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宇宙人が来た

ある日、宇宙人が来た。
唐突に、来た。
でも、こっそりと来た。

僕は山登りの途中で道に迷ってしまった。
その上、足を少し痛めてしまった。
日が暮れる。
山で、日が暮れたら終わりだ。
充分な装備が無いまま真っ暗闇をうろつくより、周囲で幾分かでも居心地が良い場所を探して、そこで野宿した方がまだましだ。

「仕方ないなぁ。。」
とつぶやきつつ、実は内心少しウキウキしていた。
「こんなこともあろうかと」いつもバックパックの中に忍ばせておいたツェルトの出番が、やっと巡ってきたからだ。

ツェルトが張りやすいように、木があってしかも地面が平坦な場所を探してウロウロするが、なかなかそんな都合の良い場所はない。
知らないうちに、森の奥深くに迷い込んだ。
そしてついに、真っ暗闇に。
しまった。。
さっきまでのウキウキはどこへやら、僕は本当に焦り出した。
せめて月でも出てくれたら。。

「こんばんは。」
だしぬけに背後から声がした。
びっくりして振り向くと、そこには僕がいた。

変な汗が、どっと噴き出した。
「あ。。の。。どなたですか?」

「宇宙人です。」

「は!?」

「でも。。あの。。」

「あなたと同じ格好をしている。しかも、なぜ会話ができているのかと。そう、思っているのでしょう?」

あ、心を読まれている!これは、定番の。。

「テレパシー、じゃないですよ。そんな面倒くさいことしませんよ。第一、できませんし。」

宇宙人は、からからと笑った。

そういえば、この人、真っ暗闇なのに姿が見える。
それも、「いかにも宇宙人」って感じで発光しているのではなく、でも姿が見えるのだ。

「ああ、これは一種の投影装置で映している映像ですね。私の本体はもっと小さいです。1センチぐらいかな。本当の私は後ろの宇宙船の中に居ますよ。あ、いや、そこからじゃ見えません。たぶん。結構小さいですし。」

やはり、心を読んでいるではないか。

「この格好は、とりあえずあなたに合わせておけば無難かなと思って、選んだまでです。こちらの方が良かったかな?」

瞬く間もなく、「ニセ僕」の姿は、「いかにも」なグレイ型宇宙人に変わった。

「わっ!」

散々、今まで映像で見てきたはずの姿だが、目の前に現れると、やはり驚く。
しかし、そこは見慣れているからか、1分も経たないうちに急速に親近感がわいてきた。テレビでしか見たことのない俳優に街中でいきなり出くわしたときと同じ感じなのだろうか。

緊張が少しほぐれると、一気に聞きたいことが頭の中に溢れんばかりに浮かんできた。

「あの、宇宙人さん。どこから来たのですか? 名前なんかはあるんですか? それから、なぜ日本語が喋られるのですか?」

「やっと喋ってくれましたね。お答えしましょう。私がどこから来たか? これは、すぐには答えられません。隠しているのじゃなくて、説明が難しいのです。後で詳しく説明しますね。
それから私の名前は有りません。あなた方には名前というものがあるようですが、私にはありません。
なぜ日本語が喋られるか?これは簡単です。あなたもAiの技術を使った自動翻訳機というのを使っているでしょう?それの、もっと進化したものだと思ってください。」

「じゃあ、どうやって僕の心を読んでいるのですか?」

「それも、同じです。あなた方が使っているAiの、もっともっと進化したものがあれば、次に何が起こるかはわかるのですよ。生物の行動に限らずね。だから、心を読んでいるのではなく、「予測」しているのです。ただし、極めて高い精度でね。」

「信じられないなぁ。百パーセント当たってるから。」

「百パーセントでは無いですよ。あなた方のAiが必ず間違えるように、私たちの物も間違いはあります。予測を誤るのは、0.00000000・・・・・0000000001%ですけれどね。」

あまりにも0が続いたので、僕はスケールが解らなくなった。
そもそも、同じ発音が続くと0が0に聞こえなくなってくるものだ。

「さっき、Aiみたいなものって言ってましたけど、Aiと言うからには、学習させるんでしょう? どうやって?」

「この星には電波に乗ってあらゆる情報が飛び交っています。それを受信すれば簡単です。」

それにしても、学習だけでこんなに高精度の予測ができるものなのか。
一応大学で情報工学や電子工学を学んだ僕にはどうしても信じられなかった。たぶん、Aiとは言っても僕の知っているアルゴリズムとは全く異質の何かを使っているのだろう。もちろん、いわゆるハードウェアも。

「お次は。。」
黙り込んで、あれやこれやと考えている僕が面白くないのか、宇宙人がまた勝手に「予測」で喋り出した。

「『この星に何をしに来たのか?』そう聞こうと思っていたのでしょう?」

図星だ。
SF映画で宇宙人が来たら、一言目はそれに決まっている。
「君たちはどこから来た? この地球へ来た目的は何だ?」
これは、地球のAiでも簡単に予測できるだろう。

「そのとおりです。地球へ来た目的は何ですか?」

僕は、ちょっとSF特撮の主人公になった気分で尋ねた。
この頃になると、不思議なほど緊張はほぐれ、そんなことを考える余裕さえできてきていた。相手の、いや相手方のAi?の、丁寧な喋り方がそうさせるのかもしれない。

「観光です。」

え!?
大いに拍子抜けした。

「観光??」

「はい。あなたが心の奥で恐れつつ少し期待していた『侵略』とかではありませんよ。」

「この星は、そんなに面白いですか?」

「もちろんですとも。この星に限らず、宇宙を旅するのは本当に面白いですよ。何もかもが別世界ですからね。」

「そりゃ、そうだろうなぁ。」

「私は、これまでに122か星廻りました。」

まだ日本語に無い言葉を無理やり作ると、さすがに宇宙人のスーパーAiでもこうなるのか。

「そういえば。。」

「『あなたはどこから来たのか?』ですよね? それは、答えられないのです。なぜなら。。」

宇宙人はこちらに背を向け、空を指さした。その指先からレーザー光のような細い白色のビームが夜空を貫く。でも、この宇宙人の姿は幻影なのだから、光線も幻影なのだろう。

ビームは天の川の一角を真っすぐ指している。

「私はこの方角、距離約13,000光年にある星から来ました。ただし、あなたたちは私の出身星を認識していません。それはふたつの理由によります。理由のひとつは。。」

宇宙人はこちらに向き直り、指を1本立てて続ける。

「私の星は、あなた方にとって遠すぎるからです。あなたたちの技術では私の星はおろか、その太陽を識別することすらできないでしょう。私たちの星が属する太陽はとても暗いですからね。そしてもうひとつの理由は。。」

宇宙人は両手を軽く広げた。

「そもそも、私の星は約2000年前に人工的に作られたものだからです。太陽もです。それまでは、そこに存在しませんでした。つまり、今のあなた方には絶対に見えないのです。私たちの星が属する太陽が作られ、最初に発せられた光がこの星に届くのは、今から11,000年後だからです。」

太陽を人工的に作る?
その光が届くのが11,000年後!?
あまりにもスケールの大きな話に、僕は軽いめまいを覚えた。
というか、その光より速くどうやってここに!?

「当然、ワープ航法ですよ。」

もう、予測会話にも慣れてきた。本当にテレパシーみたいでなかなか便利だ。

それにしても、ワープ航法は実現可能なものだったのか!
ということは、人類もいつかは恒星間飛行が可能になるのか!
そうだ、この宇宙人に教えてもらえば!

「空間を曲げて移動します。理論は簡単ですが、どういう仕組みになっているのか、私も詳しい事は知りません。」

ガクっ。。。
まあ、多くの人間が、自動車の動く仕組みを全く知らずに運転しているのだから、そんなものなのかもしれない。。

「ああ、そういえば、ここに来た目的がもうひとつあるのです。というか、できてしまいました。」

「できてしまった?」

「ええ。実は、旅の途中でちょっとハプニングがありましてね。大きく迂回路をとった関係で、エネルギーが足りなくなったのです。このままでは、帰れません。」

「それで、エネルギー補給に?」

「そういうことです。」

「でも、ワープエンジンのエネルギーだよね? 随分と大きなエネルギーが必要なんじゃ? もしかして、プルトニウムとかウラニウムとか。。」

「冗談を言ってはいけません。」

宇宙人は、からからと陽気に笑った。

「それでは、いくら集めたって月にさえ到達できませんよ。もっと、大きなエネルギーが必要です。」

「それって、もしかして。。」

「太陽です。太陽の質量を全てエネルギーに変えれば、私はなんとか家に帰れます。」

恐怖と絶望で、目の前が、真っ暗になった。
頭が、ズキズキ痛み出した。
宇宙人は構わず説明を続ける。

「当然、距離が延びれば、もっと大きな太陽が必要になりますね。たとえば。。」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。。」

「はい?」

「じゃあ、キミたちは旅行の度に太陽を。。」

「いや、人工太陽を作ってそれをエネルギー源に使う方法もあります。現に自分の星を出発するときは、これを使います。ただ、かなり高くつくのです。ですから。。」

「人工太陽で、近くの太陽まで跳躍して、その先は次々と太陽を消しながら跳ぶ。。」

「そういうことです。」

ううっ!!
頭痛が酷くなる。

「ご心配は解ります。昔は良かったのですけどね、最近は猫も杓子も旅行するようになって。。今のあなた方にはまだ見えていないでしょうが、銀河系内の恒星はもうかなり少なくなってきていますよ。私のように昔から旅行だけを楽しみにしている者は、本当に迷惑しているのですよ。」

いや、そういう心配じゃなくて!

「じゃあ、私はそろそろ行きますね。あなたとお話できてよかった。後で仲間に自慢できますよ。あ、それから。。」

宇宙人(の映像)は、一旦向こうを向いて去りかけ、振り返った。

「あなた、さっき人類もいつかワープ航法を、って思ったでしょう? それ、やめておいた方がいいですよ。私の本体は1センチです。宇宙船も小さいです。それでも、1万5千光年の跳躍に太陽ひとつ必要です。あなた方がもし、そのサイズでワープ航法したら、同じ跳躍に何十個もの太陽が必要になります。はっきり言って、宇宙の迷惑ですから絶対やめてくださいね。
もっとも。。」

宇宙人はにっこり笑った。

「私の予測では、太陽が無くなるから、あなた方は99.999999….9パーセントの確率で消滅しますね。だから大丈夫ですね。さようなら。」

なんて身勝手な奴!
僕は、恐怖よりも怒りで震え始めた。
目の前のひ弱そうな宇宙人に飛びかかろうとした。
が、当たり前の如く、宇宙人の映像は目の前からフッと消えた。

周囲は、元の真っ暗闇に戻った。
月は出ず、空には天の川が見えた。
あの美しい星々を、娯楽のために、毎日次々と猛烈な速さで「消費」しているやつらがいるのか!
そして、僕たちの太陽が!!

こうしちゃいられない!

僕は夢中で駆け出した。
一刻も早く、誰かに知らせないと、と思った。
よくSFとか特撮で、宇宙人にでくわしたことを人に喋って異常者扱いされるのを観て、
「ばかだな、喋っても信じてもらえるわけないのに。喋らなきゃいいのに。」
と思っていたが、実はこういう心境だったのかと、やっとわかった。
人に知らせて何とかしてもらおうなんて考えている余裕はない。
ただ、自分ひとりだけで抱えているのが重すぎるのだ。
だから喋るのだ。
そんなこと、今解っても何にもならないのだが。

星明かりしか無かった。
おまけに、足を痛めていたことをすっかり忘れていた。
駆け出して10メートルも進まないうちに、
鋭い痛みが右膝を襲った。
右膝の力がガクッと抜け、こけた。
僕が今日こける確率は0.01%だったが、こけてしまった。
走るべきではなかった。

こけるとき、前に出していた左足から先にこけた。
左膝のいちばん嫌なところに0.001%の確率で、石がめり込んだ。
「痛ってーーーーーっ!!!」

あまりの痛さに、僕は左膝を押さえながら地面を転がり回った。
横がちょっとした崖になっていることを、僕は知る由も無かった。
体が一瞬、軽くなった。

(落ちる!)

反射的に、手を伸ばしたらしい。
僕は崖の縁を、両手でしっかり掴んだ。
だが0.0001%の確率で、たまたま掴んだ場所が悪かった。
右手で掴んだのは、木の根のようなものだった。
先が細くなっていて、するりと簡単に手から抜けた。
利き手の左手は、固い岩をしっかり掴んだと思ったが、力がかかるとゴロっと動いた。
重い、大きな石だった。
僕は、石と一緒に急な斜面を滑り落ちた。
0.00001%の確率で、嫌なところに大きな岩が突き出ていた。
0.01%×0.001%×0.0001%×0.00001%の不運が重なり、僕は頭を岩にぶつけ、気を失った。

規則的な電子音が聞こえる。
何の音だろう?
目を開けようとするが、なかなか開かない。
瞼が、とても重い。
目を開けるのって、実は大変なんだな。。

少しずつ、少しずつ、瞼が開く。
光が、細い線になって見えた。

電子音のリズムが変わった。
「気が付かれましたね?」
女の人の声が聞こえる。
誰だろう?
心地よい声だ。
「今、少し周りを暗くしますね。ゆっくり目を開けてください。でも無理をしないでくださいね。」

言われるまま、ゆっくり目を開ける。
かなりぼやけているが、目の前に女性が見える。
その手前に、何か文字が見える。

「自分の名前が、言えますか?」

名前・・名前・・何だっただろう?

(思い出せません)
そう喋ろうと思ったが、口が動かなかった。

「大丈夫。そのうち、思い出せますよ。焦らないで。」
女性はにっこり微笑みながら静かに喋りかける。
声が出ていないのに、会話が成り立っている。
なぜだ?
心を読まれている?
待てよ、この感覚どこかで。。

(ここは、どこだ?)

「ここは、13652病院です。あなたは35年前、山で滑落し意識を失い、この病院に搬送されました。そして今日、意識を取り戻されたのです。おめでとうございます。」

35年!?
あれから、35年経ったというのか!
山で滑落。。そうだ、だんだん思い出してきたぞ。
僕は宇宙人に会って。。

あ!

「あの、ここはどこですか?」
ひどいしわがれ声だけど、声が出た。

「13652病院です。」
「そうじゃなくて、ここは、地球ですか?」
「もちろん、13652病院は地球の日本国にあります。」
「地球は、無事なんですね?」
「あなたは今地球にいますよ。混乱されているようですね。無理もありません。ゆっくり休んでください。もし何か観たいものがあれば、お申し付けくださいね。」
「観るって。。テレビとかインターネットとか。。みたいなものですか?」
「そうですね。立体映像ですよ。今あなたがご覧になってるのも、立体映像ですけれど。」
ああ、この女性はAiなのか。
そうか、そりゃそうだよな。

「じゃあ、ニュースみたいなもの。。」
「かしこまりました。本日のトップニュースからどうぞ。」

女性の姿が消えて、別の女性が目の前3メートルあたりに現れた。

「まさに、本日は記念すべき日ですね。」
レポーターが横から話しかける。
女性は、笑顔で応えた。
「はい、皆様もご存じの通り、きっかけはコレでした。」
「コレがそうですか。一見何の変哲もない石に見えますが。」
「そうですよね。遠目に見ている限り、普通の石に見えます。最初に発見した登山者も、ただ横を通り過ぎただけでは気が付かなかったでしょう。」
「ところが、幸いにもここでキャンプをしようとした。」
「そうなんです。当時はキャンプが大流行していましたからね。テントを張って、かまどを作るために適当な石を探していたのです。で、丁度良い大きさの石を見つけて持って行こうとすると。。」
「重くて持ち上がらなかったと。」
「最初は隕石だと思ったそうです。それで、鉱物に詳しい知り合いに知らせて現地調査に来てもらったら、驚愕の事実が判明したわけです。」

まだぼやけている目で、ぼーっとニュースを観ていた僕は、はっと目を見開いた。
あの石だ! 僕が谷底に落ちるきっかけになった、あの石!
咄嗟に左手で掴んだ、あの石!!
暗闇だったから色や模様は解らなかったが、生と死の狭間で掴んだあの石の独特の形や大きさは掌の感触がしっかり覚えている。

「それにしても、まさか宇宙船とは夢にも思わなかったでしょうね。アマチュア鉱物学者の太田さんでしたか、驚いたでしょうね!」
「はい、拡大してみるとこんな具合に。。ハッチらしきものもあります。35年前は世界を揺るがす、大ニュースになりました。」
「そりゃそうでしょう。そして中を調査すると、出てきたわけですね。地球外生物が。」
「太田さんでは手に負えないので、国立科学研究所に持ち込まれたわけですが、そこで慎重に綿密に調査されました。幸か不幸か、宇宙船の内部を調査したときには、すでに宇宙生物は絶命していたわけですが。」
「なぜ死んだのでしょうか?」
「状況から推測するしか無かったのですが、宇宙船はおそらく何らかの理由で墜落し、地面に激突したのでしょう。宇宙生物は極めて大きな加速度を受けた形跡があり、それが死因になったと思われます。また、後の調査でこの宇宙船には外部からの加速度を緩和する機構がついていることが解ったのですが、恐らくこれも正常に働いていなかったと見られています。」
「うーん、幸か不幸かとおっしゃいましたが、この宇宙生物がもし生きていたら、地球外生命体とのファーストコンタクトとなったかもしれないだけに、ちょっと残念な気もしますね。」
「そうですね。姿形は少しグロテスクですが。何者も外見だけで判断してはいけませんからね。」
女性の手前に宇宙生物の立体映像が浮かんだ。
ダンゴムシをもう少し平たくしたような白い体。下面は無数の足がついていた。僕は吐きそうになった。

「これが奴の本当の姿か。何が残念なものか! 生きていたら、今頃太陽も、この地球も消えて無くなっていたんだぞ!」
僕は、立体映像であることも忘れて、目の前のレポーターに毒づいた。

「そして、ここからがいよいよ本題なのですが。」
「はい。宇宙生物とのファーストコンタクトは叶いませんでしたが、この生命体は大きなお土産を遺してくれました。」
「宇宙船そのものですね。」
「そうです。人類の叶わぬ夢と思われていた、あのワープ航法装置を搭載していたのです。」
「まさにSFの世界ですね。」
「この僅か20㎝足らずの宇宙船に収められたワープ航法装置。これの解析だけに、約20年の月日が費やされました。そしてさらに研究を進めること15年。ついに人類自ら、ワープ航法装置の開発に成功したのです!1㎝の宇宙生物ではなく、実際に人間の乗れる、ワープ航法の宇宙船です。」
「これを使えば、恒星間航法が可能になるわけです。素晴らしいですね。私もまさか自分の生きている間に、恒星間航法が可能になるとは思ってもいませんでした。」
「まだ、やっと試作機ができたばかりですが、実用化は時間の問題ですね。磯村さんも是非バーナード星からレポートを。」
「いやー、そう願いたいものですね。」

「ちょっと待って!」
僕は、立体映像に叫んだ。
「そんなものを動かしたら、大変な事になる! ちゃんとデメリットも伝えろ! わかってるだろ! 作ったんだから解ってるよな! とんでもないエネルギーを必要とすることが。そしてそのためには。。」

いくら叫んでも無駄だった。
立体映像。
どうせこの人たちも、Aiが作った、ただの虚像なのだろう。
解説者にレポーター。
ニュースも、僕が気を失った35年前に合わせて自動的にカスタマイズされたものなのだろう。

何万年か経てば、銀河系の星々が目に見えて減っていくのが、この地球からも観測できるはずだ。

でも、それよりもっと酷いことが、今、ここから始まろうとしているのだ。

僕は、「幸か不幸か」人類を守った。

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