視聴者投稿創作怪談『海へ』
これは、私の怪談を扱う配信に、視聴者の方より投稿されたお話です。
命の起源が海からやって来たのなら、それらは海に回帰していくのが自然の定めなのだろうか。
私はある日、私が住んでいる町の浜辺に遺体が打ち上がっていたのを見つけた。
腐敗と損傷が酷く、私は最初それが人の遺体である事に気がつけなかった。
後で聞いた話だと、その人はこの町に住む会社員であり、入水自殺したのではないかと言われている。
遺書は無く、妻子を遺して亡くなった事から、様々な噂が囁かれた。
私はそんな益体もない噂話に興味なんか無かったが、何か嫌な予感が胸の奥に渦巻いていた。
このまま何事もなければただの奇妙な事件で終わったのだが、同じ浜辺に第二、第三の遺体が見つかったので、警察は事件性を見出し捜査を始めた。
だが、捜査線上に犯人が浮かんでくる事はなく、最終的に三人とも自殺であると判断され捜査は早々に打ち切られた。
今の私には分かる。間違いなく彼らは自ら海に還っていったのだ。
三人目の遺体は私の友人だった。
彼は居なくなる直前にこう口にしていたのだ。
「最近海を見てると誰かに呼ばれてるような気がするんだ」
ああ、きっとそうなのだろう。
友人は、彼らは呼ばれたのだ。
私は海を眺める。海原は穏やかに波打ち、ある種の荘厳さを称えている。
還っておいで
そう呼ばれると私の胸の奥から、なにか温かいものが溢れ出した気がした。
涙が一筋流れる。あの海の底こそが私の本当の還る場所なのだと理解する。
潮騒と波の感触が私と溶け合ってゆく。
深く、深く、どこまでも沈んでゆき、全てが私自身となる。
光すらも届かない世界。無限に広がる世界はいつまでも安らかだった。
ペンネーム:狂乱のなまこ
2023/12/9配信 https://youtube.com/live/Q9KdpuEu_Os?feature=share
恐怖のご提供フォーム https://forms.gle/moSxg7vgMFYqx7r37
※ご投稿内容に改行や誤字脱字修正等の加筆をしていることがあります。
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