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母豚の膣脱/子宮脱の原因は?
アイオワ州立大学のIowa Pork Industry Center(以下IPIC)が発信しているPigXというpodcastがあるのですが、今日(12/3)の配信(Season 5, Episode 7)では母豚の膣脱/子宮脱をトークテーマに取り上げています。
アメリカでは10年ほど前から膣脱/子宮脱(2つを総称してPelvic Organ Prolapse=骨盤臓器脱、以下POP)が問題になっていて、IPICが原因究明そして予防戦略の構築を目指してこの問題に取り組んできたという経緯があります。
Podcastで話された内容は、2021年にリリースされた論文の内容とそれほど相違はなく、目新しいものはなかったのですが、あらためてPOPについてまとめてみたいと思います(あくまで私の解釈。英語力に不足があるので間違っている部分があるかもしれませんがそこはご了承ください)。
以前からPOPには遺伝的要素が大きく関与しているのではとされていたのですが、現時点では発生に対して35%ほど遺伝的要因が作用しているのではないかとされています(以前はもう少し低いと見ていた)。35%という数字は「Moderate heritability(中程度の遺伝率)」としており、POPの発生は遺伝だけでは説明できないよ、他にも要因が関係してるんだよとしています。
では他の要因とは何か?
IPICはPOPの原因になるのではないかという因子をかたっぱしから挙げていき、それらに対して統計的処理を施します。その結果、POPの発生と関連が強かった(相関があると表現します)として以下の4つ因子を挙げています。
1.Bump Feeding Strategy
2.Water Treatment Method
3.Paranal Score
4.Body Condition
それぞれ簡単に説明すると、1.は妊娠後期の餌量の不足、2.は豚が飲む水を処理しているかどうか(どこから水を引っ張ってきて、どう処理しているか。もちろん処理している方がリスクは低い)、3.会陰部の腫脹の程度(1-3でスコア化、高いとPOPのリスクが高い。つまり予兆があるかどうかということ)、4.痩せている母豚は発生リスクが高い、ということになります。
さらにPOPについては膣内細菌叢の違いにフォーカスした研究も近年研究されています。結論を簡単に言うと、POP発生母豚群とPOP未発生群では腟内の細菌叢が違いますよということになります。
先に述べたようにPOPは遺伝的要因ですべてが決まるわけではなく、その他の要素(環境的要因)などが複雑に絡み合っており、さらに細菌叢の違いも影響しそうだというのが現在POPを巡る最新知見ということになります。
この複雑な相関関係を図にすると以下のようになるのかなと個人的には思っています。
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アメリカほどではありませんが、日本でもPOPは目にしますし、多いところは多いつまり農場差があるように感じています。上記の相関関係を頭に入れて現場レベルで対策可能な環境要因からまずはアプローチするというのが解決への近道かもしれません。