ブックガイド(9)「ジャパッシュ」

(2009年 04月 21日 「読書記録゛(どくしょきろぐ)」掲載)

ジャパッシュ (ぶんか社コミック文庫) (文庫)


「ワイルド7」などの活劇マンガで、香港映画のアクションシーンにまで絶大な影響を与えた望月 三起也の知られざる傑作。
 週刊少年ジャンプ1971年20号から44号まで連載。
 比類ない美貌とアジテーションの才能を持つ少年・日向光(ひゅうがひかる)が、その魅力を武器に日本の独裁者へと上り詰めていく物語。特に面白いのは、テレビなどマスコミの力を利用したプロパガンダでのし上がっていくところ。まさにアドルフ・ヒトラーが、民主的な選挙を経てのし上がっていく様を思わせる。
 印象的なシーンは、光が、歌謡番組で歌うアイドルを見て、「こいつが欲しい」と言うところ。
 周囲の人間はアイドルをモノにしようとしていると思い込むのだが、光が欲しかったのは、その敏腕マネージャーの方。そのマネージャーに「カリスマの演出」をまかせるのである。このあたりが、後に広告会社でプロモーションなどを担当する私の琴線に触れたわけだ。

「ジャパッシュ」とは、光が組織した私兵組織で、そのユニフォームのデザインは明らかに三島由紀夫の「楯の会」を想起させるもの。wikiによれば、「ジャパッシュ」は「日本」(Japan)とフランス語で「不良」「ならず者」を意味する「アパッシュ」(apache)を組み合わせた造語だとのこと。これは初めて知った。
 1974年、高校生の俺は、単行本でこの作品を読み、大いに感心したものである。
 ストーリーの上では、光と敵対する正義の主人公がいるのだが、光の悪の魅力の前にはかすんでしまう。「悪の主人公」としての光の存在が強烈過ぎたために連載を中断してしまったらしい。少年誌の限界だったのだろう。

ジャパッシュ (Comix & culture collection (1))


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