短歌「樹の夢」
千年の大樹の夢がわれならば目覚めて木霊なにつぶやかむ
「私が夢を見ているのではない。私自身が誰かの夢なのだ」誰の文章だったか覚えていないのだが、こんなことばを読んだ覚えがある。仮にそうだとしたら、私はいったい誰の夢なのだろう。
冬の間、木々はいかにも眠っているように思われる。眠っているなら夢を見ることもあるだろう。木々の見る夢はどんな夢だろう。立春の前後のこの時期は、これから迎える春の夢を見ているような気がする。
ところで、私の人生が仮に樹齢千年の木の夢だとしたら、目覚めたとき木はどんなことを思うだろうか。「楽しかった」とは思われそうにないが、せめて「ああ、つまらん夢だった」とつぶやかれないようにしたい。