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自由で野蛮なドリームマッチ

 昨日録画したドリームマッチを見た。めちゃくちゃ面白かった。終始笑いっ放しだった。個人的な面白ランキングを付けると、1位が霜降り明星せいやとバイきんぐ小峠の「取り調べ」コント。2位がサンドウィッチマン富澤とナイツ土屋の漫才。3位がロバート秋山と千鳥ノブの「写真撮影」コントだった。ほぼ全員がお笑い界のトップランナーであり、その超豪華なメンバーたちが本気で作ったネタを見ることができ、圧倒的な満足感だった。「ドリーム」の名に恥じない番組だと思った。

 見ていて印象に残ったのが霜降り明星せいやとバイきんぐ小峠がネタの打ち合わせをしているシーンだった。とにかく、小峠が心の底から楽しそうにネタ出しをしていたのだ。バラエティでは見れない笑顔だった。年齢差もあって難しそうな面もあっただろうが、二人で協力してネタを作り上げようとしている様子が映像からビシビシと伝わってきた。楽しそうにネタ作りをしていて視聴者であるこちらも嬉しくなってしまった。ネタの完成度は、このコンビが一番だったと思う。せいやの器用なボケと、小峠の安定感抜群のツッコミがかっちりハマっていた。最後の悪ノリどつきあいパートも全力でバカバカしさに振り切っていた。元からこのコンビだったと言われても納得できるくらいレベルの高いコントだったと思う。

 とにかく、全員が自由だった。与えられた空間と時間のうちで、誰もが新しいものを創造しようとする活気に満ちていた。それは壮大な悪ふざけだ。既に名声を獲得している芸人たちが、予定調和的に進行するテレビの文法に真っ向から立ち向かい、ルール無用の野蛮なやり方で人を笑わせようと奮闘する。訳が分からなくて上等。ネタがマイナーで上等。その点で言うと、「塩の魔人と醤油の魔人」という謎の概念を発明したハライチ岩井と渡辺直美はすごかった。はじめから渡辺直美とコンビを組むことを想定し、「バズらせたい」と言った上でこのネタを作り、実際にえげつないくらいバズらせた岩井は恐ろしい才能だなと思った。後は野生爆弾のくっきー! とオードリー若林。若林をあんな無駄遣いしたコントやるなんてありかよ!? って感じだった。くっきー! が金庫にバックドロップかました瞬間に死ぬほど笑ってしまった。暴れ過ぎだった。それにしてもあんなに若林をぞんざいに扱えるのはひどいというかなんというか、とんでもないなと思う。

 ドリームマッチとは自由で野蛮な笑いの祝祭空間だ。ネタが面白かったのはもちろんだが、何より芸人たちによる未知の笑いの探求、新たな方法の探求のドキュメントを見ているような印象があって、ものすごく気持ちがよかった。ところで、私は今年M-1グランプリに出ようと考えている。この状況で果たしてどうなるのかは見当がつかないが、とりあえず1度ネタを書いてみた。で、その後ドリームマッチを見た。まあ圧倒された。プロすげえと思った。私はただのアマチュアである。実績はなんにもない。とはいえ、自由で野蛮な笑いを求める心づもりを持つことくらいはできるだろう。舞台上で「事件」を起こすこと。ただし、逮捕されないこと。そういう気持ちでやっていきたい。

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