三日月の 夜川に移りし 対岸の 神輿の光と 花火の瞬き
すっかり平常運転。
喉元過ぎれば熱さ忘れる、は母の口癖だったけれど、土曜の夜に朦朧としていたのが嘘のよう。
夕飯のおかずの買い出しから戻って、Xを眺めていたら。
近くで七夕まつりがあるという。
……ちょっと地元のライブハウスをフォローしてみた途端、地元の人のポストが流れてくるんだからXのサジェストほんとエグいよなとも。
すぐにお風呂に入って、出かける準備をする。こういうときの行動力は相変わらず鉄砲玉。
何が特別見たかったわけではないのだけれど、旧暦行事にあわよくば参加したいと常に思っているのと、土日の花火で悔しい思いをしたからだと思う。
車で30分。よく通る街だけれど、ちゃんと降りたことはそんなにない。
臨時駐車場になっている町の施設に車を止めて、とぼとぼ歩く。
会場の場所はよく調べてなかったけれど、ぽつぽつと会場に向かう人や家族連れがいたので、便乗してついていく。
通りに入ると、もう七夕行列が列をなして練り歩いていた。
詳しいことは知らないのだけれど、この七夕祭りは子供神輿が出るみたい。
……子供神輿というと語弊があるかも。正確には子供が担ぐ小さな神輿のことをいうのかもしれないけれど、ここでは子供が山車を引いたり乗ったりしている、という意味でした。
かなりの数、神輿と山車が出ていたけれど。
子供が引いたり、太鼓を叩いたり、山車に乗ったりしていた。
私の地元では秋祭りに山車が出る。
町内会で思い思いのデザインで飾られた(大体著作権ガン無視の何かがあったりするあれ)山車に、新一年生が乗る……というのが私の地元の通例だったけれど。
山車に名札が貼ってある子たちも、きっと何かしらそういう感じで選ばれた子たちなんじゃないかと思いながら眺める。
事前情報ゼロなので、神輿と山車がどこへ向かうか知らない。
でもGoogleマップを眺めた感じ、近くに神社はないからそこへ向かうわけでもなさそう。
一番最後の行列に、ぼんやりついていく。
すると、川に出た。
神輿と出しは、川沿いの土手道に並んでいく。
その対岸には、まつりに集まった人たちが思い思いに陣取っている。
ああ、花火の会場ここなんだと察する。
彩られた山車の光が連々と川に映っている様子がとてもきれい。
今日は三日月で空も明るくない。街灯もないから、よく映る。
それを眺めて、来てよかったな、なんて思っていたら。
その光の側で、一斉に手持ち花火が咲き出した。
プログラムにあった「子供花火」の意味をその瞬間理解する。
行列に参加してくれた子どもたちに花火を配って遊ばせているのだ。
川に向かって放たれる火花は、対岸の私たちにとっては十分な催し物になる。
それに、火が連続して飛び出るタイプの花火が続く。(あれ、なんて呼べばいいんだろう)
たかが手持ち花火、されど花火。
100メートル以上に渡って並んだそれは、私にとっては初めて見る光景だった。
ぽんぽんと飛び出る花火。男の子が友達同士で打ち合ってるイメージしかなかったけれど、並べるとこんなに見ものなんだな。
日曜日の大規模な花火大会よりよっぽど胸を打たれている自分がいる。
段々と数が少なくなり、ほぼ火が見えなくなった頃。
夜空に大輪の花。
本番の花火大会が始まった。
なんてよくできた構成、なんて思ってしまうのは職業病。
自治体の小さな祭りだから、花火の内容にはどうしても欠ける部分があるけれど、ゆったり見られるのがいい。
そうなんだよ。規模が大きい花火もいいけれど、こういう田舎ののんびり見られる花火が一番いい。
なんだか満たされた気分で、まだみんなが空を見上げている脇を、来た方向へと戻っていく。
屋台でなにか食べよう。
花火が始まったから、通りは閑散としているのかと思いきや、まったくそんなことはなく。
っていうか、想像の5倍ぐらいは的屋が列をなしていて、ものすごく活気があった。
お神楽の舞台もあった。家族連れ、カップル、学生。
THE夏祭りでもう感動しちゃった。
漏れ聞こえてくる会話とか、青春すぎてキュンとした。
こうして傍観者ぶって風景を楽しむことばかりしてきたけれど。
最近、そろそろ誰かと一緒に過ごすことを考えるようになってきた。
移住三年目で、いい加減、ちょっと孤独を感じているところもあるのかも。
帰り際、ホロライブの湊あくあが卒業するというニュースをXで知る。
あくたんも卒業か。発表された日付までもう余裕で1か月切っている。
こういうのはいろいろあるから、発表がぎりぎりになることなんてざらである。それについて何もいう気はないんだけど、とはいえ毎回、残されるファンのみんなは心の準備ができようないよなと思う。
THEE MICHELLE GUN ELEPHANTとかBiSHみたいに、発表されてから長めに活動期間が残されているっていうのは本当に稀。
やっぱり難しいんだよなって思う。
実際他人事ではなくて。すっごく難しい。
答えなんてないよな。
とか言ってたら、ぜんぜん違う駐車場についてて、小一時間車探しましたとさ。
別れはいつも、突然。でも終わりじゃない。
七夕にみんなが空を見上げて祈るのも、織姫と彦星が離れ離れになったから、なんだよ。