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平和教育

私は日本生まれの日本育ちゆえ、小学校1年生から、高校2年生位まで、夏が始まると国語の教科書で戦争に関する物を読んできた。体育館に集められ、映画鑑賞で戦争映画を見たし、社会の授業では、大人に戦争体験を聞くなんて言う宿題も出た。子供の頃は、音読で必ず泣いてしまうような、悲しい物語や惨殺シーンがあるような映画を観る事が本当に嫌でたまらなかった。何より嫌だったのは、「戦争体験を聞いて来る」と言う宿題。我が家では全く禁句の戦争話し。祖母と父、叔母は満州から命からがら逃げて引き揚げ船に乗った人達だったから。

今となってみれば、戦争がどんなに酷い物かを知る教育は素晴らしい物だと思う。日本の平和憲法に勝る憲法は無いとも思える。子供の頃から繰り返し語られ、映像で見た光景は大人になって、親になってさらに私の中で大きく育ったように思う。子供に満足に食べ物を与えられない母の気持ち。大切な人を戦地に送り出す気持ち。自分の大切な人々が何処に居るかも分からない不安。今、自分がそんな時代に放り出されたら、生きて行けるだろうか。

一方、今、私の住んでいる国は平和教育や、戦争の悲惨さを伝える様な教育は殆どされていない様な気がする。日本に原爆を投下した国。国民の何%がその事実を覚えているのだろうか。歴史の授業ではほんの少し触れるかもしれない…けれど、本当の意味での悲惨さを伝える事は殆どない様に思う。そして、今も常に多くの国に軍隊を置き、自国の若者を送り込んでいる。本土に空襲が無かったため、戦争の悲惨さを語る人は従軍した兵士のみ。多くの国民は本当の悲惨さを目の当たりにしていない。この辺りの温度差は日本と比べ物にならない。

この国では18歳になる男子に、徴兵される意思があるかを問う。勿論、Noも言えるけれど、Noと回答したら、色々な不利益を被るかもしれない。例えば大学の奨学金などは貰えなくなる可能性が出て来ると言う。息子が18歳になるまで知らなかった事実だ。まだ徴兵されると決まった訳でも無いのに、随分と動揺してしまった自分を覚えている。「本当にそんな日が来たら、日本国籍を選ばせよう。」と心に固く誓っている。戦時下の母の様にはなれない。なるつもりも無い。私の心のなかに子供の頃に受けた平和教育が心の何処かに残り続け、大きく育っているから、平和憲法を誇りに思っているから。



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