周りの評価に敏感な子どもが「主体性」を育むために
今回の相談では、ある保護者の方から、「お子さんが絵を描くことに苦手意識を持ってしまった」というお話がありました。
このお子さんは、かつて楽しんでいた殴り書きの絵を、他の子どもにからかわれた経験がきっかけで、自信を失い、チャレンジに対して抵抗を感じるようになってしまいました。
相手との比較に敏感で、慎重な一面を持つお子さんが、失敗や評価を恐れた結果、挑戦が難しいと感じているのだと思います。
今日は、このことについて、保育者とどうしたらいいんだろう?と考えたことをそのまま書いてみたいと思います。
子どもが「慎重」であることの捉え方
まず前提として、慎重な性格は必ずしも悪いことではありません。
子どもが他の子と自分を比べ、慎重に行動することで新しい挑戦に躊躇する場合でも、親としてその慎重さを理解し、「そういう子なんだよね」と受け止める必要はあるのかな?と思います。
また、このお子さんは3月生まれの男の子なので、同学年の中でも、発達の違いなどが影響する可能性もあります。
「幼児期の1学年の中には、小学生で言う3学年くらいが含まれている」と言われることもあるほど、同学年の中でも発達の差は大きくなります。
自分よりもいろいろなことができる子どもたちと過ごすことが多い3月生まれの子どもは、周囲との比較を意識しやすく、慎重さが強まる傾向もあります。
何を隠そう、私が、3月生まれの男の子なので、とてもとてもよくわかります。
私は、兄弟の中でも一番下、親戚の中でも一番下、何なら昔行っていた教会の中でも一番年下でした。
常についていく存在で、時に仲間外れにされたり、からかわれたり…。その中で生きてきたので、自分なりの防衛術をいくつか持っていたように思います。
自分を表現する場を「比較しにくい遊び」で増やす工夫
絵を描くことが好きなのに、人前ではやらなくなったというのは、少し寂しい現象です。
私は、今でも歌を歌うことは好きなのですが、カラオケに行くのは大嫌いです。
この原因の一つに、小学校のころ、みんなの前で歌を歌う機会があった時に、姉から「音痴音痴♪」とからかわれた経験があります。
元々騒ぐのが好きではない性格も相まっているのかもしれませんが、私はよほど気を許した人とでなければカラオケには行きたくなくなりました。
私のように苦い思い出にならないでほしいなと思う保護者の方の気持ちも痛いほどよくわかります。
そんな子どもに自信をつけてもらうために、「正解が決まっていない」創造的な遊びを取り入れてみるのも一つの方法かなと思います。
例えば、大きな紙に好きなだけ色を塗る、タブレットで何度も描き直せるデジタル絵を使うなど、自由な表現ができるものが良いかもしれません。
私は、空想するのが好きだったし、自分なりに作ったものを一人で遊ぶのがとっても好きでした。
これが正しいというわけではないかもしれませんが、評価されることなく自分のペースで自己表現を楽しめるというのは、大切なことかなと思います。
表現をサポートする親の関わり方
親としても「形を目指す絵」ではなく、「色を混ぜる楽しさ」を感じられる造形活動を一緒に行うのも良い方法です。
また、子どもが描いた抽象画を切り取って名刺やスマートフォンの待ち受け画面にするなど、「価値がある作品」として活かしてあげると、子どもも自信を持ちやすくなるかもしれません。
園内のcafeのヤスさんの名刺は、子どもの絵の具の絵を切り取ったとってもハイセンスなもので、すごく素敵です。
このように、子どもの創作物を具体的に大切にすることで、「私にとってあなたの作品は大切で、素敵だと思っているよ」というメッセージを伝えられます。
他学年の子との交流による自信づくり
同学年の子どもたちとの活動が多い生活環境では、3月生まれの子どもは常に年下として扱われます。
私も、常に年下でしたが、中学生の部活の時に、初めて後輩というものに出会いました。
同年代の子よりも、一つ下の子たちととてもウマが合って、楽しかった記憶があります。
同学年と思っても、発達の差はありますので、学年にとらわれず、「いろいろな子と接する機会」を作ることが、自己肯定感を育むのに役立つ場合があります。
例えば、年下の小さな子どもと関わることで、「お兄さん・お姉さん」として認識される経験が、自信に繋がることは多くあります。
子どもが「嫌」と言える環境を提供する
「嫌と言えない」「すぐに謝ってしまう」といった行動は、学年や環境による影響が大きいこともあります。
私は、すぐ泣く子だったのですが、とにかく謝りまくっていました 笑
自分が悪くなかったとしても、何なら付きまとうくらいの勢いで、謝っていたように記憶しています。
これは、ある意味の処世術だったのように思います。
この場合の解決策としても、異年齢の子どもたちと触れ合うことで、小さい子同士がけんかをしたり、嫌なことをされているときに「それはやめたほうがいいよ!」「やめてあげなよ!」という機会ができることで、自分の言葉で相手に気持ちを伝えるという主体性の基礎が育まれます。
一緒に取り組むサポート体制の大切さ
子どもが慎重であることや、周りの評価に敏感であることは、長期的な視点で見れば自分や他者を尊重する力でもあります。
そのため、無理に「人前に出す」ことにこだわらず、お子さんが表に出ない形でも自信を持てる機会を提供してあげてもいいかなと思います。
保護者と保育者が協力して、安心して挑戦できる場を作ってあげたいと思っています。