自作の聖地巡礼(3)旧瀬戸電堀川駅(「不死の宴 第三部冷戦編」より)
今回は、第三部冷戦編より。作品の舞台は1972年。那覇、東京、大阪と並んで名古屋市も登場する。作中人物・西城真一の出身地なのだ。
この手の伝奇色の強い作品の場合、今では存在しない場所は、読者が確認に行けないだけに好きに料理ができる。執筆しながら調べていて、格好の場所を見つけた。それがここなのだ。
旧瀬戸電堀川駅
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実は現在、中区栄を起点とする名鉄瀬戸電は、外堀通の中を走っていて堀川駅が終点になっていた。瀬戸市から陶器を出荷する終点が運河の始点である堀川だった。運河が荷役の中心であった時代に由来するからだ。
廃駅となったのは中区栄に終点が移ったため。実はこの駅に隣接して、1958年から1970年までアメリカ領事館が存在した。オイルショックを機にした経済の低迷で一時領事館は廃された。その後、再び戻ってきたときは国際センタービルに移っている。これがその建物。設計したアントニン・レーモンドはフランク・ロイド・ライトの弟子とのこと。
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愛知県図書館
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現在、この場所には愛知県図書館が建っている。「不死の宴」シリーズの原稿を書いていた場所の一つで、テキストをタイプしながら、「ここなのか、正にここなのか」と興奮した。ここでクライマックスにしようと思いついたのは第八章を書いているとき。クライマックスで描く内容は決まっていたのだが、それ起こす場所は決まっていなかった。作品の時代、既に取り壊されていたか、その予定だったかする場所を見つけて、「ここだ!」と内心小躍りした。同時に、図書館にご縁も感じたのだった。