いのち と 経済
元々テレビはあまり観ない方だが、この状況なのでいつもよりはテレビをみる機会が増えている。
先日ある情報番組でコメンテーターがこう言った。
「人の命と経済どっちが大事だと思ってるんですかね?」
行政からの自粛要請が出た翌日。
それでも職場に通勤している人や営業を継続している店を批判しての言葉だった。
命と経済、どちらも大事で簡単に比べられるものではないと思う。
(タマゴが先かニワトリが先か的な w)
この状況下では職業や社会的立場によって優先するものがそれぞれ違ってくるのは仕方のないことだと思う。
政治家は国や経済を守らなければいかないし、医師たちは人命を守るために尽力している。
生きていくために商売を続けなければいけない事業主もいる。
自分もそのひとりだ。
優先するものが違えど人として命を大切に思う気持ちはみな同じなはず。
それを分かってか知らずか、自分と違う考えや選択に対して最初から批判的に見ることしかできないコメンテーター。
そしてそのコメンテーターに対し「そうですよね、人の命をなんだと思ってるんですかね」と答える番組司会者。
「アホかっ」テレビの電源を切り自分は仕事に向かった。
先日、国は緊急事態宣言を延長した。
想定通りのことなので何も驚かないし、何もかわらない。
それでも緊急事態宣言が解除されるまでは営業自粛としていた飲食店や商店はこの延長は死活問題になる。
店の体力もこのままでは底をつくことだろう。
いくら行政から補助金や給付金が出るといっても先が見えない自粛要請である。
一時的にお金が入っても店の存続を考えればスズメのなみだ程度でしかない。
いま多くの個人事業主たちが経営困難に追い込まれ廃業の危機にある。
倒産する中小企業もこれから徐々に出てくるであろう。
農業、漁業などの生産者も同様だ。
そうなってくると心配になるのが失業率のアップだ。
実は失業率が上昇するとそれに比例して自殺率があがることが統計でわかっている。
とくに諸外国に比べ日本という国は失業率と自殺率の反応がとても高い。
あまりピンとこないかもしれないが失業率が上がると自殺者が増えるというのは想像がつくだろう。
では失業率があがるとどれだけ自殺者が出るのか。
東京大学大学院の研究チームが2009年に発表したデータによると日本国内で失業率が1ポイント上昇すると10万人当たりにつき約25人も自殺者が増えることがわかっている。
上記に出てくるデータは2009年東京大学大学院研究チーム(チェン、チョイ、サワダ)の研究結果に基づくものである、近年の統計ではもっとも有意とされている
参考文献『不況・失業と自殺の関係についての考察』
この数字を日本国民全体に置き換えると失業率が1ポイントあがると自殺者が30,000人増えるという数字になる。
この先、日本の失業率は間違いなく上昇することが予想される。
2020年5月7日現在、国内の新型コロナウィルスで亡くなった人は600人弱。
ウィルスを収束させることはもちろん最優先事項だが、それと同時に失業率をあげないこともウィルス収束と同じように大事なことなのだ。
命を優先して経済を止めても結果的に失業率があがりウィルス感染より多くの命が失われる可能性がある。そのことをどうか知っておいてほしい。
念のために書いておくが自分が店の営業をずっと続けているのは決して失業率をあげないためではなく、自分が生きていくための選択に他ならない。
世の中にはこの状況でも失業とは無縁の人たちがほとんどであろう。
とはいえ先のみえない自粛という名の暗いトンネルはそろそろ我慢の限界が来ているのではないだろうか。
いまはまだなんとか耐えられているかもしれないが、これがあと2ヶ月以上続くとなったらどうだろう。
学校教育のことも大きな問題になってくる。
人々の心がどれだけ疲弊してきているかはSNSなどを見れば感じとることができる。
テレワークでの在宅勤務も長期にわたると精神障害が出るという統計もある。
長期にわたる自粛で国民みんなの心が疲弊している。
そうなってくると類い稀なこの事態では失業以外でも自殺者が増える可能性は否めない。
経済を止めることによる影響というのは、めぐりめぐって命そのものにつながってくることになるのだ。
現在国がやっている対策はウィルスを拡大させないことが最優先になっている。
それはいうまでもなく大事なことだが、そこにエネルギーを注ぎすぎてしまうのではなく、その先にある未来にも同じレベルの対策、お金、エネルギーを注いで欲しいと強く思う。
今を守るために、未来を見失ってはいけないということだ。
先日の投稿でも書いたが、スウェーデンやドイツでは国策で集団免疫を選択し徐々に経済活動を再開している。
もちろんウィルスによる死者はいまもまだ出ている、それでも国民たちは仕事に行き、飲食店は営業し、子供たちは学校へ通っている。
そして見習うべき点は彼らはすでにウィルスと共に生きるという新しい未来のライフスタイルを模索しているというところだ。
積んでいる燃料の量を気にせずに目先の困難を乗り切ることばかりに必死になっている日本。
燃料切れで国が失速したとき国民はその責任を誰に問うのだろうか?
おわりに
今回は将来への心配ごとを思うままに書きました。
一部の人には反感を買うような内容かもしれないと思います。
立場や状況によって行動とその責任も変わりますから受け止め方は人それぞれだと思っています。
それでもきちんと自分の考えを書いておきたかった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
そして。
新型コロナウィルスで亡くなられた方とそのご遺族に心から哀悼の意を。
そして医療現場をはじめコロナ収束のために尽力されているすべての方に感謝を。
一日も早くウィルスが収束し国民が穏やかに暮らせる日々が戻ることを祈るばかりです。
今日もどうかご無事で、Have a safe day.