しかしその後、トロイの娘ローラから、過去にトロイが所有するトレーラーハウスに住んでいた女性が、カーミラの母かもしれないと告げられ現場へ向かうことに。
やがて、ローラとカーミラの仲は深まるが、トロイは、娘への強い愛情から、カーミラを憎み始める。そこには母ミラーカとトロイの妻との過去の絆も絡んでいた。
カーミラというヒロインの名前からもわかるが、これは1872年に出版されたアイルランド(イギリス)の小説家シェリダン・レ・ファニュによる幻想文学・怪奇小説(ゴシックホラー)「カーミラ」に他ならない。相手の少女もローラだし。
原典では同性愛的な愛を深めるローラとカーミラを吸血鬼討伐というスタイルで描いているのだが、今作では、嫉妬に狂う父親の方こそが怪物であると描かれる。当然、カーミラは吸血鬼ではなくローラは自傷行為に悩む病んだ少女だ。その二人を追い込んでいく父親トロイは、もう殺人鬼である。
同性愛的な魅力をたたえた元祖吸血鬼譚を、このように料理したか、と唸らされた。
ブラッド・デスティニー
(追記)
キリスト教の厳しかった時代、同性愛は「悪」として糾弾された。そう考えると、原典の「カーミラ」も、同性愛を悪魔視して描かれたとも考察できる。現代の視点で古典を再解釈する系の作品は実に面白い。