(短編ふう)見習い悪魔 雪崩に遭う
2階まで吹き抜けた壁一面の書棚を埋め尽くしていた仏典類が、ドドッーと崩れ落ちてきた。
経典が蛇腹に開いて、荒ぶる龍のように襲い掛かってくる。
ほどけて落下する巻物は、暴風にうねる海原のようだ。
長年に積もったらしい塵が、濛々と立ち込めるのは、軍馬の立てる土煙のように視界を濁らせる。
竹簡や木簡の、繋いでいた紐がちぎれて、煙の中で、次々、爆竹のように弾けた。
腐りかけた葉の匂いが混じっているのは、ターラ樹の葉(貝葉)に違いない。紙が普及する以前、ブッダの説法は、貝葉に鉄筆で文字