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1/4 ハイセンス兄とノーセンス弟

僕には兄がいて。
昔から兄は羨ましい存在だった。

いわゆるクラスの人気者、というようなキャラではないが、
周りには人が集まっていて。

ボケたり突っ込んだりするわけでもないのに、
何故かずっと中心にいる。

学力も運動も芸術も
全てにおいてセンスが有る。

そんな兄が羨ましかった。
というか今でも羨ましい。

センスだけかと思ったら
ちゃんと努力もする。
そんなことされちゃ、何しても勝てん。

そんな兄を持ち、自分のセンスの無さに絶望して生きてきた。
いつだって前に兄がいた。

昔、兄の結婚式で、流れていた音楽。

「ああ、いい音楽チョイスしてんなー」

そんなことを思いながら僕は白ワインをがぶ飲みしていた。

そしたら式の最後に司会のお姉さんが、

「今日の式で流れた音楽は全て弟さんが好きな音楽を、と新郎が選びました」

は?

なにそれお洒落すぎん?
何そのセンス、怖。
凄すぎるやろ。

気づいたら僕は飲んだ白ワインを目から流していた。


僕はそんなセンスのある兄に憧れて生きてきたし、
そんなセンスのある兄に嫉妬して生きてきた。
むかつく。


兄とは違う自分。
自分には何があるのか。
それを探し続けて生きてきた。

学力は普通、運動はからっきし、芸術もダメ
兄と比べて、あまりに僕は劣等生だった。
センスなし、生きていくことすらセンスなし。

兄に褒められた記憶なんてあまりないが、
中学生〜高校生の時、ラジオ番組のハガキ職人をしていた頃

それは兄も面白がってくれていたような気がする。

一緒にラーメンズのDVDを見て、アルファルファで笑って
バナナマンとおぎやはぎのVHSを擦り切れるぐらい見て。

演劇も一度一緒に見に行ったっけな。
松尾貴史のやつ、めちゃくちゃ面白かったな。

大学生の頃バッファロー吾郎のイベントで貰ってきた僕の名前入りサイン付きDVD見せたら、

「なにやってんの」って笑ってくれたな。

兄にとって、面白い弟でいたいという
その感覚はいまだにちょっと残ってる。
何やったら、面白いやんって言ってくれるかな。


そんな兄は、最近独立して、建築事務所&カフェを立ち上げた。

「紙とえんぴつ」って名前の事務所なんだって。


・・・・センス、やっぱりむかつく。




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