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ママはコミュニケーションお化け

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幽霊になったお母さんと神社に住み着く娘のウララの話 現在、小説本文を書いてます。一区切りついたら、挿絵を差し込んでいこうと思います。
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#恥文

ママはコミュニケーションお化け 第二話

「国破れて」 2020年 10月15日  文明からかけ離れすぎてここは、日本なのか朝鮮か、台湾なのか太平洋の島々か、はたまた…、どこかは分からない。分かるのは、堅州町(かたすまち)と呼ばれていることだけだ。  さて、冗談はさておき、私は古来より伝わる社に住み着いた先祖から、代々この社をまとめる家系の宮司、名を清田という。務めるこの大社は主祭神はなく、あらゆる廃された神の御霊を鎮めるためにある。地域の人々には、拝殿とかけて廃殿様と親しまれている。  今日も、参拝客が来たこ

ママはコミュニケーションお化け 第三話

20年 10月18日 「ええ、ええ、遠~い親戚の子で…」 「本当にまぁ、可愛い子ですねぇ。リンゴのようなお目々でべべは雪だるまのように。お参りするに廃殿さまなのか麗ちゃんなのか、そげん楽しみありますわ」 「そうですねぇ、皆さんに良くしてくれて、あの子も楽しんでますよ」  ウララが来て3日目。  神社に据え付きの児童館にて、近所じゃちょっとしたアイドルになっており、先程の浦木さんなんかは日に何度もウララを見に来るほどだ。  本当は、何か面倒事にならないように隠しておきたいの

ママはコミュニケーションお化け 第四話

「資本」  10月20日  今日も日がな一日、アルバイトの千代さんが境内の掃き掃除や参拝客の対応をしつつウララの世話をしてくれた。そして、6日かけてやっとこさといった塩梅で、日が暮れた頃にひと部屋を片付けた。  私は、寝室に行こうとするウララを呼び寄せて、例の部屋の前まで連れて行く。 「私のために部屋を…?」 「ああ、そうだよ。まだ少し埃っぽいが幾日風を通しておけば…好きに使って構わないよ」 「そうか、あの本たちはここを開けるために移してたのだな!」  ウララは、そろ

5話 アンナとマリヤ

 74年 「きれいな絵ね」  ふっと後ろから声をかけられたアンナは、少しキャンバスに被さって隠した。 「ごめんごめん、怖がらせてしまったようね。日記、渡しに来たよ」  声をかけてきた彼女の名前はマリヤ。この地図にない町―――計画都市の入植者の同期で、不慣れな土地で塞ぎ込んでいた私に声をかけてきてくれた。そう、さっきみたいに…。 「…ありがとう」  日記を受け取って、地面に放ってあったカバンに入れる。 「探すのに苦労しちゃったな。 絵、描いてていいよ」 「うん…」  私

6話 И計画

 75年  やはり、アンナは学校に溶け込めなかった。友達は出来ているし、勉学にもついていけないということではなく、学校のあの軍事的教練が肌に合わないらしい。  そして、党の政策のもと形作られたこの都市に、修道院が作られた。多くの人々は、信仰ではなく元の生活の一部を取り戻そうとして通っており、アンナも通っている。  私はというと、祖国のためのИ計画に従事することになった。  その計画の全ては私も分からないが日本行きが決定しており、親元から離されアンナと出会った学校から養成学校

ママはコミュニケーションお化け 第七話

「下問を恥じず」  10月24日 「新入生だってね、女の子らしいよ」 「見たぜ、雪だるまみてぇな奴だった。金髪だったぜ。」  と、ざわつく教室に噂の人が先生に連れ立って入ってきた。 「今日から、幼年組に入ることになったうららさんです。皆さん、よろしゅうしてあげてくださいね」  はーい、と一同は声を張った。 「席は、一番奥で。あとは、わからないことがあれば都度まわりに聞いてみてください」  ウララは、奥の席へスタスタと歩くのだが、周りの視線が熱い。  清田さんに買っても