美しい獣
羽毛のような指先は
眠る女の瞼を撫で
興味と恐怖の振り子に揺られている
たった一つの真実を確認するため
美しい獣は自らの制御に集中する
気配などとうに知っていた
そんな無粋は閉じた瞼の裏側に
美しい獣は誰にも知られていないように
私の瞼に重なる指先を優しく滑らせた
まるで壊れ物に触れるように そっと
泣黒子とまつ毛を往復しては
形を覚えるように ほんの少し怯えたように
何度も 何度も 撫でていた
まるで接吻のようだった
美しくとも 獣は獣
目覚めない女に業を煮やして背中をゆする
夢心地の視線の先には
伏し目がちにこちらを覗く若く美しい獣
昔 この景色を見たことがある
この横顔 体躯の線
あの恐ろしく美しい獣と姿が重なった
あぁ
私はまた夢を見る
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