映画レビュー(161)「THE 100/ハンドレッド」シリーズ



 最終シーズンである7thまで、ほぼ一週間かけて見終わった。
 最期まで、どうなるかと引っ張られたが、ファイナルシーズンは哲学的ですらあった。
 この物語では、主人公のクラークをはじめとして、リーダー層の連中は、多数を救うために少数を犠牲にするような選択を迫られ、その結果、心にトラウマや罪悪感を塗り重ねていく。
 そして、争いを超克して平和になるかと思われた時にそれを台無しにするのが、「恨みを晴らす」とか「敵を討つ」という憎悪の気持ち。
 実に現実の世界を映している。
 シーズン2~3では、せっかく地上人と空の民が一つになっても、部族同士でいがみ合い、再び争いが起きるところなど、中東におけるムスリム内部のスンニ派とシーア派や、ルワンダのツチ族とフツ族を思わせる。
 アークから降りた「空の民」こそ、アメリカ合衆国の暗喩である。シーズン4では、再び滅びた地球を後に、空へ戻る。シーズン5以降は別の星系での物語になるが、そこからは、カルト宗教問題、憎悪の連鎖問題など、これまた現代的な問題が描かれる。
 当初はいがみ合っていた登場人物たちの間には、強い絆が生まれていく。そのドラマ部分も見事。
 ややご都合主義的展開もあるが、それを吹っ飛ばす勢いを持ったドラマである。
 2014年から始まり2020年に完結した壮大なシリーズであるが、SFという絵空事だからこそ、この「争いを超克できない」「憎悪の連鎖」という人類の業をここまで描けたのだろうなあ、と感心した。


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