笑っちゃいけないゲーム
二週間前くらいに起きた配送あるあるです。
配送は基本的にドライバーさんと助手の二人で回るのが基本なんですが、その日はたまたまスリーマンという三人で回る日でした。一年目の社員の子を新たなドライバーにするべく、現場で直接指導するためにあえて三人で配送する日の助手に今回はたまたま選ばれました。
スリーマンで回る時のいいところは、普段二人でやっている仕事を三人でやることになるので、単純に仕事の量が減ること、そしてドライバーが現場で設置しながら教えるので、いつもよりゆっくり片付けができること等々。万年助手の私は設置を教わることにはならないので、その日はゆったりと仕事ができる、割といいことづくめな一日になるんですよね。
しかし、一つ問題があるんです。
そう、三人だと運転席が激々せまいこと。
トラックの運転席って二人で乗ってるとめっちゃ快適なんですよ、道もよく見えるし一応三人乗りだから広くて。そう一応。あそこに三人で乗るのはまじでよくないです。狭すぎるんです。あそこは三人が快適に乗れるようには設計されてないんです、あれは無理やり三人で乗れる形にしやがったんです。しかもその日私はなんと真ん中の席で、もう地獄でした。
なぜならずっと内股生活なんですよ、少しでも気を緩めると右ももがギアのレバーにあたって、ホントに死んでしまうことになりかねませんから。唯一の休める時間が、常に内ももを鍛えなきゃいけない時間になって、もう大変。加えてほぼ満員電車と同じ状態なので、会話も特に生まれず距離だけ近い、ただただ気まずい空間になる。本来はユートピアであるはずの運転席はこの悪循環により荒野と化し、せっかく設置で作ったプラスを運転席で一気に大マイナスへ突き落としやがるんですよ。これだからスリーマンは。
なので皆さんもぜひ、コンビニなどでトラックから人が三人降りてくる場面に遭遇したら、何か太ももにいいものを与えてあげてください。お願いします。
さて、本題に入ります。
そんな一人無限内股生活をしてる最中に、ドライバーの子がいきなり
「今から”笑っちゃいけないゲーム”しませんか」
と言い出しました。そのゲームは
ゲーム中もし笑ったらポイントが貯まっていき、最後倉庫に戻るまでに一番ポイント貯まった人がみんなにジュースおごる
というものです。もう少年みたいなとてつもなく平和なゲームですなんですが、私は生まれて初めてこんな直接的な名前のゲームに出会いました。もはや鬼ごっこにすら奥ゆかしさを感じます。
このドライバーの子は自分の二個下の子なんですが、もうすでにドライバーをやっていて、しかもそろそろパパになるしイケメンという、恐らく年齢以外すべて負けている子なんです。そんな子が気まずさに耐えられなかったのか、いきなり変なこと言い出して
「えぇ、ついに狂ったのか?もうすぐパパになるってやつがなんてしょうもないゲーム提案してんだよ、、こっちはもう、、ずっと内股なんだぞ!!!」
と言いたくなりました。ま結局したんですよこの状況じゃ断れないし、ただより気まずい未来しか思い浮かばなくて、全然やる気でませんでしたが。
が、ところがどっこいこれがすごかった。なぜか知らないけどめっちゃ笑ってしまった。
正直もう話してたことほんとにしょうもなかったです。”社員Aさんは髪が薄いのに実は毛がボーボーだ”とか、”あの社員Bのおじさんは逆にツルツルだ”とか、、、本来笑えるわけがないことばっかり言ってたんですけど、めっちゃ笑いをこらえてしまいました。意味が分からなかった。悔しかった、全然おもろくないのにめっちゃおもしろく感じたことが。
ある時、「あれはなんでああなったんだろう」と暇つぶしがてら考えていると、以前見かけた
「あるしょうもないギャグが、ウケるときとウケないときがあるのは、そのギャグ自体が面白いかどうかではなく、その場の環境が面白いどうかによる」
というような趣旨で書かれた内容のツイートを思い出しました。ほんと書いてあるまんまの状況が起きていました。
「笑いは緊張からの解放」と言いますが、それをこんなしょうもなゲームで思い知るとは、、、それはそれでなんか悔しいですね。でも人間って”~してはいけない”って言われたらしたくなりますよね、ずるいです。
ただ空間自体はなにも変わらないのに、こんな仕掛けひとつでただの沈黙だけでも面白くなるなんて、改めて「ソフトのポテンシャルの高さ」を思い知りました。
もしかしたらルールひとつで、今あるつまらないものは一気に面白くなるのかもしれない。その上でこのゲームは「してはいけない」という制限により、逆にその行為を引き出しやすくなる類のもので、最もシンプルで効果的なものだなと思いました。
結局その日のゲームは新人ドライバー見習いの子が、なんでも笑ってしまうザコゲラだったおかげで、なんとか二位でした。危なかった。こんなしょうもなゲームに負けてたらそれこそ悔しすぎて、このnote書いてなかったと思います、ほんとに。はい。
というわけで、改めて笑いは環境、というか空気なんだという話でした。高校時代教室でただ豚キムチのカップ麺食ってるだけなのに、笑いが止まらなかったのをふと思い出しました。あれはきっとあの空気に笑っていたんですね。そんな視点でお笑い見てみると芸人の凄さが、よくわかるんじゃないでしょうか。
今年M-1を優勝したマヂカルラブリーはまさしく、ネタが面白かったのはそうなんですけど、あの時の空気を誰よりも掴んでたように見えました。空気を読むってのは人間関係を保つ秘訣だけに留まらず、うまく使いこなせればいくらでも人を笑かすこともできる術になるんですね。まさしく、人生におけるライフハックと言えるでしょう。とんでもない武器です、もはや恐ろしい、、、
てか「ところがどっこい」なんて人生で初めて使ったな。
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