義弟のこと㉑
・私が家内と結婚した時(26年前になるのか、いやはや)、義弟はまだ独身だったが、すでに家業の農業を立派に継いでいて、お義父さん、お義母さんに代わって一家の大黒柱だった。
・私たちの結婚をとても喜んでくれて、結婚前から「兄貴、兄貴」と呼んでなついてくれて、一緒に実家のキッチンで一緒に酒をよく飲んだものだった。
・数年後、彼は結婚し、結婚式に参列したらその場で急に乾杯の挨拶を頼まれてとても驚いたが、何とかやっつけた。以前から、「兄貴、乾杯やってよ」とは言われていたのだが、主賓は別にいて、ただの乾杯担当だと思っていたら、何のことはない、主賓だったのだ。
・俺で良いのかよ、と思ったが当日に断るわけにいかない。で、何やらほざいて乾杯に持ち込んだのだが、おかげでまだあちらの親族になじみがなかった私の存在と顔を売り込むことができた。その後、法事などで親族の皆さんと顔を合わせるたびに、「ああ、あのE君の結婚式の乾杯の!」と言われることがよくあって、コミュニケーションが効率化した。ありがとう。
・彼のところにはすぐに子供ができ、我々夫婦には、母の病気介護などの事情がありなかなかできず、ようやくできたのが結婚して10年目。義弟の3人目の子供と同じタイミングになった。
・私の奥さんは妊娠が原因なのか甲状腺の病気を発症し、出産後もその影響で体調が回復せずに入退院を繰り返し、私も一人で乳飲み子を抱えて仕事を続けることができず(当時まだ会社勤めのコピーライターだった)、結局、息子が2歳半になるまで、母子で実家でお世話になることになった。
・義弟も彼の奥さんもとても心配してくれていて、息子の世話もよく焼いてくれていたのだ。もちろん、お義父さんもお義母さんもだが。それが、義弟の態度が急変したのが、息子と奥さんが実家に世話になって2年半がたった時のことだった。
・「兄貴、良い加減にしてくれないか!このままでいいと思ってるのか」。激高した義弟に実家の台所でいきなりこう言われたときは驚いた。今まで全くそんなそぶりは見せなかったので、なんで急にそんなことを、という思いしかなかった。
・「このまま子供を実家に預けっぱなしでは今後の成長に差し障る」ということかと思ったが、後々それだけではなかったのではないかと思えるような事実が次々と明らかになってくるのである。
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