ブックガイド(13)眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎
(2012年 01月 14日 「読書記録゛(どくしょきろぐ)」掲載)
眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎
1765年11月、水の都ヴェネツィアで評判の高い医師が謎の死をとげた。この医師の子孫の多くが、同じような病で命を落としていく。呪い、疫病、脳炎、性病、奇病と、さまざまなレッテルを貼られながら・・・共通しているのは死の数ヶ月前から眠れなくなること。
数世紀を経て20世紀も終わりかけた頃、この致死性不眠症の原因が、羊たちに流行した震え病であるスクレイピー、パプアニューギニアの部族を襲ったクールー病、そして世界を震撼させた狂牛病と同じく、殺人タンパク、プリオンとわかったが、治療の目処はつかない。
そうこうするうちに、アメリカの野生の鹿に似た病気が蔓延、新型クロイツフェルト・ヤコブ病の拡大が噂される中、殺人タンパクの起源を辿るうちに、80万年前の人類の「食人習慣」の事実にたどりつく・・・「事実は小説よりも奇なり」を地でゆく、驚きのストーリーである。
このプリオン病、タンパク質の遺伝子の折りたたみ方が変わるだけで発現する。散発的に発生し、同時に遺伝する。そして、食物連鎖で感染もするというやっかいなもの。
人間にとって「食人」がタブーになったのは、このプリオン病のせいかもしれない、などとも思える、色々な示唆に富んだドキュメントである。
あまりのおもしろさに、仕事の待機中に一気に読んじゃいましたよ。
眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎