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消え行く北の鉄路
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2016年夏。
私は北海道の「増毛(ましけ)駅」という、非常に縁起の良い名前の駅に降り立った。
函館本線の旭川寄りにある、深川駅から分岐する「留萌本線」の終着駅だ。
駅の周りは北海道ののどかな漁村という感じで、全国的に有名な観光地があるわけでもない。
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強いて言うなら、この"増毛"という名前の町や駅そのものが観光スポットである。一度訪れれば、この先髪の毛で悩むことはないはずだ。
さようなら留萌本線
そんな増毛駅だが、今はない。
その年の冬、留萌本線の留萌~増毛間が廃止されたのだ。
日本海を眺めながら、窓の外から海風が入ってくる素敵な路線だった。
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そして今春には石狩沼田~留萌間も廃止。留萌の街から鉄道が消えた。
数年後には、残る深川~石狩沼田も廃止され留萌本線自体が消滅する予定だ。
捨てられる鉄路
北海道から鉄道が消えていく。
普段使わないから、お金の無駄だからと、自治体が喜んで交通インフラを捨てていく。
そんなことが起こっているのだ。
北の大地は、「日本の縮図」とも呼ばれる。札幌に人口が集中し、地方から人間がいなくなっているからだ。
現時点でそれなりに乗客のいる余市~小樽の函館本線さえも、廃止される方向らしい。店じまいならぬ「町じまい」の準備だろうか、悲しくなる。
交通の持続可能性は、地域の持続可能性だ。