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俳句「死に疎し」
白繭を白装束に蚕死す
小学生のころ蚕を飼ったことがある。父は、私に蚕のことを勉強させたかったのだろう。どこからか蚕を手に入れてきて、世話をするように言った。桑の葉を食べるときの音や、作られた白い繭の姿は、おぼろげながらも記憶の中に残っている。この繭の中の蛹を殺してから絹糸にするのだと父から聞き、子ども心にも、絹糸をとるために蛹を殺すなんて……と思ったものだ。
残酷な、というのは、それに携わらない者の言う草だろう。人間は分業により多くのことを効率よく成し遂げられるようになった。しかしその結果、自分が身に纏うもの、口にするものが生まれる過程にある動植物たちの死に疎くなってしまった。と、これも自分の手を汚さない人間の言い草か……。