甘く香る正体は
「なんか甘い匂いしない?」
そろそろ閉店準備を始め出す夕方頃。
レジで隣に立つ”先輩(推し)”が僕に言った。
「『プーさんのハニーハント』みたいな…
ハチミツの匂いがする。え、しない?」
僕は某夢の国に行ったことが無いので分からないが、実は先輩が言う《甘い香り》には心当たりがある。むしろ心当たりしかない。
「ハチミツですか?何ですかね。でもマスクをしていても意外と分かるものなんですね。」
「ハチミツ食べた?」
「食べてません(笑)」
実は今日、わたしは香水を付けている。
「あの…一応食べ物を扱う店なので、パッケージされてるとはいえ強い匂いのものは付けないようにしてたんですけど、ハンドクリームとか。
でもお菓子みたいに甘い香りなら、商品から似たような匂いしますし、そこまで悪影響無いかなって。
自分に分かる程度にしか付けてないんですけど意外と分かるんですね。」
レジに並んで立つと、距離が近くなるせいかもしれないなぁと思ったりした。
「これハンドクリームの匂いなんだ!」
「あ、ハンドクリームでは無いです!
あとハチミツからはかけ離れてると思うんですが…」
言われてみれば確かに、甘さがハチミツっぽくある。だが使っている香水は全然ハチミツとは遠い。
「え〜なんの匂い??」
「なんでしょうね〜(笑)」
「メープル??」
「全然違います。」
「メープルって木から取れるらしいね。なんだっけ。」
「楓…ですか?うろ覚えですけど。」
「それだ楓だ!今の子はよく知ってるね〜。」
「カナダの国旗が赤い葉っぱじゃないですか。」
「葉っぱ?あー!カナダメープル有名だもんね。
楓ちゃんってメープルちゃんなんだね。」
「学校の友達に楓ちゃんって子がいました。」
「メープルちゃんだね。で、結局何の香りなの?」
「甘くていい香りですよね。さあ何でしょうね!」
たまたま僕が使っていた香水の香りは、
先輩がさっきまで飲んでいた紙パックジュースの味とよく似た香りだったのだ。
だから、なんか恥ずかしくて濁した。
ハチミツはハチミツでいい香りなので、
僕はいっそ"蜂蜜の香りの可愛い後輩"になってやろうと思った。
今度シフト被る時も付けようっと。
追記
香りには好き嫌い好みがある為、内心「甘ったるい香りが嫌い」だったらどうしよう…!と不安だった。
……でもお菓子みたいに甘い香りなら、商品から似たような匂いしますし、そこまで悪影響無いかなって。自分に分かる程度にしか付けてないんですけど意外と分かるんですね。」
「『何だこの甘ったるい匂いはー!』って
言われなくて良かったです(笑)」
「そんなこと言わないし、良いと思うよ(笑)
ただなんか甘い香りするなーって。
こう……"食欲をそそられる"ような……
いや!なんかこれは違うな!」
"食欲をそそられる"!?(笑)
言いたいことは分かりますよ。ハチミツ、美味しいですもんね。ハチミツ、食べたくなりますよね。
今日の名言として忘れず覚えておこう……メモメモ
よくよく考えたら、先輩は生粋の《甘党》なので何も問題無かった。語彙が面白すぎるだけでした。
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