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【経営者向け】週刊AIニュース 240311~0317
今週の「経営者が知るべき」AIニュースです
世田谷区が生成AI(ChatGPT)サービスを3ヶ月で内製開発。73%以上の職員が生産性向上、1人あたり1日35分の業務削減を実感。
世田谷区は、区職員によるチームで内製化したMicrosoft Teamsベースの生成AIチャットボットを全職員に提供し始めた。
このチャットボットは、セキュリティ要件を満たしながら、低コストで開発スピードが速く、利用の手間も少ない。
アンケート結果では、73%の職員が生産性向上を実感し、1人当たり1日平均約35分の業務削減効果があった。
今後は内部文書を参照できるQAボットや、わかりやすい日本語に書き換えるボットなどの開発を予定している。
本チャットボットは、区職員自らが開発したものである点が特徴。
本チャットボットは、Microsoft Azureがクラウドで提供する機能やサービスのみで構成された環境で、外部に委託することなく、非エンジニア職の区職員がローコードツールなどを駆使して開発されました。
セキュリティ面でも、外部への情報流出リスクを最小限に抑えている。
入力したテキスト(プロンプト)の内容が外部に流出する可能性は極めて低くなり、また、入力した内容がAIに学習されることもありません。
実際の職員アンケートでも、生産性向上の実感が表れている。
通常業務では1日平均約34分の削減、アイデアや企画の素案作成については1回の処理につき平均約77分削減したと回答されました。
今後の展開としては、より実用的なAIボットの開発を計画している。
今後実装していく機能の優先順位の参考にすることができました。追加サービスの要望に関するアンケートによると、現在テスト中の「内部文章を学習した問い合わせボット」に70%以上の区職員が期待しています。
自治体らしく、「やさしい日本語ボット」への期待も高い。
「やさしい日本語ボット」と題した、そのままでは固い印象や難しい日本語で構成されている文書や規定を、幅広い年齢層や外国人でも読みやすい形に書き換えるボットの要望も多く出ています。
AIスマホのデモで実感した「スマホアプリが消える」未来
モバイルワールドコングレス(MWC)2024で、ドイツテレコムとAI企業Brain.AIが共同開発したコンセプトスマートフォン「TPhone」が注目を集めた。
TPhoneは、ユーザーの自然言語の指示を受け取り、必要な情報やサービスを統合して最適なインターフェースを生成するAI搭載デバイス。
従来のアプリ中心のスマートフォンとは異なり、AIがユーザーのニーズに合わせて柔軟にインターフェースをカスタマイズできることが特徴だ。この革新的な操作体験により、スマートフォンの在り方が大きく変わる可能性があると期待されている。
TPhoneは自然言語でユーザーの要求を汲み取り、必要な機能を組み合わせる。
"As Brain.AI CEO Jerry Yue shows me what the T Phone can do, he tells the device to book a flight from here in Barcelona to Los Angeles on March 12 for two people in first class." (Brain.AI CEOのJerry Yueがデモで、TPhoneに3月12日にバルセロナからロサンゼルスへ2人分のファーストクラス航空券を予約するよう指示した)
従来のアプリとは異なり、状況に応じてインターフェースを生成する。
"As you can see, it's kind of constructing interfaces on the fly based on contextual understanding of who you are," Yue says. "Your words generate this interface." (「見ての通り、ユーザーの状況を理解して、そのたびにインターフェースを構築しています」とYueは言う。「ユーザーの言葉がこのインターフェースを生成します」)
この技術の実用化により、スマートフォン操作が大きく変わる可能性がある。
"It feels like the most radical reimagining of how we interact with a smartphone since Apple introduced the App Store for the iPhone more than 15 years ago." (これはAppleがiPhoneにApp Storeを導入して15年以上経った後で、スマートフォンとの最も革新的な交流方法を思い描かせるものだ)
最終的にアプリに代わると期待されている。
"Tim Hoettges, Deutsche Telekom's CEO, certainly thinks so. Speaking at MWC on Sunday, he predicted the death of phone apps within the next five to 10 years. His reasoning? AI is going to kill them." (ドイツテレコムのCEO、Tim Hoettgesはそう考えている。彼は日曜日のMWCで今後5年から10年の間にスマートフォンのアプリは消滅すると予測した。その理由は?AIがアプリに取って代わるからだ)
“脚本に生成AI利用”の声優の朗読劇が中止に 「関係者に多大なる迷惑が掛かる危険がある」
舞台公演の企画会社であるLol(東京・渋谷)は、生成AIを活用して作成した恋愛ドラマの朗読劇「AIラブコメ」の上演を予定していたが、批判的な意見が相次いだことから公演を中止すると発表した。
生成AIを創作の一部に活用することで新しいクリエイティブに挑戦しようとしていたが、「関係者に多大な迷惑がかかる危険がある」として断腸の思いで中止を決めた。生成AIの利活用をめぐっては賛否両論があり、創作における適切な利用方法が課題となっている。
公演の内容は以下の通り。
"生成AIが作った3本の恋愛ドラマを声優が朗読するという内容で、脚本以外にも、キービジュアルなどのデザインにも生成AIを利用していた。"
生成AIの利用について、Lolは以下のようにコメントしていた。
"AIを使って、人間が紡ぎ出す作品に、固定概念にとらわれない要素が入る、新しいクリエイティブへの挑戦であり、今までにない世界を楽しめる作品を目指す"
しかし、批判的な意見が出たことから、最終的に公演中止を決めた。
"関係者や出演者、事務所の皆さまに多大なる迷惑が掛かる危険があるとの理由から、断腸の思いではあるが、中止という判断を下した"
公演中止に対しては、賛否両論があった。生成AIの適切な利用方法については、今後さらに議論が必要とみられる。
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【筆者のひとり言】
生成AIの進化は著しいが、その利用方法については、様々な側面がある。
世田谷区では生成AI(ChatGPT)サービスを利用して、73%の職員が生産性向上を実感し、1人当たり1日平均約35分の業務効率化を図った。
1日平均で一人35分というは、一見するとインパクトがないように見える。
しかし、営業日20日として算出した場合、12時間近く削減することができる
厚生労働省が発表する「正規雇用労働者・非正規雇用労働者の賃金の推移」によると、2019年時点での一般労働者(正社員・正職員)の平均時給である「1,976円」で換算すると、23,712円になる。
仮に従業員が10人の場合は、237,120円もの金額を削減することができる。
さらに注目すべきは非エンジニア職の区職員が「ローコードツール(最低限のプログラミング知識でツールを開発できるサービス)」などを駆使して、外部に委託することなくチャットボットを開発したこと。
これまでの組織におけるツール開発は、エンジニアを抱えるシステム開発会社に委託する事が当たり前であったが、生成AIの登場、さらに生成AIを内包したローコード・ノーコードツールを駆使することで、簡易的なものから中程度の開発は自社で行うことができるようになった。
内製化による開発は、コスト削減につながる。外部への委託に比べて、直接的な開発費用の節約に加え、間接的なコミュニケーションコストの削減も見込める。
さらに、社内でのスキルアップや知識の蓄積が進むため、長期的には組織の競争力強化にも寄与することが期待できる。
生成AIを活用した自社開発のもう一つの利点は、カスタマイズの自由度が高いことだ。
組織内のニーズに完全に合わせた機能を開発できるため、より効率的で効果的な業務遂行が可能になる。
そんな生成AIは、誰もが使うスマートフォンにも進出し始めている。
スペインのバルセロナ市で開催された世界最大規模の移動体通信展示会「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」では、ドイツテレコムとAI企業Brain.AIが共同開発した、AI搭載のスマートフォン「TPhone」が発表された。
スマートフォンの使い方は様々あるが、ベースとなるのは「アプリ」
「電車の乗り換え」を調べたい場合は「乗り換え案内」専用のアプリをダウンロードするなど、iPhoneでは「App Store」、Android端末では「 Google Play」にて、用途に合わせたアプリを自身で選んで、都度起動する必要がある。
しかし、この「TPhone」はユーザーが必要とする情報を自ら判断して集め、ユーザーにとって最も役立つと思われる形に並び替え、ホーム画面に表示する。
アプリ間を移動しているのでなく、必要な情報を”生成”していっているのだ。
例えばレストランを予約する場合、通常だと、場所を調べるために「Googleマップ」を起動し、予約するために「食べログ」を起動し、日程確認のためにカレンダーアプリ、予約の確認や連絡のためにメッセージアプリやSNSアプリを行ったり来たりする。
しかし「TPhone」では、そういったアプリ間の移動を必要としない。すべてAIがやってくれる。
こんな便利な生成AIだが、新しい技術には懸念すべき側面もある。
クリエイティブにも活用が可能な生成AIだが、クリエイター保護の観点では、マイナスな側面が強い。
Lol(東京都渋谷区)は、生成AIが作った3本の恋愛ドラマを声優が朗読するという内容の舞台公演を中止した。
クリエイティブにおける生成AIは「生成AIは既存の著作物を、著作者の許可なく学習に使用している」という点が、著作権を侵害しているのではないか、議論されている。
現在の著作権法においては、生成AIの学習は「享受を目的としない利用行為(情報解析の用に供する場合 等)」と考えられ、原則として著作権者の許諾なく行うことが可能と考えられている。
また、生成された制作物に関しても、それが特定の「著作権者の利益を不当に害する」事がなければ、著作権侵害には当たらないと考えられる。
Lolはさらに著作権に配慮し、生成AIで生成したクリエイティブに、クリエイターが手を加えることでオリジナリティを出すことで、著作権の問題をクリアしていたが、世論の指示は得られなかったようだ。
最新技術であるAI。そこには様々な側面がある。
生成AIの可能性を感じてもらいつつ、その危険性も理解したうえで「自社で活用するにはどうすればいいか」という課題に対してどう向き合うか。
「AIなんてうちには関係ないよ」
そう思っている間にも、世の中はAIを受け入れて、超加速度的に進んでいっている。