小説指南抄(25)小説作法の「守・破・離」
(2015年 09月 07日 「読書記録゛(どくしょきろぐ)」掲載)
芸能や武道における修行段階でよく言われるのが「守・破・離」ということ。私は少林寺拳法を修行する際にこの言葉を習った。
「守」とは師の教えや教科書のような基本を守りしっかりと身につける段階のこと。
「破」とは、基本を身につけた上で、あえてその教えを破り自分の個性に合わせて試行錯誤をしてみる段階。
そして「離」とは、師の教えを離れた自分だけの名人の境地に立つ段階である。
私が「小説指南」でコーチをしている部分はまさに、この「守」の部分である。
・登場人物の気持ちをセリフで語らせない。
・状況は、説明ではなく描写せよ。
・既視感のある設定でもあきらめずに考えよ。
・人物造形とは、行動原理を決め業を背負わせること。
この基本を身につけた後は、その約束事をあえて離れてみてほしい。そこに新しい世界が広がってくる。
例えば、「ゼウスガーデン衰亡史」(小林恭二)は、架空のアトラクションパークの盛衰を歴史書のスタイルで書いていて、全編が「説明」である。
この試行錯誤で、作家自身がなにを掴むかまでは教えられない。また、教えてはいけないと思っている。
この「守・破・離」という言葉だが、長らく世阿見の「風姿花伝」の中の言葉と教わっていたのだが、他にも「利休説」など諸説あるようだ。
(2023/09/26追記)
この記事で語っている四つの原則を私は倉本聰さんのシナリオと森村誠一さんの小説で学んだ。自分の好きな作家の作品を読み込んでいくと、自ずと掴むことではある。
※この記事を含む「小説指南」はAmazonでお読みいただけます。