姫神OverRide(第5回阿波しらさぎ文学賞落選作)
彼は真夜中のJR名古屋駅十六番線ホームを時速二五〇キロで駆け抜けた。名古屋の街並みは後方へ流れ去った。激しい雨が、窓を叩いていた。違和感はあった。指さし確認で安全を確認したとき、いつもの彼じゃないと思った。運転席に、どんよりとした空気がこもっていた。ヘッドライトも焦点が合っていなかった。熱を帯びたブレーキを引いても、彼が止まる気配はない。ATCの状態を確認しようとすると、頭の中に巨大な男性器を模した岩が入り込んできた。姫神伝説。こんな状況でも、とりつかれたように思い出してし