義弟のこと⑬

・どうしたんだよ、義弟。もっと話をしようと言ったじゃないか。お義父さんのこれからのことや、我々の子供たちの将来のことや、いろんなことを語り合いたかったよ。奥さんにも愚痴っぽいことを言ってしまった。
・「彼の病状がここまで悪くなっていたなら、早めに知りたかったな」。そうしたら奥さんはちょっと強い口調で。「私だって知りたかったわよ。でも知らなかったんだからしょうがないじゃない」と言い返してきた。
・このところお義父さんの容態が安定しないこともあり、奥さんは毎週のように実家を訪れていた。義弟が入院してからも何度か来ていたはずだが、義弟の嫁とは話すことはなかったという。
・義弟は、最終的にはお義父さんと同じホスピスに入り、そこで亡くなるわけだが、奥さんが義弟の病室を見舞ったときも、そこには義弟一家の姿はなかったという。
・タイミングの問題もあるとは思うが、どうなんだろう。私も義弟がそこに入ってから2度見舞いに行ったが、その時も義弟家族の姿はなかった。2度目に行ったと、奥さんの叔母がいて少し話をしたのだが、彼女も義弟家族が見舞いに来ているのを見たことがないと言っていた。
・「懸命に闘病中の義弟を支える家族」というイメージは、どうもこちらが勝手に考えていた虚像だったのかもしれない。そう思い始めていた。一度奥さんに、義弟の話を聞いて、どんな状況だったのかを確認しておかなければならないなと思った。


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