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「はじまりの学校」は最短で醸造家のスタート地点に立たせてくれる


南部杜氏発祥の地として知られる酒のまち・岩手県紫波町。紫波町は、100年後に100の醸造関連事業者を生み出す「酒のまち紫波推進ビジョン」を掲げています。

そして、その推進拠点となるのが「はじまりの学校」。閉校となった旧水分小学校に自前の醸造施設をつくり、さまざまな醸造家と酒造りを行っていく予定です。

今回、そんな未来を見据える「はじまりの学校」から、ブランド初となる醸造家のデビュー作が誕生しました。

「はじまりのお酒 #02」

この「はじまりのお酒 #02」は、自分で酒造りがしたいと紫波町へ移住した、はじまりの学校 醸造家の永安祐大さんが、紫波町内の「月の輪酒造店」の協力を得ながらはじめて造った日本酒です。

永安祐大さん
2022年に創業し、茶葉・ハーブなどのボタニカル素材を使ったお酒「SAKE TEA」をプロデュース。その後、地域おこし協力隊として活動拠点を紫波町に移し、酒造りを学ぶ。2024年4月、醸造家デビュー作となる日本酒「はじまりのお酒」を製造。今後は、旧水分小学校(はじまりの学校)にて、新たなお酒の製造を行う予定。

お米の穏やかな甘みと、爽やかなスッキリとした酸。りんごや桃を思わせるやさしい香りと無濾過原酒ならではの深いコクを楽しめます。念願の酒造りにチャレンジした永安さんの想いがかたちになった最初の1本をぜひ味わってみてください!

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まったく別の業種から醸造家への転身を決めた永安さん。話を伺ってみると、紫波町には醸造家のチャレンジを後押しする「環境」と「風土」があると言います。

なぜ永安さんは紫波町で醸造家になることを選んだのか?

永安さんが紫波町と出会い、醸造家になるまでの「まじわり×はじまり」の物語についてインタビューしていきます。



「はじまりの学校」は最短で醸造家のスタート地点に立たせてくれる


—— 永安さんはどういう経緯で紫波町に来たんですか?

「お酒を造りたい」と思ったときに、どこにも環境がなかったんです。調べると、酒蔵で修行して杜氏(酒造りの責任者)になるまでに、最低でも10年の経験が必要だと言われていて。修行の大切さはわかりつつも、家族がいると、地方の酒蔵に長年単身赴任するのは難しい。そんななか、お酒を造るスタート地点に最短で立たせてもらえる環境が紫波町にはあったんです。


—— どういうことですか?

紫波町は、100年後に100の醸造関連事業者を生み出す「酒のまち紫波推進ビジョン」を掲げていて、町全体として酒を基幹産業にしていくビジョンがある。さらに、その推進拠点としての「はじまりの学校」があって、僕みたいに醸造家を目指す人に対して、町内での蔵人経験や工業技術センターでの試験醸造の機会など、酒造りに必要なさまざまな経験を積むための斡旋をしてくれるんです。


—— 「はじまりの学校」を通じて醸造家になるための経験を積んだと。具体的に、どんな経験が印象に残りましたか?

町内にある酒蔵で、蔵人としてお米の洗い方、蒸し方からお酒を仕込むところまで、ひと通りの経験をさせてもらいました。その経験を経てわかったのが、杜氏から見えている世界と、蔵人の僕から見えている世界は全然違うということでした。


—— えっ? どういうことですか?

もちろん酒造りは、関わる人すべての力を集結して行うものです。でも、お酒のレシピを考えたり、そのレシピをもとに発酵をコントロールしたり、そういう意思決定を最終的に行うのは杜氏なんですね。

だからお酒の仕上がりは、杜氏のセンスや経験値に左右される部分が大きい。蔵人として僕ができることは、まだまだちっぽけだなと思ったんです。


—— 杜氏にならない限り、酒造りの肝心な部分はわかるようにはならないと。

そうなんです。僕が今後造り手として独り立ちするには、蔵人としての技術は大前提として、杜氏としてのセンスも養わないとダメなんだと気づいて。本気でお酒を造りたいなら、自分の責任で造る経験を早く積まなきゃなと。


—— 自分でお酒を造る経験が大事。

ただ、自分でお酒を造りたくても、一般的には蔵人として何年も修行するか、酒蔵の跡継ぎとして抜擢されるしかなくて。僕はそこまで待てなかったし、酒蔵の家系でもなかったので。それで、何とかしてお酒を造る環境がほしいということで、岩手県の工業技術センターに相談したら受け入れてもらえることになりました。


—— 工業技術センターではどんなことを?

お酒を小さく仕込ませてもらいました。最初にレシピを設計したうえで、米の精米、洗米、蒸米、麹づくり、仕込みまで各工程を実際にやってみる。最終的な数値のパラメーターにするために、どういう経過をたどる必要があるのかアドバイスをもらいながら、改善を繰り返す。そうすることで、月の輪酒造店で年明けに仕込む「はじまりのお酒 #02」に向けて、なんとか酒造りのスタートラインには立てるのではないかという希望が見えてきました。(※インタビューは2023年の年末時点)


—— すごい行動力ですね。

いえいえ、僕みたいな一般人が工業技術センターで研究させてもらうなんて、普通は難しいと思います。それこそ、紫波町とのつながりや「はじまりの学校」で醸造家になるという理由があって、はじめて受け入れてもらっているわけで。そういった意味で、「はじまりの学校」は持たざる者に酒造りの門戸を開いてくれているんです。


縁もゆかりもない紫波町にやってきた理由


—— 永安さんはそもそもなぜお酒を造りたいと?

妻と結婚したときに、いつか自分たちの好きなことで周りを喜ばせる仕事ができたらいいね、という話をしたんです。で、自分たちの好きなものが、お酒やお茶、ハーブだった。どうせやるならユニークで、自分たちにしかできないことをやってみたくて、実験的にお茶を使ったお酒「SAKE TEA」を造ってみました。

—— 実際に造ってみてどうでしたか?

ものすごい愛着が湧きましたね。元々コンサルティングの仕事をしていて、それも仕事の面白さは強く感じていました。でも、自分の想いがモノになって、誰かに喜んでもらえる、その「手触り感」には代えがたいうれしさがありました。


—— その喜びが醸造家を目指す原体験になったわけですか。

そうですね。「SAKE TEA」のときは、僕はプロデュース側で、お酒造りは酒蔵の力を借りていたんです。でも、これからは自分の手で、もっともっと突き抜けたお酒を造っていきたいなと。


—— 醸造家への転身は勇気がいる決断だと思うんですが、迷いはありませんでしたか?

若者の青臭い言葉かもしれませんが、僕にしかできないお酒があると信じていて。自分が介在することで、もっと美味しいもの、もっと価値あるお酒が造れるだろうと思っているんです。

ただ、僕は東京の人間なので、縁もゆかりもないところにいきなり行くのは正直難しい。お酒には地の力が不可欠で、生産者だったり場所だったり、飲んでくれる人だったり、酒販店さんだったり、地域のつながりが絶対に必要なんです。


—— 紫波町にはそのつながりがあったと。

よそ者を受け入れる風土があると言ったら大げさですけど、「はじまりの学校」を中心に運営代表の黒沢さんがいて、役場職員の須川さんがいて、すでにつながりのある人たちの輪に入れてもらえたんです。僕の酒造りも必要な場面で後押ししてくれる。そういう外からの人を受け入れる風土、応援してくれる文化がこの町にはあると信じて、「紫波町なら根付いてやっていけるかもしれない」と思ったんです。それが紫波にやってきた理由ですね。


お酒を通じて紫波の魅力を表現する


—— 永安さんはお酒のどんなところに惹かれるんですか?

僕はお酒をどこかひとつの作品のように捉えているところがあって。お酒のバリエーション、複雑性、五味の調和、刺激のバランス、テクスチャー……それらを五感でもってダイレクトに見て、感じて、口に入れて味わう。僕は1人で飲むこともけっこう多くて。「このお酒はどういう味がするんだろう」「どんな香りがするんだろう」「どういう人が造っているんだろう」と、思いを馳せながらお酒と向き合うのがすごく好きなんです。飽きないというか、ずっと好奇心を満たせるというか。

—— なるほど。そんな永安さんはどんなお酒を造りたいと思ってるんですか?

世の中にいろんなお酒があるなかで、美味しさのピンをどこに置くのかが、いちばん難しい。甘味や旨味だけだとべたっとしたお酒になるし、苦味や酸味を強調しすぎると後に引く。いろんなバランスの正解があるなかで、お酒の設計の新しさにグッと心をつかまれてしまうときがあって、そんなお酒を造りたいと思っています。

お酒をひとつのキャンパスと捉えて、自分の色を出しながら液体として突き抜けたものを造りたい。あとは、お酒は地の力が土台になるので、その土地らしさを表現するためにも紫波の原料の活用にも力を入れていきたいです。


—— 今はどんなものを構想していますか?

例えば、紫波町には水分神社という水源があって、そこに樹齢300年ぐらいの杉の木が植わっているエリアがあります。そういった豊かな自然があるので、杉を副原料に使ったり、水分神社の冷涼で爽やかな感じを表現するためにシトラスの香りを入れたり。お酒を通じて紫波の魅力を表現することで、それをきっかけにこの土地に訪れてくれる人が増えたらうれしいなと。


—— 仕込みを前にして、いまどんな気持ちですか?(※インタビューは仕込み前に実施)

とにかく一発勝負なので緊張感がすごいありますね。少量を仕込む試験醸造と違って、それなりの量を造るので失敗できないじゃないですか。


—— どのぐらいの量を造るんですか?

700リッターぐらい、四合瓶で1000本。もし1000本まずかったら最悪じゃないですか。はじめての仕込みで1000本造るって、そりゃあ緊張しますよ。でも、早くお酒を造りたいとずっとずっと思い続けていたし、今も思い続けていることなので楽しみでもあります。万全の体勢でのぞめるように、最後の最後までやれることはすべてやるつもりです。


—— 永安さんのはじめてのお酒の完成を楽しみにしています。

ありがとうございます。これから「はじまりの学校」の醸造事業が立ち上がっていくので、その事業に期待感を持ってもらえるようなお酒を造れたらと思ってます。今回、紫波町内のみなさんや醸造事業者からのサポートなど、本当にいろんな方の協力があって、酒造りのスタート地点に立たせてもらいました。このお酒を飲んだ方に、酒のまち紫波、そして「はじまりの学校」の未来を感じてもらえるとうれしいです。


永安さんが造った「はじまりのお酒 #02」の販売が開始しました!

「はじまりの学校」から、ブランド初となる醸造家のデビュー作!

「はじまりのお酒 #02」は、はじまりの学校 醸造家の永安祐大さんが、「月の輪酒造店」の協力を得ながらはじめて造った日本酒です。

今回酒造りをした永安さんは、2022年に創業し、茶葉やハーブなどのボタニカル素材を使ったお酒「SAKE TEA」の開発・販売を経て、「自分で酒造りがしたい」と紫波町へ移住。「はじまりの学校」醸造事業の第一歩として、永安さんが念願だった酒造りに挑みました。

ひと口飲むと、お米の穏やかな甘みと、爽やかなスッキリとした酸。りんごや桃を思わせるやさしい香りとともに、無濾過原酒ならではのコク深さも楽しめます。キレのある心地のよい余韻は、肉料理の旨味ともよく合います。

はじめての酒造りを終えた永安さんは「一発勝負の緊張感がありました。出来栄えがよかったので、ほっとしています。月の輪酒造店のみなさんが、自分が造りたいお酒を実現するために全力で応援してくれました。1つ1つの工程を丁寧にサポートしてくださったことに本当に感謝しています」とコメント。

これまで、町内での蔵人経験や工業技術センターでの試験醸造の機会など、酒造りに必要なさまざまな経験を積んでいった永安さん。

「紫波町内の協力、醸造事業者からのサポートなど、酒造りのスタート地点に最短で立たせてもらえる環境を用意してもらいました。このお酒を飲んだ方に、酒のまち紫波、はじまりの学校の未来を感じてもらえるとうれしいです」

紫波町の米農家・吉田辰巳さんの酒米を使い、地元に愛される月の輪酒造店のサポートを受けながら、はじめての酒造りにチャレンジした永安さんのデビュー作。

しぼりたてのお酒をそのまま瓶に詰め込んだ生酒を限定でご用意しました。「はじまりの学校」が目指す、酒造りのかたちがギュッと凝縮した1本をぜひお楽しみください。

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