「不死の宴 第三部冷戦編」あとがき

 令和六年2024年の8月13日に、この後書きを書いている。
 第一部をアマゾン・キンドルでリリースしたのが2017年の8月10日。第二部のリリースが2021年の7月17日。
 まる三年かかっている。一部から二部のリリースまでは四年かかっていたので、多少は慣れたと言うところか。
 一番の違いは、第一部から第二部を書いているころは、まだ派遣社員として働いていて原稿を書く時間が週に二日程度しかなかったこと。
 この第三部に関しては、年金受給の一年前から、もう他の仕事は辞めて、執筆を人生の最優先課題にした。
「不死の宴 第三部」を書いている間に、中編「92”ナゴヤ・アンダーグラウンド」を書く余裕もあった。これは、幻冬舎ゴールドオンラインの「話題の本.com」サイトで連載形式で書かせてもらったもの。
 私のようなインディペンデント(要は素人ってことな)作家にとっては、プロットを提出してOKをもらい、週刊連載形式で原稿を書いてアップするという体験は実に貴重なものだった。

 閑話休題。
 今回の第三部冷戦編。舞台となる1972年、私は中学三年生である。西城が昔を思い出して訪ねた高校を、翌年受験している。
 当初は、那覇と東京を舞台にするつもりだったが、新味を出すために名古屋市も舞台にすることにした。
 第一部で散り散りになったキャラクターを改めて結集させたかったのだ。如月の実家を高山市に設定したのが幸いした。また、竜之介と美沙が潜伏する場所として名古屋市東区の白壁近辺を脳内設定したのだが、実際に現地を歩いたところ、名も知らぬ新宗教の本部があって、「お、俺の勘、いい線いってるかも」と驚いた。
 また、執筆場所としてよく利用していた愛知県図書館にかつて米国領事館があったこと、占領期のアメリカ村などの存在も初めて知り、作品内で活かさせてもらった。
 かつての勤務先の近くにある円頓寺商店街や四軒道なども作中で利用した。名古屋の方なら、思い浮かぶだろうと思う。
 いよいよ最終巻の第四部。現在構想中である。
 1990年代の日本、カルト宗教やオカルトが跋扈する世紀末世相を背景に、かつて一世を風靡した「伝奇ロマン」「伝奇バイオレンス」に対するオマージュを込めて、21世紀にふさわしいリブートを考えている。
 また第四部と合わせて、各キャラクター達のスピンオフドラマも考えている。
 平井和正氏が、大河ドラマ「ウルフガイシリーズ」と並行して、一人称の連作短編「アダルト・ウルフガイシリーズ」を書いていたように。それを考えると、おちおち病気にもなっていられない。
 時間はかかりそうですが、ご期待ください。
(追記)
 この年代から、名古屋市および中京圏は日本における存在感を増していく。トヨタ自動車、三菱重工などをはじめとする製造業もその要因の一つ。
 日本中、世界中から仕事で人が訪れる名古屋は、「ハレとケ」で言えば「ケ」の日常の街である。わざわざ「ハレ」の日である休日にやってくる場所ではなかった。それが原因で、京都や金沢などの観光都市には魅力で劣るかのような言辞がまことしやかに語られてきたが、私の友人は、「名古屋はお金持ちの大尽や、観光などのおもてなしは芸者や太鼓のする仕事、京都に任せとけばええんや」と笑い飛ばしていた。
 作品を通して1972年の名古屋圏を感じていただけるとうれしい。


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