ハイカムシカ  日常+空想

なんとなくのもやもやを記事にしています。更新は不定期です。読んでもらえると嬉しいです。

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マガジン

  • 見習い悪魔の登場する記事はこちら

    この世界には、悪魔学校、天使学校、キューピッド学校等がある。それぞれ立派な悪魔、天使、キューピッドになるために子供?たちが学んでいる。普通、悪魔の子は悪魔学校に入るが、他校への編入も可能。 主人公にあたる“見習い悪魔”は、悪魔学校で学んでいて、漠然とそもそも“悪魔”とは? あるいは“悪”とはなんだ?と悩んでいる。悶々として図書室で読書することが多い。図書室には司書のドロイドがいて、彼の悩みを知ってか知らずか、データベースから気まぐれに知識を呼び出して、彼に与えてくれる。それは、ますます彼を悩ますことも。。

  • ハイカムシカ文庫(短編ふう)

    これまで投稿した、自身や知人、知人の知人の体験話をもとにした(短編ふう)の棚です。短編ふうは、最初の計画と違い、ほぼ実際の出来事をなぞったエッセイ的なものもあれば、ほぼ創作に近く妄想が広がってしまったものなど、いろいろできてしまいました。50記事後のカテゴリー分けを目指します。

  • 夏の中 断片小説

    暦の上では秋だというのにN市は長い残暑の中にある。N市周辺の鉄道ダイヤは頻繁に乱れていた。対策に派遣された気象病体質の鉄道管理局員は、やがて、夏が終わらない本当の理由とダイヤの乱れを戻す方法に辿り着く。終わりそうにない残暑の中、鉄道、データセンターの職員、吹奏楽部員、歌姫。それぞれの断片がつながり、答えが浮かび上がる。

  • ハイカムシカ文庫(南館)

    読んで癒されたり、笑えたり、いつか読み返したい素晴らしいクリエーターたちの記事を集めた棚です。

最近の記事

  • 固定された記事

(短編ふう)月の説話 と 見習い悪魔

今晩はスーパームーンです。 というので、昨夜は、外へ出て、月を見上げてみた。 すでに20時を過ぎていたので、スーパーという程、月は、大きくは見えず、いつもとさして変わらない大きさだった。 銀盆のような白く透明な輝きとは違う、いくらか黄味がかった反射をしていた。 本当だ。確かにウサギが餅つきをしているように見える。 と、大人の言葉を確認したのは何歳ぐらいの頃だったろうか? 同時に、 「老人の横顔にも、美女の横顔にも例える国があるのですよ。」 とも教わり、そう見ようと苦心

    • (短編ふう)見習い悪魔 雪崩に遭う

      2階まで吹き抜けた壁一面の書棚を埋め尽くしていた仏典類が、ドドッーと崩れ落ちてきた。 経典が蛇腹に開いて、荒ぶる龍のように襲い掛かってくる。 ほどけて落下する巻物は、暴風にうねる海原のようだ。 長年に積もったらしい塵が、濛々と立ち込めるのは、軍馬の立てる土煙のように視界を濁らせる。 竹簡や木簡の、繋いでいた紐がちぎれて、煙の中で、次々、爆竹のように弾けた。 腐りかけた葉の匂いが混じっているのは、ターラ樹の葉(貝葉)に違いない。紙が普及する以前、ブッダの説法は、貝葉に鉄筆で文字

      • (短編ふう)見習い悪魔 仏教に挑む

        見習い悪魔は、大仏の破壊された空洞が残るバーミアン渓谷の写真が記憶に残って仕方がなかった。(関連記事 下記リンク『”ヨブ記”と見習い悪魔』) 「なぜ、人間は岩山に大仏を彫るのか、ですか?」 司書ドロイドに尋ねると、調べてみてはどうですか? と返された。 図書室の一画に誘われて、これなんかどうです、と一冊の本を渡された。 いつも通りガランとした図書室で、3人ずつ向かいに6人掛けの閲覧机をひとりで占領してページをめくり始める。 ちょっと難しそうだけど読めるかな? 紀元前2

        • (短編ふう)見習い悪魔 と 落第キューピッド

          「何をしているの?」 見習い悪魔は、野原に向いた庭でなにやら作業している司書ドロイドを見つけ、窓から首を出して尋ねた。 「虫干しです。本が劣化しないように、陽に当てて、風を通して、湿気やカビから守っているのです。」 芝の上に広々と広げた真っ白な綿のシーツの上に、本を広げていく。 置いた傍から、やわらかい風がパラパラとページをめくるが気にしない。 見習い悪魔は、窓の桟をよじ登って、庭の側へ飛び出た。 近寄れば、からりとした秋の陽と本たちの乾いた紙の匂いが鼻の先で混ざった。 なん

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        (短編ふう)月の説話 と 見習い悪魔

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        • 見習い悪魔の登場する記事はこちら
          7本
        • ハイカムシカ文庫(短編ふう)
          20本
        • 夏の中 断片小説
          16本
        • ハイカムシカ文庫(南館)
          30本

        記事

          (短編ふう)見習い悪魔 ハロウィーンに惑う

          ハロウィーンの起源は、古代ケルト人の〈サウィン祭〉に遡るらしい。 8世紀、ローマ教皇グレゴリウス3世は11月2日万霊節(=死者の魂に祈る日)の前日、1日を万聖節(= 聖人の日)と定めた。 聖人(1日)と死者(2日)、それらを祈るの前日10月31日、 All Hallows' Eve(=万聖節イブ)と、時期を同じくしたケルトの〈サウィン祭〉が、キリスト教のケルト地方伝来によって融合し、今の仮装の儀式につながったらしい。 ケルト歴において、10月31日は、夏の終わり、11月

          (短編ふう)見習い悪魔 ハロウィーンに惑う

          アイドル。元相撲部を走らす

          久しぶりTVに映った彼女は、相変わらずの弾けるような笑顔に面影があるも、だいぶふっくらとしていた。 35年近く前の “あの日” を思い出す。 ずっと忘れられない、彼女と繋がる一場面。 その日、私たち営業5課は、5人全員、主力取引先の駅前デパートのイベントに駆り出されていた。本社とパイプの太い課長が、秋キャンペーンの宣伝モデルをひっぱっりだすことに成功した一大イベントだった。キャンペーンモデルは当時のトップアイドルのひとりで、キャンペーンソングは歌のベストテン番組で上位にラン

          アイドル。元相撲部を走らす

          (短編ふう)キュービッドは天使じゃない

          誤解していた。 キューピットは天使と関係ない。 キューピットが成長して天使になる、ということはない。 マヨネーズのロゴとも関係ない。 こちらはKewpie。 キューピー人形のように誰からも愛されるような商品に育てたいという願いからキユーピーマヨネーズとなったらしい。 元祖のキューピー人形は、アメリカの女性漫画家、ローズ・オニールが、 「ローマ神話に登場するCupidは、人々のこころにいたずらをするけれども、わたしのKewpieには愛だけを運んでほしい…。」 と、創作した

          (短編ふう)キュービッドは天使じゃない

          気象通報の魅力

          昨日、10月2日は、東京都心は朝から日差しがたっぷりで、南風とともに気温がぐんぐんと上昇し、午前10時50分までの最高気温は30.6℃に達した。 10月に都心で真夏日を記録するのは2021年10月2日以来、3年ぶりだそうだ。 ここ、横浜市でも30.0℃に達した。 それでもカラリと秋を感じる過ごしやすさだった。 クーラーをつけっぱなしで就寝した暑さに比べれば、開け放した窓から入ってくる夜風で、タオルケット一枚では肌寒さを感じるほどになった。 今朝は、遠くの台風が運んでくる

          (短編ふう)「ヨブ記」と見習い悪魔

          旧約聖書に記されたヨブの物語「ヨブ記」に悩む。 ヨブは非常に敬虔な人物で、家族や財産に恵まれていた。神を信じ、悪から遠ざかって生活していた。 ある時、神とサタンが会話する。 「ヨブがお前(神)を信じているのは、彼がお前に祝福され、何の困難も経験していないからだ。苦難に遭えば、今度はお前を呪うだろう。」 「そんなことはない。ヨブの信仰は本物だ。」 「ふん。では、試してみようか?」 「よかろう。」 「では。」 そう言って、サタンはヨブの子供たちを全員事故で奪う。 更には、ヨ

          (短編ふう)「ヨブ記」と見習い悪魔

          (短編ふう)四門出遊と見習い悪魔

          最近、〈病い〉や〈老い〉について、考えることが多くなった。 それで、 東門を出る時、年老いた人に出会い、人は皆老いるという〈老苦〉を知り、南門を出た時には病気に苦しむ人に出会い〈病苦〉を知り、西門では葬列に遭遇して、人は皆、いずれ死ぬのだと〈死苦〉を知って、最後には北門で、修行者に出会って出家を決意した、という「四門出遊《しもんしゅつゆう》」の釈迦の話を思い出すのだが、 〈老苦〉と〈病苦〉はいいとして、ふたつのあとでは、〈死苦〉はむしろ、それらの〈苦〉から解放されるイメージ

          (短編ふう)四門出遊と見習い悪魔

          断片小説|夏のあと 魔法使いの末裔

          この断片は、「夏の中」という15個の断片とつながっています。ただ、この断片のみでも楽しんで頂けると思います。文末に「夏の中」へのリンクをつけています。 夏のあと サワムラは本部長室で顛末報告をしていた。 「結局、音楽が時間のズレを戻して夏が終わりました、ということで、収拾がついたわけか?」 「表向きは。」 落ち着いて答える。 「中央鉄道の方は、それで調査を終えているのか?」 「はい。例のちょっと腹の読めない担当も、既に本店に戻りました。」 「…。」 「あまり

          断片小説|夏のあと 魔法使いの末裔

          介護の風景

          いろいろな風景がある。 もちろん〈やさしい〉こころの風景がはじめにある。それでもひとは人格も性格も不安定な生き物だから、いつも〈やさしく〉いられるわけではない。忍耐の風景もある。 忍耐を必要としないくらい、いつも〈やさしい〉気持ちが上回っている状態でいられたら…。 満潮がゴツゴツした岩を覆い隠してしまうように。 先日、歯科の待合室でのこと。 互いに80は越えているだろう、と見える老夫婦が支え合ってやってきた。 夫が妻に甲斐甲斐しく付き添っていた。 夫人の方は、おそらく病の

          炭酸の泡の向こう

          炭酸の泡の向こうに、昭和レトロな少年時代の夏がある。 父も母も若く、祖母も元気だった。 店の前には大きな欅があった。 樹の下には、背が看板の赤い長椅子があった。 集落を横切る幅4メートル程度の通りに面していて、畑仕事終わりの男たちの溜まり場だった。 出窓のような場所があって、たばこなどはそこで売る。 お姉さんは時々そこにいた。 出窓の横から大きな引き戸が4枚ほどあって、それが店の入り口だった。 普段は閉まっていて、入るには、ガラガラとひいて、 「くださーい。」 と大きな声を

          (短編ふう)”カッコいい”の正体 麦酒薫る 

          7月のよく晴れた平日。 11時オープンのビアレストランに、一番乗りで入った。 例年、正午過ぎまでかかる年に一度の健康診断は、今年に限って1時間ほど早く終わった。 バリウム検査の後は水分をしっかりとらなければならないし、前日の9時から、食事をとれない。 なので、お昼はキリンシティーでとろう、と端から決めていた。 キリンシティーとは、キリンホールディングス傘下のビアレストランである。 敢えて注釈すると、キリンホールディングスとは、麒麟麦酒株式会社を祖とした、酒類から、飲料、

          (短編ふう)”カッコいい”の正体 麦酒薫る 

          〈小説〉夏の中 連結版(断片1~15 完結)

          (あらすじ) 暦の上では秋だというのにN市は長い残暑の中にある。N市周辺の鉄道ダイヤは頻繁に乱れていた。対策に派遣された気象病体質の鉄道管理局員は、やがて、夏が終わらない本当の理由とダイヤの乱れを戻す方法に辿り着く。終わりそうにない残暑の中、鉄道、データセンターの職員、吹奏楽部員、歌姫。それぞれの断片がつながり、答えが浮かび上がる。 1.プロローグ データセンター N市を見下ろす山の鬱蒼とした森林の中にそのデータセンターは建設されている。 最大限に風景との調和を重んじて設

          〈小説〉夏の中 連結版(断片1~15 完結)

          断片小説|夏の中 断片15 エピローグ

          長い影がホームに伸びている。 井戸のつるべのように早く陽が落ちるようになった。 「すっかり日が短くなりましたね。」 ナナセが見上げた。 逆光になったアマノの上に、オレンジの陽に端を染めた雲が、底を黒くして浮かんでいる。 「…アマノさんも、本当に音楽が夏を終わらせて、ダイヤを元に戻したんだ、と思いますか?」 今では奇跡と騒がれているコンサートを思い返す。 高速化し過ぎた社会は、時間の中に情報を詰め込み過ぎだ。 時間の中に、これでもかとこれでもかと仕事を詰め込む。 アマノに

          断片小説|夏の中 断片15 エピローグ