探し人
取材先へ向かう途中、バスを待っていたら、見覚えのある後ろ姿が目に止まり、まさかと思って目が釘付けになってしまった。
記憶の中のその人は、背丈は170cmくらい、背中は広く、足はガニ股気味、頭は白髪がいつも短く切り揃えられていて、肌は健康的に焼けた小麦色、腕や手や顔には人生の重みを感じる皺が目立つ。
目は細く、眼光は鋭く、一見気難しそうな人に印象を受けるけど、挨拶をするとちょっと背を丸めて、くぐもった声でいつも気さくに話してくれた。笑うと細い目がさらに細くなり、口角が上がり、頬からは皺が消えて艶が戻った。
こんなところにいるはずないのに。これからも、こういう見間違いを繰り返すだろう。そして、その度に思い返すはずだ。あの人はどこにいるのだろう、と。
また雪山のシーズンがやってくる。あの懐かしい顔は、いまもどこかで眠っている。
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